作品タイトル不明
LV999の村人-4
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デミスが真の姿を現してから、一日が経過しようとしていた。
星と同等のサイズを失ったとはいえ、星サイズの時と同等以上の力を保有するデミス。そして、サイズを犠牲に生み出された無数のモンスターたち。
その総力を前に、人類に勝機は僅かながらも残されていないはずだった。
たとえ、どれだけ人類一人一人の力がデミスの生み出したモンスターたちよりも強かろうが、圧倒的な戦力差があることには変わりはない。
なのに、人類は未だ滅びず、戦いを続けていた。
『……なんだ?』
デミスは確かに見ていた、最後の戦いへと果敢に挑んだ勇気ある強者たちが、己の巨大な力を前に成す術なく無残にやられ、傷つき倒れていく姿を。
全てを出し尽くし、ほとんどの者が目を閉ざして眠りについたのを確かに見届けた。
だが、その者たちは今、再び動き出して自分の一部たちと戦っている。
そう、数が一向に減っていないのだ。
意味が、わからなかった。
確かに瀕死に追い込んだはずだった。なのに、体内に入り込んできた者たちにしたように、全身をずたずたに引き裂いて止めを刺そうとすると、すぐさま何かを思い出したかのように目を見開き、瞳に闘志を焚きつけて再び活動を始めるのだ。
最初は、魔法による効果で回復しているものだと思っていた。
だが、そんな力が常に都合よく使われた気配はなく、疑問はますます深まる。
そして、途中で気付いたのだ。
この戦場にいる全ての者が、ある一人の男から大きく影響を受けていることに。
『……馬鹿な』
その男がまだいるから、希望を捨てずに戦い続けているから、まだ諦めるわけにはいかないと、限界を超えて立ち上がり続けているのだ。
この場にいる全ての者が、神に挑もうとしていた。
ならば、挑む気にもならないくらい、一人ずつ、直々に殺そうとデミスは考える。
だが、それをその男がさせてくれなかった。
「……どうした? もうへばったのか?」
全身から血を垂れ流しながら、今すぐに息絶えてもおかしくない状況で、その男は余裕のある笑みを浮かべ、問いかけてきた。
そして、疑問に思う。何故、まだ生きているのかと。
『どうして……まだ立ち上がれる?』
「……どうして?」
デミスの質問に、鏡は鼻で笑う。
どうしてそんなわかりきったことを聞くのか? と。
「お前がまだ…………生きているからだよ」
人の身でありながら、悪魔のような笑みを浮かべたその男を前に、デミスは生まれて初めて悪寒を感じ取った。搾取し、奪い続けてきたデミスにとって、死を恐れずに立ち向かってきた存在は、生まれて初めてだったからだ。
同時に、かつてない喜びの感情に満ち溢れる。
――初めて対抗してきた存在を自分のモノにした時、どれほどの達成感を得られるのかを想像して。
――どれほどの力を手に入れられるのかを想像して。
――全ての者がどれほどの絶望の感情をまき散らして、自分に屈して滅びるのかを想像して。
『いい…………いい、いいぞ……!』
デミスは、狂気に満ちた声をあげた。
手に入れるまでの間すらも甘美なひと時に感じてしまったからだ。
言われるまでもなく、負けるとは微塵も思っておらず、自分の勝利した時のことを想像しているのだろうと察すると、鏡は血まみれになった顔でデミスを睨みつける。
「舐めるなよ、まだ…………まだ終わってねえぞ」
デミスは、これまで戦ってきたどんな敵よりも強かった。
どんな敵よりも理不尽で、自分よりも圧倒的な強さを誇っていた。
最初に行ったのは、単純な力比べだった。闘魔剣による斬撃、速さを駆使した全方向からの連続の殴打、リバースによって扱えるようになった魔法による攻撃――――だが、そのどれもが通用しない。
「うぉおああああああああああああ!」
鏡は再び、己を魔法の弾として魔力弾を撃ち放つが如き速さでデミスへと接近する。
しかし、近付くよりも早く、デミスは鏡の目の前に魔法陣を生成し、そこから濃密な魔力によるマジックバーストを撃ち放った。鏡は寸でのところで身体を捻って回避しようとするが、完全には避けきれずに足を引っかけてしまう。
『反魔』によるスキルの力で足が消滅してしまうような事態にはならなかったが、それでも反射しきれない濃密な魔力による押し込みで、鏡は移動途中にも関わらず吹き飛ばされてしまう。
『隙をついて動きを封じてしまえば、いくら早くとも攻撃は当たる。終わりだ』
すかさずデミスは体制の崩れた瞬間を狙い、巨大な身体を駆使した強烈な殴打を鏡へと叩き込んだ。
