軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編-激闘結婚式の後日譚

鏡が戻ってから一ヶ月後に起きた事件。アリスに対する返事をしていなかった鏡にクルルが求婚を迫るという騒動を終えてから一週間後の話。

激闘の末に荒れ果てたカジノ内をついでに改装することになり、カジノで働き詰めになっていたスタッフたちは、一時の休息を得ていた。

「ということがあってだな?」

「ふーん」

「感想、薄くありません?」

「いやだってな、ふーん、としか感想が漏れねえんだもん」

それはカジノのオーナーである鏡も同じだった。

毎度のことだったが、カジノの改装や新しい商品の搬入などの準備をデビッドに任せ、ここ、ヴァルマンの街でダラダラと日々を過ごしていたところ、珍しいお客が訪れたため、似合わずに喫茶店でお茶を飲んでいる。

「鏡さんは相変わらず面白そうなトラブルに巻き込まれてるねぇ~、今日最初に会った時、退屈で死にそうな顔をしてたから不安になったけど」

「退屈だよ。外に出てお前らの手伝いをしたいくらいだ」

「外は外で大変だぞ? 遊ぶ暇もないくらいにな」

久しぶりにこの街に訪れたのは、油機とメリーの二人だった。

メリーは最後に会った時よりも少しだけ髪と身長が伸び、橙色の綺麗な長髪を背中に垂らし、もみあげの部分を三つ編みにするなど、少しでも大人っぽく見せようと努力しているのが窺えた。

とはいえ、顔の幼さは変わっておらず、服装にも変化がないため背伸びしているようにしか見えない。

「あはは~、そうだね。鏡さんってなんか飽きっぽそうだし、すぐ帰りたいって言っちゃうかも」

油機もピンク色の髪が伸びて、ショートロングになっていた。そしてこれまた油臭そうな作業着を脱ぎすて、豊満な胸がハッキリと主張される白いブラウスを着ており、前よりも女性らしい姿をしていた。

「そんなに忙しいのか?」

どうせ行けないからと、興味なさそうに鏡が問いかける。

「いや~めちゃくちゃ忙しいよ。なんせ世界の復興だからね……日本だけならともかく、世界全体の土地を人が住める環境にしようと思えば私たちの代だけじゃ、どうしようもないかな」

「そうなのか? この前、ペスが『暇ぁ~』とか言って来たけどな」

「あの子はサボりの常習犯だからね、ウルガさんがいつも探し回ってるよ。アースクリアに逃げてた時はさすがにセイジさんも怒って強制送還してたけど」

「……なるほど」

ペスがヴァルマンの街のカジノに遊びに来ていた時、ゲーム中に『しまったぁ!』と叫び、突然、透明になって消えていった意味不明な事態の理由がわかり、鏡は納得顔を見せる。

「はぁ~……まさかお前に最初に会っちまうとはな」

先程から不機嫌そうにしていたメリーが、深い溜息を吐く。

「なんだよ、俺だとご不満か?」

「不満以前の問題だっつの、さっきからなんだ? 見せつけてんのか? あぁ!?」

そういうと、メリーは鏡の背後を指差す。

鏡の背後には、嬉しさを堪えきれずに頬を緩ませたアリスが、鏡にべったりとくっついていた。

「これは何かのオブジェクトだと思って無視してくれたらいい」

「いや、それは無理があるだろ」

「え~いいじゃんメリーちゃん。この緩み切った顔を見てよ、平和が訪れた証拠だよ?」

メリーとは違い、油機はご満悦の様子だった。アリスもそれが嬉しいのか、油機と目線を合わせてニッコリと微笑み合う。

「ていうかさっき、結局アリスへの返事は保留にしたままって話してたじゃねえか。もういいだろ、ここまでべったりなんだったら! むしろかわいそうだろ!」

「いや、それについてはさっきも説明しただろ?」

説明は受けたが、納得はしていないようで、メリーは「はんっ」と苦い顔を見せる。

鏡は騒動を終え、結局二人に対してハッキリとした答えを出していない。その理由がわからなくもないため、メリーはあまりきつく言葉にしてぶつけたりはしなかった。

「ボクは平気だよ? いくらでも待てるもん」

そんなメリーに対し、アリスは何も意に介していないのか、くったくのない笑顔を見せる。

「本当にいいのか……?」

「大丈夫。きっと答えをもらっても、今とそんなに変わらない生活だろうから。あ、変わると言えば……クルルさんがこれまで通りに接してくれなくなるかも、きっと見るのも辛いだろうから…………うん、そう考えるとむしろ今の方がボクはいいかな! ボク、クルルさんも好きだし!」

「おいおい、こいつとんでもねえぞ」

まだどちらが選ばれるかもわからないのに、既に勝った気でいるアリスに、図太くなったものだとメリーは乾いた笑みを漏らす。

「というかそれならアリスを剥がすなりなんなりしたらどうだ? なんていうか……だらしないぞ鏡! それにクルルがかわいそうだろ! そして私に対しても失礼だ!」

「メリーちゃんも、彼氏欲しいもんねぇ?」

「バッカ! そんなんじゃねえよ!」

あまりつつかれたくないことなのか、メリーは油機の胸倉を掴む。

しかし油機は、最近、いつ死んでもおかしくない日々から解放された反動か、メリーが男性の目を気にしてオシャレに気を使っていることを知っており、ほくそ笑んだ。

「お前らの言いたいことはわかる。俺も最初は頑張って引き剥がしてダンボールの中に入れて蓋をしていたりしていたんだがな?」

「ダンボールに入れる……?」

無表情のままに放たれた非常識に、油機は乾いた笑みを浮かべる。

「まあ見た方が早いな」

鏡はそう言うと席を立ちあがり、べったりとくっつくアリスの肩を掴んで押し離した後、「お前はもう子供じゃないだろ?」と言葉を添えて、再び席へと戻る。

すると、アリスは一瞬きょとんとして呆けた顔を浮かべた。

直後、さっきまで浮かべていた太陽のように明るい笑顔を、陰を帯びた絶望のどん底に落ちてしまったかのような暗い顔へと変えて、少し離れた建物を背に三角座りをし、いじいじといじけ始める。

数秒後、ゾロゾロとどこで見ていたのか、ヴァルマンの街で暮らす魔族たちがアリスの下へと集い始め、信じられないといった顔で鏡へと視線を向け、ヒソヒソと話し始めた。

そこからさらに数秒後、恐らくは連絡網が敷かれているのだろう。報告を受けて駆け付けたメノウとパルナがその輪の中に入ると、無言のまま鏡へと視線を向けて圧力をかける。

そう、アリスを引き離そうとすると、魔族の姫であるアリスを応援している魔族たちと、アリスの面倒をずっと見てきた二人による嫌がらせが始まるのである。

「たち悪!」

「最近あいつらなりふり構わずこういうことしてくるんだよ、あの連携力どうなってんの?」

「いやいや、それは私が聞きてえよ。ていうかメノウとパルナは過保護すぎんだろ! 暇か!?」

「ちなみにクルルもアリスほどじゃないが、べったりしてくるんだけど。クルルを引き剥がすとアリスのやり方に対抗してか、デビッドとフラウと衛兵たちが現国王の管理者権限使って飛んできて同じようなことしてくる」

「何それ怖い」

「その果てに辿り着いた俺の答えはオブジェクトと思って無になることだった」