軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

なりたいではなく、ならねばいけない時-2

「どうじゃ愚民よ⁉ 妾の素晴らしき水着姿に酔いしれるが良いわ!」

「おーすごいすごい」

出っ張るところがまるで出っ張っておらず、なのにそれを強調させるような肌の露出の多い水色のビキニを着用したフラウに、鏡がパチパチと適当に拍手する。

「絶対馬鹿にしておるじゃろお前」

「師匠は人を馬鹿にする天才ですから」

「いやー……ね? これだけ周りにお姫様より凄い人たちが集まってるのに、むしろなんでそんなに堂々と誇らしげにできるんだろうって……本当に凄いと尊敬してしまいまして」

「絶対馬鹿にしておるじゃろお前⁉」

心外だったのか、フラウは眉間に皺を寄せながら鏡に詰め寄る。すると鏡は、何故かクイッと親指を向けて、メリーを見るように促した。

「むしろお姫様くらいなら、そこにいるメリーくらいには控えめに恥じらいながら立ってくれてた方が可愛げがあるぞ」

言われて、一同が視線を向けると、そこには肌の露出の少ない水玉模様のピンク色の水着を着たメリーが恥ずかしそうに、こちらを見るなと目で威嚇しながら立っていた。

「鏡てめぇ……つまり私が貧相だって言いてえのかよ?」

「やめろ! そうなると妾も貧相ということに!」

「大丈夫よ? 二人ともとっても可愛いから」

鏡に馬鹿にされて落ち込んだ二人を慰めるように、背後から二人の頭にポンと手を置いて、鍛え上げすぎて筋肉の塊と化したタカコが、黒色のハイレグ水着を着用して姿を現す。

「あ……そうか、すまんな」

「ありがとう……タカコに言われると本当に褒めてくれてる気がするよ……ごめん」

「二人ともどうして謝るのかしら?」

あんまりなその姿に、鏡やレックスはもちろん、フラウとメリーまでもが視線を逸らした。

「俺が眼鏡つけてたら、爆発して粉砕してる気がする」

「どういう意味かしら?」

タカコの睨みつけに耐えられず、鏡は慌ててロイドを盾にして「お前さっき、水着は筋肉とあうとか言ってただろ。なんとかしろ」と小声で伝えるが、まもなくロイドから「僕が間違っていました」と小声で謝罪を受け、二人はジリジリとタカコに詰め寄られる。

そんな二人をかわいそうな人を見るような顔でレックスが眺めていると、ちょいちょいと肩を叩き、背後から白いビキニ姿で胸を強調するかのようなポーズをとったパルナが姿を現した。

「どう? 変に生真面目なあんたでも、これ見たらちょっとはドキドキするんじゃない?」

「お前は普段から露出が高いから……あまりなんとも思わないな。普段肌をあまり見せないティナとかアリスとかの方は衝撃がでかい気がする」

「なるほど?」

返答が気に喰わなかったのか、パルナは突然手元に魔力を籠め始める。あまりの意味不明さにレックスは「いやいやいやいや」と慌て、その傍らでタカコに追い詰められている鏡が「ムッツリ大魔王が……なんか言ってる」と紳士ぶっているレックスに苦い顔を向けていた。

「まあ、この中で一番水着が似合っているとは思うぞ。これはお世辞でなくて本心だ」

「ふーん……ま、それで許してあげましょう」

「ほほぉ?」

納得したのか、とりあえずパルナは魔力を引っ込める。すると、そのやり取りで何かを感じたのか、フラウが突然ニヤニヤとした表情を浮かべる始めた。

「もじもじとしてどうしましたか?」

「いえ……こういう恰好をするのは初めてでして、その、あの……」

もじもじと顔を赤くしながら、堅苦しい軍服を脱ぎ捨てて紺色の水着を着用したフローネに、ロイドが話しかける。見られるのが恥ずかしいのか、隠れるようにしてフローネはすぐさまパルナの背後へと隠れた。

「大丈夫です。そんなに恥ずかしがらなくてもとても似合っていますよ? もっと堂々としていてください。恥ずかしがっていては、逆に気になって皆さんに見られてしまいます」

