軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二十章 絶対的な強さの壁

「……ここにいらっしゃいましたか、随分と探しましたよ。いくらあなたとはいえ、勝手に動かれては困ります。ここは……あなたの管轄外なのですから」

地下施設ノアの中心にあるセントラルタワー。その内部は旧文明によるテクノロジーにより独特な構造で作られており、ほとんどのドアが手を触れずにも開閉する。まるで、一つの生命体かのように内部は発行する光が血脈のように張り巡らされており、それが施設全体にエネルギーを送り込んでいる正体でもあった。

そんなセントラルタワーと変わらない構造をもった施設が、ロシアの地下にも存在する。

「ん? ああ……君はえっと、何コフ君だったかな?」

「ロシア出身だからって、名前にコフがついてるというその先入観はどうかと思います。フローネです……早く覚えてください。全く……一体いつの時代の文化ですか……あ、ちなみにですが、私を呼ぶときは『君』じゃなくて、『ちゃん』って呼んでくれた方がその……好みです」

「君は……お堅いんだか、気さくなのかよくわからん人だね」

「一応です! 一応! とにかく、早くお戻りください。マスターがお待ちしております」

来栖の返しに少しだけ頬を紅潮させながら、ロシアの地下施設『ガーディアン』を管理している者の証である遥か昔に存在した軍人を連想させるペレー帽と制服を身に纏った若い二十代前半の女性、フローネが、踵を返して部屋を出る。

美麗な容姿を持ちながら、規律に厳しそうなお堅い表情を常に浮かべる黒髪のポニーテールを追って、ガーディアン内にあるセントラルタワーの中でも、特に機密の高い地下の地下に存在する人の入ったカプセルが大量に並ぶ一室を来栖もあとにした。

「あの部屋で、何をされていたんですか?」

「んん? ああ……ちょっとね。これから来るだろう大切なお客さんのために最終調整をちょこっとだけ……やっぱり、自分の手でやらないと安心できないからね」

「レベル999の村人ですか……にわかには信じがたい話ですが、あなたがノアを放棄してここに逃げてきたとなれば……さすがに信じるしかありませんね」

「僕も最初は目を疑ったよ。村人だよ? 村人? 最弱と名高いグリーンスライム相手に死んじゃうような連中だ。そもそもの能力においても、成長の期待度も0って役割で教えられてるのにレベルを999まで上げちゃう変わりものさ」

来栖から話を聞いただけで、実際に目にしていないその存在が一体どんな人物なのか想像がつかず、来栖がここに逃げるほどには驚異的な存在なのだろうとフローネは頬に汗を一滴垂らす。

「やはり……強いのですか?」

「うん、強かったよ。尋常じゃない強さだったね。彼が本気を出した時は僕も震えたよ……制限解除ってスキルだったかな? ただでさえ化け物みたいな彼の身体能力が倍近くになるんだよ」

「倍……ですか。想像できません。……太刀打ち出来る人はいないんじゃないですか?」

「どうだろうね。そのスキルは制限があって3分間しか発動出来ない。おまけに発動したあとは全く動けなくなるからいくらでも対処方法はある。ロイド君がいれば……なんとかなるんじゃないかな?」

「ロイドさんですか……あの人の名前は憶えているんですね」

「彼もまた、特別だからね」

その時、長く先の見えなかった通路の途中でフローネは足を止める。直後、足元から円形に眩い光が放たれ、その光の中に吸い込まれるようにして二人はその光に包まれると、セントラルタワー内の地下深くにあったその場所から消え去った。

暫くして、セントラルタワー内の最上階にある真っ白な壁や床に包まれた一室に、同じような円形の眩い光が放たれ、そこから来栖とフローネの二人が姿を現す。

「確かに、ロイドさんならその村人を止められるかもしれません。ですが――」

そして二人は、何事もなかったかのように会話を再開する。

「その村人は、他にもスキルを持っているのですよね? なら、ロイドさんといえども苦戦するのではないでしょうか」

「そう、そのスキルだよ。彼が本当に脅威たらしめている要素はね」

「……どういうことですか?」

「出る前に調べてきたんだよ。アースクリア内に残っていた彼の情報をね」

「逆に聞きたいのですが……今まで調べてなかったのですか?」

「調べるつもりだったけど……彼は外に出てきてからすぐに死んだ扱いになってね、興味が失せて調べていなかったんだよ。所詮やっぱり村人で、すぐに死んじゃう大したことのない存在だったってね。と思ったらやっぱり生きてて超驚きだよ」

「はぁ……? それで……その村人のスキルどうだったんですか?」

「凄いには凄かったよ。でもそれは驚異的な凄さではなかった……とはいってもそれは、アースクリアというシステムの解析結果でしかないけどね」

言葉の意味と、来栖がそこで不敵な笑みを浮かべた理由がわからず、フローネは目を細めて首を傾げる。

「それじゃあフローネには伝わらん……つまり、その村人の持つスキルの全容は、アースクリアのシステムが自己的な解釈で解析した結果であって、実際のところどうなのかはわからんということであろう?」

その時、来栖とフローネが降り立った一室の奥にある、白い階段の上を遮っている白いカーテンの奥から、老人と思われるかすれた声が響き渡り、暫くしてそのカーテンが開かれると、巨大なベッドが姿を現す。

そのベッドの上には、長く白い髭を生やし、今にも息絶えそうなほどに衰弱した優し気な瞳をもつ老人が横たわっていた。

老人の身体には頭部から足に至るまで、この施設を管理し、生命を維持するのに必要な装置が取り付けられており、大きく身体を動かすことは出来ない。だが、老人はどこか興奮した様子で来栖に視線を向けると不敵な笑みを浮かべた。

「興味深い話だな……俺にも聞かせろ」