軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

決して越えられない壁-3

「……どれだけの時間、俺はここに埋まっていたんだ?」

「三日だ、これでもすぐにここへと向かった方なのだが……デミスに見つからないように迂回したせいで時間が掛かった。すまん……鏡殿」

申し訳なさそうに表情を曇らせるメノウの肩を掴んで、鏡は顔を左右に振る。むしろ、三日でアースから遠く離れているであろうこの場所へと来たのは早すぎるくらいだった。

言葉にはしなかったが、鏡は改めて旧文明の機械の凄さを認識する。

「……皆は無事なのか?」

「アリス様たちがどうなったかはわからん。私もすぐに鏡殿を救出するためにここへと向かったのでな……だが、きっと無事なはずだ」

「どうして言い切れる?」

「アースを見ればわかる。アースに薄く光るバリアのようなものが覆っているのがわかるか?」

メノウに言われて鏡は目を凝らして青く輝く星を見つめる。

元々青く輝いているのもあってすぐには気付かなかったが、メノウの言葉通りアースを覆うように薄い光が展開されていた。鏡はすぐにそれが対デミス用に造られた六大大陸に設置されたアースディフェンダーによるバリアであることに気付く。

「それに、ここへと足を運んだのは私だけではない」

そしてそれを聞いて、鏡は胸のしこりがとれたような安心感を得た。

一度アースクリアへと戻った時、アリスが「魔王城に誰もいなかった」と話していたのをすぐに思い出したからだ。同時に、どうしてメノウがここに至るまで姿を見せずにいたのかの理由に気付く。メノウもまた、一度アースクリアに戻って準備をしてくれていたのだ。

この最後の戦いに向けて、人類全ての力をデミスへとぶつけられるように。

「そうか……皆、来てくれているんだな」

その問いかけに、メノウは静かに頷いて返す。

「なら、信じるよ。ずっと敵対し続けてきた勢力が力を合わせたんだ……無事じゃないわけがない。そうだよな?」

「ああ……その通りだ」

その時見せたメノウの笑顔は、魔族として人類を滅ぼそうとまで考えたことがあるとは思えないくらい、心の底から人類と共になら未来を切り開けると信じた真っ直ぐなものだった。

鏡も、顔を見て大丈夫だと思えたのか、笑みを返して身体をほぐし始める。

「さて……三日も埋まってたんだ。さっさと戻って働かねえとな」

「すまない鏡殿、本当なら休みたいところなのだろうが……そう言ってもらえて助かる」

「休んでる場合じゃないくらい馬鹿でもわかるって、それにあの來栖のことだ……俺の救助にお前をよこしたってことは、ただ助けにきてくれたってだけじゃないんだろ?」

「…………鏡殿には、地上にいる者たちとは別行動を頼みたい」

鏡の読み通りなのか、メノウは真剣な顔つきを見せると頷き、置いてあった宇宙船に向かって浮遊するように移動する。重力がアースへと違うせいで一瞬もたついたが、鏡もすぐさま慣らすと、メノウの後を追って地を蹴った。

「あの男はこう言っていた。『生きている確証もなく、見つけ出すのにどれだけの時間が必要かもわからない。待っている間にも、アースディフェンダーが展開しているバリアは消耗し、いずれは全滅する。だから、鏡君がいないものとして僕たちは僕たちで動く、だから、もし見つけることができたなら、その時点で行動を開始してほしい、合流している暇なんてもう僕たちには残されていない』とな」

「俺が生きていたらラッキーってくらいに留めておいて、いないものとしてさっさと切り替えて行動か、さすがというかなんというか」

「非情ではあるが、私は正しいと思う。合流を大人しく待ってくれるような相手ではないのもあるが、ないかもしれない希望にすがりついて時間を潰せばそれだけ不利になる。あの男が情に厚い男ではなかったのが幸いだったくらいだ」

「そうでもなけりゃ勤まらないって昔後悔したみたいだからな。……それで、俺たちはどこに向かうんだ?」

「決まっている……この戦いを終わらせる方法は一つしかない。朧丸殿には酷な話だが……」

宇宙船の傍へと着くと、メノウは宇宙船に手を当てて遥か遠くで青き星の傍にそびえるデミスへと視線を向ける。

「朧丸も覚悟はしていたはずだ。だから……行こう、全てを終わらせに、望み続けた世界を取り戻しに! 俺たちはやっと、あと一歩のところまで来たんだ……!」

長く、そして険しい道のりだった。

何度も何度も絶望を乗り越えて、最後に立ち塞がった理不尽とも呼べる絶望を乗り越えさえすれば、望んでいた世界が手に入る。

そう考えた瞬間、鏡は旅の終わりが、この理不尽で悲しみに溢れた長い物語の終わりが近付いているのを感じた。

それはたとえ最悪な結果であろうと、最高な結果であろうと、必ず終わりを迎える。

だがその終わりが最悪であってはならない、最悪な結果で終わるのがこの世界の運命だとしても、そんな運命は必ず変えて見せる。長く苦しんだ人類の歴史の終わりが、絶望であっていいはずがないから。

たとえ、この身の全てが最後に消滅してしまったとしても――――そう、鏡は瞳に闘志を漲らせると、決意を胸に抱いた。

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「状況は悪くなる一方だ。そして、良い方向に向かうことは絶対にない。なら、僕たちがこれからしなければならないことは……言わなくてもわかるよね?」

エデンの内部、セントラルタワーの中層に位置する会議室の中で、來栖が席に座る一同へと問いかける。

会議室の中には、それぞれノアとガーディアンに散らばっていたロイドやバルムンクを含む主要となる戦力、それと、來栖とライアンまでもがわざわざエデンへと足を運んでいた。

アースディフェンダーによるバリアが展開されたとはいえ、デミスの猛攻は終わりを見せず、バリアを潜り抜けて今も尚多くのデミス細胞と変異体たちが攻めてきている、命を繋ぐためには拠点を潰されないように戦わなければならず、戦える戦力を遊ばせている余裕はない。

そんな状況にも関わらず、戦いの手を止め、一同は集まっている。

「単刀直入に言おう…………人類のために死んでくれ」

そして、集まるや否や、來栖は優しさの感じられない不穏な笑みを浮かべて、一同にハッキリとそう宣言した。