軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

なりたいものになればいい-17

「どうして奴はここまで強く……いや、強くなろうと思ったんだ? 一体奴の何がここまでの力を手に入れるための動機になった!?」

今もモンスターの攻撃を全てその身で受け止めつつ、果敢にも素手で相対し、笑みを浮かべて戦い続ける鏡から視線を外さないまま、レックスは震えた声でタカコにそう問う。

「……さあ? どうしてあそこまで強くなろうと思ったのかは私にもわからない。でも、最初に戦うための力を欲した理由なら……多分だけどわかるわ」

そしてそんなレックスの問いかけに、見守るような視線を鏡に送りながら、タカコはそう言葉を返した。

「戦う力を欲した理由だと?」

すると、レックスはそう言って視線を向けずに興味を示す。

「あなたとそう変わらない理由よきっと……勇者、レックス・チクビボーイとね」

そしてタカコがそう言って、レックスのフルネームを呟いた瞬間。レックスを含む、その場に居合わせたアリス、メノウ、パルナ、クルル、ティナの六人はタカコにバッと振り替えるように視線を向けた。

「貴様……僕を知っているのか?」

「これでもバーの店長もやってるのよあたし? だから情報通なの。まあ……そうじゃなくても有名だとは思うけどね、アルカシア王国王都内の名家の生まれでありながら、勇者の役割を持って生まれた将来を約束された男……レックス・チクビボーイ。旅先の道中で滅多に遭遇しないはずの高レベルのモンスターに運悪く遭遇して惨殺され……まだ幼すぎる跡取りではどうしようもなく堕ちていった名家……だったかしら?」

タカコのその言葉を聞いて、当たっているからか、レックスは露骨に不快な表情を浮かべた。

「その後、跡取りは行方しらず……そして今に至るって感じかしら?」

「そうだったんですね……私、知りませんでした」

表情を歪ませるレックスを見て、その時の心情を少し共感したからか、クルルはしゅんっとした浮かない表情で小さくそう呟いた。

その傍らで、パルナが「あんた……チクビボーイって言うのね……」と、ぼそぼそと呟き、レックスの過去よりもそちらに意識を向けていた。

するとそれを聞いて、それに続くようにしてクルルも浮かない表情のまま「チクビボーイ……ですか」と呟き、さらにその奥でティナが「……チクビボーイ」と、唖然とした表情でそれだけ呟く。

「っつ! とにかく、僕のことはどうだっていい! 僕と同じということは奴も両親をモンスターに殺されたのだろう? なら、その復讐心で戦う力を欲したということか?」

「そうね。戦う力を欲した理由はきっとそうだと思うわ」

「なら……何故奴は魔族を庇う? モンスターに殺されたのであれば、それを生み出す魔族を殲滅することで復讐を果たそうとするべきじゃないのか?」

「そこがあなたと違うのよ。あなたは両親ともモンスターに殺された。でも鏡ちゃんは父親をモンスターに殺され、母親を……人間、私達と同じ人間に殺されたのよ」

それを聞いて、レックスは理解すると共に絶句した。ずっと胸に残り続けていたしこりのようなものが取れたような感覚がした。復讐心で、モンスターと戦い続けてきたからこそ、それが何を意味するのかがわかった。

タカコが口にして説明するより早く一瞬で理解した。鏡がどうして中立の立場を保つのか? どうして鏡にイライラしていたのか? どうして今まで、モンスターと戦いながらも疑問に思い続けてきたのか。

「モンスターに大切な人を殺されたからモンスター全てに復讐する。じゃあ人間に殺されたから人間全てに復讐する? 根絶やしにする?」

その場に居た全員が、その答えを簡単に思い浮かべた。復讐したとしても、その特定の人物のみだけで、人間全てを恨んだりはしない。何故かと言われれば、同じ人間だからとしか言いようがなかった。

同じ社会を構成している仲間だからこそ殺せない。というより、そもそも殺す理由がない。殺しても意味が無いから。だが、モンスターには意味がある。そもそも人間に害をもたらしているからだ。

つまり、復讐心でモンスターを全て殲滅するのは建前でしかない。そういう世界の仕組みで、殺しても問題ないし、元々殺すべき存在だから殺すだけ。それは復讐じゃなく、世界の仕組みに従っているだけだった。

そしてアリスは、鏡が言っていた『あほらしいから』という言葉の意味をようやく理解する。人間にとって都合が良いから殺すという行動に対して言っていたのだと。

だがそんな中、パルナだけは頭でわかってはいつつも認めようとしなかった。

「僕は…………流されていただけだったのか?」

レックスが顔を俯かせながらそう呟く。だがその様子を見て、クルルはレックスの背中をポンッと叩いて支えようとする。

「鏡さんは言っていました。魔族は害だと、人間にとっての敵であると。でも、それでも中立を保とうとするのは鏡さんに何か考えがあってのことだと思います。だから私は、モンスターと魔族と戦い続けることは決して流されているとは思いません。そうしなければ安全を保てないから……それも一つの答えだと思います」

そう言って、何かを覚悟をしたかのような表情をクルルは浮かべると、五歩前へと足を踏み出した。そして五歩進んだところで一度立ち止まり、振り返ってタカコ達の方を見ると苦笑いを浮かべる。

「もう大方わかってはいますが、どうしてその世界の在り方に逆らおうと思ったのか、それだけ最後に私はあの人の口から直接聞きたい。そのためにも、今あの人に死んでもらっては困るんです!」

そしてそう言いきった後、再び決意したような真剣な表情を浮かべ、クルルは1万のモンスターの軍勢がいる鏡の元へと向かって走り出した。

「僕も……まだ奴には聞きたいことがある。どうやってそこまで強くなったかだ!」

突然走り出したクルルを見て、レックスが溜め息を吐いて微笑を浮かべると、クルルの後に続くようにそう言って走り出し、鏡の元へと向かう。

「ちょ、ちょっと待ってくださいクルルさん、チク……レックスさん! 回復出来ないとすぐに死んじゃいますよ!」

「いいじゃない……直接その口から聞いてやるわ。あんたが抗おうとするその理由を!」

そして次に、突然走り出した二人を見て、慌てて追いかけるようにティナは走り出し、まるで見定めるかのような鋭い視線を先にいる鏡へと向けながらパルナが走り出す。

「んまぁ……青春だわぁ! こんな展開見せられたら私も久しぶりにたぎっちゃう! 行くわよ? 行っちゃうわよ? うろぉぉぉああああああああああ!」

続いて、ついこの間まで敵対視していた勇者一行が、鏡のために走る姿を見たタカコはそう叫び、全身に血を巡らせて筋肉を肥大化させると、前方を走る勇者一行を抜き去る勢いで走り出した。

「た、タカコ殿!? わ、私も加勢します!」

そんなタカコに続き、例え裏切り者と言われたとしても、鏡を守るために戦うだけの価値がここにある。そう思えたメノウは何も躊躇うことなく走り出した。

「み、皆……!」

そして、走りゆく戦士達を見送った後、自分にも何か出来ることがあるのじゃないかとその眼差しに闘志を燃やし。アリスも踵を返してサルマリア内の東側へと向けて走り出した。