「そ、そうですか? では……」

「さっすが、清々しいほどに褒めるのが上手いわね。あんたもちょっとは見習ったら?」

上手くフローネをリードするロイドを見て、パルナがジト目でレックスに詰め寄る。差に自覚があるのかレックスは少し後ろめたそうに視線を逸らした。

「いやー……でもやっぱり、街の中を水着で歩くなんて凄い解放感だよね! そこら中にあるプールなんかも自由に入って泳いでいいらしいよ? メリーちゃん一緒に泳ぎに行っちゃう?」

花柄の模様が入った黄色のビキニを着用した油機が、開放的な気分で背伸びしながらメリーに首を傾げて問いかける。するとメリーは、死んだ魚のような目で油機を一度視界に映すとすぐさま逸らし、背中を向けた。

「油機……それ以上私の前ではしゃぐな、いいな? お前はその格好でいる限り私の前で上下運動は勿論、走ったりするのも禁止だ。セミのように大人しくしていろ」

「ど、どうしたのメリーちゃん。怖いんだけど……もしかしてまだ怒ってる?」

あまりにも冷たい態度に必死に油機は取り繕うとするが、油機がメリーに纏わりつけばつくほど、メリーの瞳から光が失われていく。

「ねえねえ鏡さん。どうかな? どうかな?」

「あ、あの……鏡さん。こういうのは初めて着るのですが、どうでしょうか? 似合っていますか?」

次に、タカコに追い詰められていた鏡を救う形で腕を引っ張り、フリルのついた可愛らしい水玉模様の赤い水着を身に着けたアリスと、少し大人びた紺色の水着を着用したクルルが姿を見せる。

「おーすごいすごい」

「それさっきフラウさんに見せた反応と同じじゃん! さてはボクたちを馬鹿にしてるでしょ!」

「鏡さん! ちゃんと見てください! 今日こそは絶対にちゃんとした感想をもらいます!」

「馬鹿野郎! 俺たちは……今世界の命運をかけた仕事をこなしている最中だ。ふざけている場合か!」

「この中で一番ふざけた人に言われたくないよ」

「さては鏡さん……照れてるんですね⁉ そうなんですね!」

興味はなくもないのか、少し照れくさそうに視線を逸らそうとする鏡に、アリスとクルルは必死に見てもらおうと纏わりつく。その様子を、思考を巡らせているのか、真面目な表情でフラウが見つめていた。

「ほほぉー……?」

「さっきから何なんですか、ほほぉ、ほほぉって。何に反応してるんですか」

そんなフラウに、いつもの修道服を脱ぎ、白い水着に青色のラインが入ったビキニをパルナによって無理やり着せられたティナがツッコミを入れる。いつものツインテールもサイドに伸ばすのではなく、降ろしてばらけないように先端でくくりつけたものへと変わっている。

「ティナといったか? 妾の鋭すぎる感性が見抜いてしまった。レックスは何やら色恋沙汰に興味が無くなっているようだが、あのパルナとやらはレックスに好意を抱いておる。そして、あの魔王を倒すことにしか興味のなかったクルルと、あのアリスとやらはあの村人に好意を抱いておる! くぅ……こんなことになっていたとは! 進展していないところを見ると誰も気付いておらぬじゃろぉ⁉ くぅ! 妾が、妾が来たからにはもう安心じゃぞ!」

「いや、多分全員知ってますよ。むしろわからない方がヤバいでしょう。鏡さんに至っては、二人が好意を寄せてくれていることをわかってると思いますよ」

「な……? ならば何故進展しておらぬのじゃ⁉」

「さあ……今はそれどころじゃないからですかね?」

よくよく考えてみると、確かに二人が好意を寄せているのは明らかなのに、鏡は反応を示そうとしていないことにティナは少しボーっと鏡を見つめながら一考する。

一瞬、平和になった時も今のように騒げる日が来るのだろうかと想像を膨らませ、その時は一体誰が鏡の隣に立っているのかを想像して「あ……これスゴクどうでもいい」とすぐに考えを振り払った。