軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

たった一人-4

もしも奇襲をかけるとしても、他のレジスタンスの隊員たちが付近にいる状態で目立つ行動は難しい。

それでも仮に、外に出たレジスタンスの隊員全員が敵であれば話は別だったが、それほどに大規模な数の敵がレジスタンスに潜んでいるのであれば、三日前の夜のように夜中にこそこそと行動せずとも、もっと上手く時間を調整して公に行動しているだろうとその可能性をメノウは排除した。

となれば、奇襲を掛けるにはやはり目立たないように、且つ、相手が抵抗して騒ぎだてたり逃げられないように動かなければならない。

そう考えれば、方法は限られてくる。

「タカコ殿、首尾はどうだ? 何か不審な者が近付いていた様子は?」

『四人でお互いの位置を確認し合いながら行動しているけど、今のところ敵らしい存在は見当たらないわ。この調子で物資を調達してそちらに合流するわね』

ヒントは、クルルが消えた時に既にあった。いくら寝ているとはいえ、高レベルの賢者であるクルルが普通の奇襲を受けて何も抵抗できずにただ消されるとは考えにくい。

それも、隣にティナが寝ている状況でならば尚更だった。

つまり、抵抗のしようもない、もしくは抵抗しても周囲に気付いてもらえない何かしらの手段を率いた奇襲が行えるとメノウは予測する。

そう考えたのも、音と気配を消し去る喰人族を敵が外に排出しているということから、敵の中にそういう力をもった何者かがいる可能性を考慮したからだ。

そしてそれは恐らく、多くは存在しない。

仮に敵が、喰人族が持つ力のオリジナルを持っていたとして、喰人族を作ることでその力を量産していたとしても、喰人族は知能が低い。つまり喰人族という失敗例が存在している以上、固定の人物だけを狙って消せるような知能をもった成功例はまだいないと判断した。

バルムンクが「喰人族の知能が進化している」と言っていたのも、その能力を最大限に発揮させるため、敵もその部分を強化させる実験を行っていると考えれば、辻褄が合った。

オリジナルが存在したとしても、その数は少ない。故にクルルを消すタイミングで全員を消さなかったのは、消せなかったからとメノウは考える。

そしてオリジナルがクルルを殺さずに捕まえて運んでいたと考えれば、隣に寝ていたティナが放置された理由にも説明がつく、手が足りなかったからだ。そう考えれば、クルルもまだ生きている可能性がある。

とはいえ、これはメノウの臆測でしかない。しかし、少なくとも散らばっている状態では一気に消し去ることは出来ないだろうとは踏んでいた。そう考えての二グループ行動だった。

「気を付けろタカコ殿、相手は恐らく喰人族と同じような力を持ち合わせているはずだ。そうなれば頼れるのは視覚のみ……最後まで油断するな。そして逆に……捕まえるんだ!」

『ええ、わかってるわ』

タカコの返事を聞くと、メノウは安心した様子で通信機を切って懐へとしまう。

「メノウ!」

その瞬間、レックスの警告を促す叫び声が周囲に響き渡る。あまりにも突然に血相を変えて叫び出したレックスに目を見開いてメノウは戸惑うが、すぐに背後を振り返って魔力を手元へと込めた。

するとそこには、マンションの壁を伝って屋上へと昇ってきたのか、黒い何かが音も気配もなく、既にメノウのすぐ視線上を跳びかかってきていた。

「現れたな!」

すぐさまメノウはそのまま仰向けに寝転がるように背後へと飛び退き、爆破魔法を黒い何かへとぶつける。

「僕に任せろ……はぁぁぁあ!」

そしてすぐ、爆破魔法によって上空へと打ち上げられた黒い何かに向けてレックスが剣を抜いて飛び上がり、空中で一刀両断する。

そのままレックスは着地し、黒い何かは音を発さずに地面へと落ちると、その身をぐったりと横たわらせてそのまま息絶えた。

「メノウ! 大丈夫? 怪我してない?」

あまりにも一瞬の出来事に身体を硬直させていたアリスが、慌ててメノウの元へと駆け寄る。

「安心してください。無傷です。それより今倒した黒い何かは……?」

「残念ながらただの喰人族だ。敵じゃない……いやまあ敵には変わりないがな」

黒い何かに視線を向けると、レックスは少し不満そうに顔を左右に振り、剣を「チンッ」と鳴らしながら鞘へと戻す。

「いや、当然だ。見晴らしの良い場所で敵が襲ってくるとは思えない。恐らく敵はかなり狡猾で頭の良いやつのはずだ。こんな失敗するとわかっているような迂闊な行動には出ないだろう」

気を取り直してメノウは立ち上がり、置いていた物資の入った布袋を持ち上げて肩にかける。

「そろそろ行こう。ここに居ても敵は来てくれないからな、できれば屋内で気付いていないふりをしながら敵を待ち伏せして……ん?」

「……タカコからじゃないか?」

その時、今度は向こうから連絡をかけてきたのか、メノウの懐に入れてあった通信機がぶーぶーと震えだす。連絡をしたばかりなのに何事かとメノウが通信機を取ると、何故かタカコらしからぬ取り乱した様子で息を荒くしていた。

『め……メノウさんですか?』

「……⁉ ティナ殿か? どうした……一体何があった?」

『タカコさんが……タカコさんがいなくなりました…………』

通信機から発せられた声が聞こえたのか、アリスとレックスと油機は目を見開いてメノウへと視線を向ける。メノウ自身も、「馬鹿な……最も速く動けるタカコ殿が?」と信じられないといった表情だった。

「何があったのだ? 敵が近付いていたことに気付かなかったのか⁉」

『いえ……何も近付いていませんでした』

「他の者は何をしていたのだ⁉ 何故タカコ殿から視線を外した!」

『見てました! 私が……私が見てました!』

「なら何故⁉」

『消えたんです……』

「……は?」

『タカコさんが、まるで……透明化するように、突然音もなく目の前から消えたんですよ!』

その瞬間、メノウの表情は青褪めた。そして同時に気付く、一つの可能性を考慮し損ねていたことに。