軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わりの見えない道-25

フードマントからちらりと見える鋭くもどこか気の抜けるような眼光、身長の高さ、細身の身体は、鏡の姿を脳裏によぎらせた。

だが、アリスのその考えは数秒後には消え失せてしまう。フードマントの男が持っていた石橋の破片が自分達のいる頭上を通り過ぎ、背後の石橋を支える石柱に激突したからだ。

「ちょっと……あいつやばいんじゃないの?」

一瞬の内に起きたあまりの出来事に、パルナは汗を額に浮かべる。

自分達と獣牙族はそれぞれ石橋の端の場所にいるため、少なくとも数十メートルは離れている。それだけの距離があるにもかかわらず、鉄球よりも遥かに重いであろう石の塊を壁に激突する勢いで投げつけてきたのだ。アースクリアでさえ、そんな芸当が出来るのは一つ目の巨人サイクロプスと数体のモンスターくらいだろう。それを、あんな小さな個体が投げつけてきたのだ。畏怖しないわけがなかった。

そしてフードマントの男は力任せに投げたせいで狙いを外したとでも言うように、手をぷらぷらと揺り動かして身体をほぐし始める。

「エースが出てきた以上、今視界を失うのは危険だ! 炎系統の魔法は避けて攻撃を仕掛けるんだ! ぼーっとするな! 撃て! 撃てぇぇぇ!」

バルムンクの号令により、うろたえを見せていたレジスタンスの構成員たちは冷静さを取り戻し、すぐさま狙いを定めて一斉にフードマントの男へと向けて魔力弾と、氷の槍を飛ばす魔法を雨のように撃ち放った。

それと同時に、フードマントの男は獣牙族の少女を背中にしがみつかせると、レジスタンスたちがいる方向へと向かって走り出す。まるで小さな爆撃が起きたかのような勢いで地を蹴りつけて左右を移動し、走る速度を一切落とさずに雨のように降り注ぐ攻撃を、動きの軌道を変えたのを認識できない程の身軽さで全て回避していく。

「今だ!」

あまりの攻撃の当たらなさに、悪夢が目の前から接近してくるかのような感覚を一同が抱き始めようとした時、バルムンクがしてやったと言わんばかりの笑みを浮かべて号令をかける。

その瞬間、幅広くライン状に地面が盛り上がり、左右に避けようにも範囲が広く、また、突然のことに避けきれず、フードマントの男の足元は土塊によって包まれ、動けなくなる。

「まだだ! 一気に固定してしまえ!」

バルムンクが後方支援部隊に更なる号令をけしかけると、追い打ちをかけるように魔法によって土塊がフードマントの男の下半身に絡みつく。それを繰り返し、まるで岩かのような大きさにまで固定すると、最後に後方支援部隊たちは強度をあげるために土塊を魔法で硬質化させた。

「今がチャンスだ! 全員ありったけの攻撃をあいつに注げ!」

下半身を固定されたフードマントの男は必死に抜け出そうともがくが、後方支援部隊の魔法によって相当強度が高まっているのか抜け出せずにいた。後方支援部隊の魔法使いたちも、必死にフードマントの男を抑えようと絶えず魔力を注いでいるのか、数人がかりで魔法を発動しているにもかかわらず苦しそうな表情を浮かべていた。

その甲斐あってか、フードマントの男の前方に、今からでは避けようがないほどの量の魔法弾を撃ち放つことに成功する。フードマントの男めがけて放たれた魔法弾は狙いから大きく外れることなく、一直線に螺旋状に回転しながら飛んでいく。

直後、フードマントの男は抜け出そうとするのを諦めて視線を前方へと向けて、手元に青白い仄かな光を灯らせる。そして、飛んでくる魔法弾へと向けて握り拳を作って構えをとると、目にも止まらぬ速さで両拳を前方へと突き出した。

「あれは……っ!」

見覚えのある力に、タカコは目を疑う。

残像で腕が複数あるかのような速度で拳が何度も前方へと突き出され、向かい飛んでくる魔法弾がその拳に触れると、まるで避けるかのように軌道を変えてフードマントの男の斜め後ろへと飛んでいっていた。

フードマントの男は的確に、降り注ぐ無数の魔法弾を殴打の連射で次々に逸らしていく。こちらの戦意が削がれるほどの実力を見せつけられ、いつしかレジスタンスたちが放っていた威勢を感じさせる雄叫びは、「当たれ……当たれよ!」と、恐怖と焦りが混じったものに変わっていた。

「諦めるな……魔法で焼き尽くせ! 奴は今動けん……視界が奪われても構わん!」

だがそれでも諦めまいと、バルムンクは後方支援部隊に命令を下し、複数人掛かりで炎を前方へと撃ち放つ。撃ち放たれた複数の炎は途中で交わり、渦を巻いてフードマントの男へと襲い掛かかった。

しかし、それでもフードマントの男には届かなかった。フードマントの男は炎の渦が身を包むよりも早く、下半身を覆っていた土塊から抜け出して上空へと跳んで抜け出す。魔法弾を跳ね返している間も抜け出そうと力を使っていたのだろう、土塊の強度をあげていた魔法使いたちが息を乱しながら膝を崩している様子からそれが窺えた。

「今だメリー! 絶対に狙いを外すな!」

まるでそうなってくれるのが狙いだったかのようにバルムンクは叫ぶ。

「任せな……絶対に外さない。これでお別れだぜ……エース!」

一度空中へと跳んでしまえば、獣牙族に途中で軌道変える術はない。働いた慣性のままに動くことしかできない。周囲に力場となる物体が飛んでいるならば空中であっても動き回れたかもしれないが、今空中にはフードマントの男と、背中にひっついている獣牙族の少女以外に存在せず、恰好の的となっていた。

メリーは狙撃用魔力銃器、魔力改良式ドラグノフをフードマントの男にすかさず向けると、しっかりと両腕で固定し、全身を使って発射時の衝撃に備えると、ありったけの魔力をその一発に込めて研ぎ澄まされた集中力を駆使して狙いを定める。

「……終わりだ!」

フードマントの男が着地に備え、空中で身体を一回転させようとした瞬間、メリーはそれを待っていたと言わんばかりに目を見開くと魔力銃器の引き金を引いた。すると、今まで撃ち放っていた時とは比べ物にならないほどの速度で一直線にフードマントの男の元へと魔力弾は飛んでいく。

フードマントの男の手に纏われている青白い光は攻撃を弾き返す、となれば弾かれないように手の届かない、もしくは届きにくい背中の中心部を反応しにくいタイミングを狙って的確に打ち込む必要がある。それをメリーは、寸分も狂わぬ精確さとタイミングで撃ち放った。

だがその直後、バルムンクとメリーを含め、レジスタンスたちは全員言葉を失う。

フードマントの男はそれさえも、当然かの如く回避したからだ。