軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わりの見えない道-22

「気分はどうかしら?」

「最……悪です」

クルルの膝の上に頭を乗せ、ティナは今にも死にそうな青ざめた顔で答え返す。

隣ではアリスが心配そうな表情で片手に濡れたタオルを持ち、その周囲を囲うようにしてパルナが先行き不安そうな表情で、メノウ、レックスはどこか思い詰めたかのような表情で待機していた。

「そろそろ出発みたいよ……ティナちゃん立てるかしら?」

「無理です。後五時間は休ませてください」

本気で疲れが限界に達しているのか、ティナは顔をぶんぶんと振るとクルルの膝にしがみつく。

「たった一回の戦いでここまで疲弊するなんて、この先大丈夫なのかしら……」

そんなティナを見て、パルナは深い溜息を吐いた。

「大丈夫だ。今回は敵を知らないが故に苦戦したが……次はもっと上手く戦ってみせる。相手が進化すると言っても急激な変化があるわけじゃないだろうしな。僕は……師匠がいなくても立派にやり遂げてみせる」

対照的に、レックスはやる気に満ちていた。目的を忘れたわけじゃなく、むしろどうすればそれを達成できるかを自分なりに考えていた。その結果、まずは自分達が生き残り、この世界に順応することから始めるべきだとレックスは前に進もうとしていた。

「そうね……今から出来ることから始めて行きましょう。ここで悩んでいたって仕方がないわ」

レックスを見て深く考えすぎていたと、少しだけ気を晴らし、「さあ行きましょう。ティナちゃんは私がおぶってあげるから」と言って、タカコはティナを背負おうとする。

「いや、タカコ殿はいざという時に迅速に行動が出来た方がよかろう。ティナ殿は私が」

だがすぐに、タカコを遮るようにしてメノウはティナを抱き上げた。あまりにも突然のお姫様抱っこに、ティナは青ざめた顔を一気に赤くさせてわたわたとするが、二秒後には「あ、駄目ですねこれは」と冷静になって再びメノウの腕の中でぐったりする。

「珍しいわね、メノウちゃんがアリスちゃん以外にそういうことするなんて。いつもなら『アリス様をお守りするためにも常に万全の状態を維持して』とか言いそうなのに」

「アリス様も勿論大事だが……ティナ殿も今となっては私の大切な仲間だ。それにタカコ殿を除いて運ぶとなれば、私とレックス殿しかいるまい? 昔と違って今はレックス殿とタカコ殿は明らかに私より力が上……なら、私が運ぶのは自然なことであろう?」

「私というお荷物を誰が運ぶかみたいに言うのやめてもらえませんかね……」

「む……すまんティナ殿」

ジト目でつぶやいたティナの言葉にメノウは慌てふためき、それを見ていたクルルとアリスとタカコとパルナは微笑ましそうに苦笑する。その後、他のレジスタンスの隊員が移動しているのを見て「それじゃあ行きましょう」とタカコが移動を始めると、それに続いてアリスとクルルとパルナも移動し始める。

「……何故だ?」

更にその後に続こうとメノウが一歩足を踏み出した瞬間、タカコ達が移動しているのに何故か動こうとしなかったレックスが、鋭い視線をメノウへとぶつけてそう声をかける。

「何がだレックス殿? そんなにレックス殿も私がティナ殿を運ぶのが変に思うか?」

「どうして動かなかった? そんなに僕達が頼りになったか?」

二人の間に沈黙が流れる。突然漂い始めた異様な空気に、強制的に巻き込まれたティナは「えっ⁉ えぇ~……」と二人を素早く交互に見てげんなりとする。

メノウには、レックスが何を言わんしているのかを理解できた。理解出来たからこそ、どう答え返せばいいかわからず、額に汗を垂らして必死に言葉を探していた。

「おーい二人共、何やってんの? 置いてかれちゃうよー?」

その時、いつまでも立ち止まって動こうとしないレックス達を見て、油機が手をぶんぶんと振って二人の元へと駆け寄った。

「ほらほらー、きびきび動いて動いて。はぐれたら危険なんだから。ほらほら」

「押すな、言われなくてもすぐに向かっていた。あ、こら押すな! 一人で歩ける」

そのままレックスの背後に油機は近付くと、「それそれ」と半ば強引に背中を押しつけて先に行ってしまったレジスタンス達の元へと歩かせようとする。

連れ去られたレックスを見て、安堵したかのようにメノウは溜め息を吐くと、その後に続く。メノウに抱かれてその表情を見つめていたティナは、どこか焦りを感じているかのようなその光景に違和感を覚えた。メノウが不自然な行動をしていた記憶もなく、むしろ何もせずに一緒に行動していただけ、なのに何故そんなにもレックスのあの言葉でこうも思い詰めているのか? ティナにはそれが不思議で仕方がなかった。

だが、レックスはだからこそ不自然に感じていた。

何もしなかった。いつもであれば戦闘になるとすぐさま手元に魔力を込め、敵が接近してもすぐ魔法で対処できるようにしていたメノウが、今回に限り手元に魔力を込めることもなく傍観していた。まるで、戦う気がないかのように。

そして、戦いを避けるかのようにティナを運ぶのを自分から申し出た。レックスにはそれが、何かを隠して誤魔化しているかのように感じられた。

「言えない……か」

メノウの反応を見て、仲間にも相談できない何かを抱えていると察したレックスは、それならばメノウの分も自分が戦って補えばいいだけの話だと気を取り直す。

「……仲間、だからな」

自分で言っていてどこか考え方が鏡っぽくなってきたなと、レックスは鼻で軽くふんっと笑い、背中を押してくる油機の手を払って駆け足で仲間の元へと向かった。