隕石が衝突するが如き、眼球が飛び出し、内臓を口からぶちまけてしまいそうな理不尽な衝撃が鏡を襲う。咄嗟に結界による防御魔法を展開するがそれでも衝撃を殺しきれずに殴り飛ばされ、宇宙空間を浮遊する小隕石に何度も衝突していく。
しかし不思議と、思っていた以上の痛みはなく、鏡はすぐさま体制を立て直してデミスの下へと向かった。だが、鏡の攻撃は通じず、逆に返り討ちに合ってしまう。
だから鏡は、血まみれになって考える。ならば、どうやったらこいつを倒せるのかと。
『ほう……まだ隠し持っている力があるのか?』
次に鏡は、技を試した。リバースによって解放された己の魔力をフルに使い、単純な力で駄目ならば、技でその力を更に昇華してやればいいのだと。
身体能力の強化魔法を自身に付与し、チャージで力を高めた拳に炎と電撃を纏わせ、全身のありったけの魔力を拳に集中させて、殴打の衝撃と共に高めた闘気を撃ち放つ。
『これまでで一番だが……それでも我には届かぬ』
それでも、デミスには届かなかった。渾身の一撃だったにも関わらず、ほんの少し殴った部分の肉が削れ、デミスが後方へと吹き飛んだだけで終わってしまう。
だから鏡は、砕けた拳の骨をさすりながら再び考える。
力で駄目なら、勝っている長所を更に伸ばして戦えばいいと。
『ほう?』
それまでは身体の負担が激しすぎるが故に『エクゾチックフルバーストAct5』までを限界として発動させていた鏡は、身体が壊れるのを覚悟で、時間の感覚を一秒から六十秒に狭めるスキル『エクゾチックフルバーストAct6』を発動する。
全てが亀のように遅い動きに見える世界の中で、鏡はデミスの全身を、先程使用した技と合わせて何度も殴りつけた。だが、速さに力を回した分、威力が弱まってしまい、浅い傷を全身に与えるだけで終わってしまう。
その傷も、すぐにデミスは再生してしまった。
『いくら速くとも、通らねば意味がない。いくら速くとも、避けようがなければ……!』
直後、デミスは周囲を猛速度で動き回る鏡へと確実に攻撃を当てるため、全身から生命力の爆発による衝撃波を発生させた。
衝撃波は、周囲を浮遊していた小隕石を粉々に砕きながら広がると、鏡を巻き込んで遥か遠くへと吹き飛ばす。肉を引きちぎるような激しい痛みに耐えきれず、鏡は遂に全身から血を噴き出した。
だから鏡は、白眼をむいた死にかけの身体で再び考える。じゃあ何をすれば勝てるのかと。
力押しでも駄目、技を使っても駄目、速さで翻弄しても無駄。どうあがいても勝てず、デミスは決して届かない頂に存在している生き物なのだと理解した。
その瞬間、いつもの感覚に鏡は襲われたのだ。「ああ……またか」と。
それは鏡にとって、なんら珍しくない感覚だった。
それは鏡が人生の中で、ずっと感じ続けてきたものだったから。
だから鏡は気付いた。倒すための答えを自分が既に知っていることに。
『まだ…………立ち向かうか? 無駄であるとわかっていながら』
再び鏡は、白眼の向いた悪魔のような顔で、寒気のする笑みを浮かべる。
勝てないのであれば、勝てるようになればいい。
死んでいないのであれば、チャンスはいくらでもある。
死んでいないなら、まだ戦える。まだ戦う。それが、鏡という男の生き様だった。
『そろそろ休め……我が一部となって』
何度ダメージを与えてもすぐに回復し、すぐさま立ち向かう鏡を倒すには、一撃で殺す以外にない。
しかし、鏡に魔法の類はしっかりと通用せず、とはいえ物理的な攻撃も速さを活かされて打点を逸らされ、また防御魔法によるダメージ軽減で毎度仕留めそこなう。
そしてデミスは学習する。ダメージを与えて動きが鈍くなった瞬間を狙って防御魔法でも防ぎきれない最強の一撃を叩き込めばよいと。鏡がデミスを倒そうと考えたように。
『終わりだ』
直後、鏡の動きが鈍くなった瞬間を狙って周囲に残っていた変異体、モンスターたちが一斉に群がり鏡の身体を抑えつけた。完全に動きを封じたのを見計らうと、デミスは手の平を鏡へと向け、全身の魔力を一点に集中させ、マジックバーストを撃ち放つ。
しかし、それはただのマジックバーストではなかった。
人類の使う魔力銃器、それをヒントに考えだした最高威力の物理的ダメージを与えられる技。
マジックバーストでダメージを与えるのではなく、宇宙に漂う小隕石を手元へと集め、マジックバーストを火薬がわりに撃ち放つ、一つの星を物理的に破壊する威力を秘めた攻撃。
星喰い(コスモブレイク)
身動きが取れなくなっていた鏡は、マジックバーストによる眩い光に周囲に纏わりついていた敵毎包まれると、弾丸が如き速度で飛来した隕石群に飲まれ、デミスの前から姿を消した。
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