軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

覚えていますか?-4

「っで、実際問題どうやって切り抜けるかよね……このまますんなり通してくれるとは思えないんだけど? すんなり通してもらえることを前提にするにしても、万が一は考えないとでしょ?」

レックスのあとを頭を悩ませながらパルナが続く。

「タカコちゃんが俺とメリーを、メノウがティナを背負って全力で逃げるしかないな。正直戦ってられないし、なんとか切り抜けられるだろ」

「それか、ティナのスキルで守ってもらいながら切り抜けるかね……」

難しい顔をしながら放たれたパルナの何気ない一言に、ティナは顔を真っ青にして全力で首をぶんぶんと横に振る。実際、ティナの体力は丸一日酷使し続けたことにより限界に近く、守りながらの移動は現実的ではなかった。

「結局、特に作戦も無しに万が一は気合で切り抜けるしかないみたいだねー」

全員が不安そうにする中、最後尾を歩いていた油機だけは楽観した様子だった。クルルが少し引きつった笑みを浮かべるほど、頭に両手を置いて安心しきっていた。

「ず、随分と……楽しそうですね」

「こいつはいつもこんなんだ。どんな状況でも自分のペースを乱さない。頭おかしいんだよ」

「その言い方は酷くないかなメリーちゃん? いや、これでも本当に大丈夫だろうって思っているからこその余裕なんだけど? まあ何の根拠もないんだけど……そんな気にさせられちゃうって言えばいいのかな?」

特に張り詰めた様子もなく、いつもの呆け顔でされるがままに運ばれている鏡に視線を向けながら油機は苦笑する。「ガッカリ英雄か……」と感慨深くつぶやきながら。

「…………っ、ふぅ」

「大丈夫? メリーさん?」

そうやって苦笑を浮かべる油機の隣を、メリーは憔悴した顔つきで歩いていた。気分が悪そうなのを察してすぐさまアリスが傍へと駆け寄る。数多の戦場を経験してきたメリーも、相手の判断で生死が決まるような状況は初めてだった。

「もし、向こうから襲い掛かかってくるようなことがあれば、私は見捨ててくれ」

仮に襲い掛かられた場合、ただの人間でしかない足手まといになる。そう考えたメリーはその状況に陥った場合、いさぎよく死ぬつもりでいた。足手纏いを気にせず逃げれば、少しでも生き残れる可能性が高くなると、死を覚悟していた。それ故の心の動揺だった。

「っへ……いつ死んでも大丈夫と思ってたが、こう……焦らされるとさすがに」

そう簡単に死へのふんぎりはつけられないのだと、メリーは思わず嘲笑う。

「いや死なんし、死なせないから落ち着けよ」

だが、そんなメリーの心情を馬鹿にするかのように、鏡は淡々とそう言った。

「そんな状態の奴に言われてもなんの説得力もないんだが?」

「まあ俺は何もできないけど、少なくとも俺の仲間はそう簡単に仲間を切り捨てて逃げるようなことは絶対にしない。お前が犠牲になるつもりでも、そんなのは認めない」

それが当然とでもいうかのように、一同は頷きもせずに微笑を浮かべてただ黙って歩き続ける。それを見てメリーも「……そうかよ」とつぶやくと、悩みが消えたかのような晴れた顔つきで、先頭を歩くレックスのあとを追った。

暫くして、一同は立ち塞がる獣牙族たちの目と鼻の先の位置にまで移動する。すると立ち塞がっていた獣牙族たちは進路を阻むことなく左右にはけていった。

「…………見事に近付いてこないな」

最悪の状況になることを考えていたメリーはホッと胸を撫でおろす。

「おーし、ここを抜けてしまえば……まあそれでも喰人族とかいたりするから危険には変わりないけどマシになるだろう」

開けた進路の先に見える、地下施設ノアへと続く道を一同は周囲を警戒しながらゆっくりと歩き続ける。そんな一同を、獣牙族は観察するように注視し続けた。

「ナぜ……助ケた?」

その時、片言に発せられた言葉に、一同は思わず歩を止めて勢いよく振り返る。

「答エろ……ナぜダ?」

そこには、あまりにも勢いよく振り返られたことで少し引き気味に立ち尽くす一体の獣牙族の姿があった。予想外の声かけに一同は戸惑い、思わずひそひそと何事かとメノウを中心にして相談し始める。

「獣牙族って喋れんの? 俺あいつら『うぉおおおお』とか『うがぁぁぁぁ』とか『うほうほ』とかしか聞いたことないんだけど。俺てっきりあれで意思疎通してんのかと思ってた」

「あんたの鳴き声リストに今変な生物混ざってなかった?」

メノウの肩にぶらんと揺り下がりながら、この中では最も獣牙族を近くで見てきたであろう鏡が、心底驚いた表情でそうつぶやいたのを見て、鏡なら知っているだろうと思っていたパルナも、思わず困惑した表情を浮かべた。まさか、問答無用で殺しに掛かってくると言われている敵が、コミュニケーションを取ろうとするとは思わなかったからだ。

「まあ……ピッちゃんも獣牙族で普通に喋ってるんだから喋れるんじゃないの? なんかすごい片言で喋ってただけど」

「ピっちゃん……って、ピッタのことです?」

「え? あ、そうだけど……嫌だった? そういや自己紹介とかしてなかったわね、あたしはパルナ、あんたのお父さんの…………お友達?」

「お友達……パルナもピッタの家族です?」

「か、家族? えーっと、家族かどうかは微妙だけど仲間なのは間違いないわね、あたしの大切な妹分の一人ってところかしら」

パルナはそう言ってひょいっとピッタを持ち上げると、胸元に抱き寄せた。家族ではないと言われて一瞬しょげた顔をピッタは見せたが、胸元に抱き寄せられると満足そうに微笑する。

その様子を見て、家族としてお姉ちゃんと呼ばれていたクルルは、どこかピッタを取られたような気分になって不満げに頬を膨らませる。

「ちょいちょーい。今和やかに会話している状況じゃないだろ。早く何か返答しないとあいつらブチ切れて襲い掛かってくるぞ」