作品タイトル不明
『ふーん』って感じ-9
「嘘を言うな嘘を! 皆で妾たちをたばかっておるのだろう?」
そこで、失笑を向けながらフラウが鏡へと近付き「見よ、この面々を!」と、両手を広げた。
「このレックスに似た強そうな人間と比べても、その仲間たちと比べても一番みすぼらしいではないか! 品もなさそうだし、強そうにも見えぬ! 外見からも才能のなさが溢れでておるわ! ルックスもいまいちじゃしな」
「言われたい放題で泣きそう」
「おっと、決してお主が悪いわけじゃないぞ。お主の見た目が不相応と言っているだけでな……ところで、お主は誰じゃ? どうして妾たちの同行者たちに交じっておる?」
「あ、初めまして。鏡浩二です」
「はぁ? 何言っておるのじゃお前? お前のような冴えなさそうな男が、こうして妾たちが出向くほどの男なわけがなかろう?」
「ほあー……こんな失礼なクソガキ初めて。おいレックス説明しろ! 誰だこの失礼極まりない教養のなっていないお子様は? クルルの姉ちゃんの子供か何かか?」
「く……クソガキじゃと⁉ お子様じゃと! 妾にむかって無礼な!」
フラウがいきりたつと、傍に立っていた護衛の兵士たちが、手元に持っていた槍や剣を一斉に鏡へと向ける。王族を守る護衛を勤める兵士はレベルも100近くと高く、一瞬の間に鏡は頭部から膝元に至るまで刃が触れた状態になった。
「し、師匠! そちらの方は第二王女のフラウ様……シモン様のご息女だ!」
「え? クルルの姉ちゃんなの⁉ この小ささで?」
「ち……小さいだと⁉ 妾が一番気にしていることを……こう見えて21歳じゃ! えぇいもう我慢ならん! 我が騎士たちよ! この者を処刑せよ! 極刑じゃ極刑!」
興奮した様子でフラウは兵士たちに刃を突きさすように命令する。しかし、兵士たちは命令を聞こうとはせず、鏡に刃を触れさせた状態で停止したままだった。
「な、何をしておる! さっさとその無礼者を地に伏せさせぬか! 妾を侮辱した不届き者ぞ!」
「そ、それが……!」
兵士にとっても予想外だったのか、鏡の周囲を取り囲んでいた兵士たちはフラウの怒りに焦りを覚え、全員揃って困った表情を浮かべた。
「刃が……刺さりません! 全力で押しこんでいるのに全く動かないんです!」
「こいつ……一体どんな身体をしてやがる! 刃が刺さらねえ⁉」
「俺は以前王城にこいつが来た時に戦ったが、前は少しだけ刃が通ったのに! くそ……リベンジならず!」
「フラウ様のいつものだだこねだから適当に痛めつけて逃がすつもりだったが……本当に動かんぞ⁉ 嘘だろ⁉ ありえるのかこんなこと⁉」
「くそぉー……! どれだけ最低で非人道的でモラルの欠片もない底辺の人間がするような行為でもフラウ様の命令だから仕方がなく従ったのにこの様だなんて……俺はなんて無力なんだ⁉」
「おい今何人か、妾を侮辱しなかったか?」
対する刃を押し当てられている鏡は、平然とした様子で「ああ、早く終わらないかな」とボーっと遠くを見つめていた。
「師匠……何をやっているのだ? また新しいスキルが発現したのか?」
「いや、全身に力を入れてはいるけど何も? 単純にステータス高くなりすぎて防御力が凄いことになってるだけじゃないかな」
本人にもよくわかっていない事態だったが、魔獣ベルセルクを一撃で葬れる渾身の剣技を無傷で乗り越えた鏡であれば、そうなるのは当然だとロイドだけが納得してウンウンと頷いていた。
「フラウ様……こちらは正真正銘、レベル999の村人の鏡浩二です。兵を下がらせてください」
「ば、馬鹿な……こんなどっからどー見ても普通で、才能のなさそうな男が?」
「むしろ才能がないから村人なんだよ。この中で誰よりも一番才能がなさそうなのが俺なら俺以外にありえないだろ? オツム弱いのか? ちょっと考えればわかるだろ?」
「ぐぐぐぐオツムが弱いじゃと……気にしていることを!」
「自覚あんのかよ」
悔しそうにしながらも、フラウは兵士に命令を出して下がらせる。
「やっとわかってくれたか。全く……俺がもし鏡じゃなくて、ただの煽るのが大好きな一般人だったらどうしたんだ? んん? 死んでたかもしれないんだぞ? 冗談じゃすまされないだろ?」
「師匠一応言っておくが、ただの一般人は王家にあんな失礼な言葉は吐かないからな?」
「王家とか関係ありませぇーん! モラルの問題ですぅ! なんで俺のことボロカスに言ってくるやつに失礼じゃない態度を気にしないといけないんですか? このクソガキが失礼だから俺も失礼な態度取ってただけですぅ! 王家ならもっと品のある態度とったらどうですかぁ⁉ 人のこと失礼だとか無礼だとか言う前に、他人のふり見て我がふり直すべきじゃないんですかぁ⁉」
「っぐ……この言わせておけば!」
しかし、実際に間違えて好き放題言っていた手前、言い返すこともできず、かといって兵士の力でひれ伏せさせるにも実力差がありすぎて何も出来ず、フラウはただただ悔しそうに歯を噛みしめた。
「ほらほらどうした? なんとか言ったらどうだへいへーい!」
「ぐにににに……!」
「近年稀にみる物凄く低レベルな争いが王族と村人の間で勃発してるこの奇跡」
そんな二人の争いを冷めた視線でティナが見つめ続ける。
「師匠……そろそろいいだろうか? 一応師匠の言葉は同じく間違えてしまった第一王女のニニアン様にも響いているからその辺で」
「あ……すまん」
気付けば、鏡が放った言葉の全てが胸に刺さったのか、ニニアンが焦燥していた。その隣で、遂に我慢出来なくなったのかパルナが笑い転げる。その様子を兵士たちは、あらゆる面での経験値に差があると、風のように現れた一同との実力差を感じていた。
「鏡さん……それで、どうしてこちらにいらっしゃったのでしょうか? 予定ではヴァルマンの街で合流してから行動すると、余裕をみていたはずですが……それに、ロイドさんとフローネさんまでどうしてこちらに?」
「あっと……そうだな。クルルの姉ちゃんとの挨拶の前に、話とかないとな」
それから鏡たちは一時間かけて、どうして大急ぎでこの場所にまで来たのかの事情を一同に伝えた。ダークドラゴンのいる聖の森へは王都に近く、それならばと一度クルルたちを迎えに足を運んだのが王都へと立ち寄った理由だった。
そしてヴァルマンの街から王都に移動するのに既に一週間が経過しているため、六大大陸に眠る古代の兵器が稼働を開始するまで二週間と残り僅かな時間しかないことを知る。事情を知ったレックスたちは「それならば」と、急ぎ旅の支度を整えるために一度レックスたちがクルルを待っている間に利用していた宿屋へと向かった。