軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わりの見えない道-19

蹴り飛ばされた喰人族は、上空を舞い上がった後、そのまま受け身を取らずに地面へと激突し、力尽きたのか横たわったままピクリとも動かなくなる。

「随分と打たれ弱いのね」

「そこが喰人族の弱点だ。攻撃を当てることができさえずれば勝てない相手じゃない。だが……行動に一貫性がなくて動きが読みにくい。おつむの弱さを利用して今までは罠におびき寄せてなんとか対処してたが……」

バルムンクはそう言うと冷や汗を浮かべた。おつむの弱いはずの喰人族が自分達を罠にはめるかのように奇襲をかけてきたからだ。

喰人族は明らかにステルス迷彩のバリアに覆われた地点を知っていた。知ったうえでそれを利用しようと考えたのだろう、どこからともなくバリアの内側から現れる人間を捕食するべく、バリアの外側に誰か出てきたのを契機に、バリアの内側に奇襲をかけた。それも、バリアから出てきた存在の位置から中にいる者達が注視しているであろう向きを考慮に入れて。

「……っ、また進化しやがったみたいだな」

その事実に、バルムンクは前方を警戒しながらも思わず苦笑する。

「また? またってどういうこと?」

「喰人族はここまで頭の回る連中じゃなかった。知性があると言っても同族同市でコミュニケーションが取れるくらいで、ギリギリ対処できる相手だったが……今じゃ逆だ。俺達はただ捕食されるだけの」

「まるで、前はそうじゃなかったみたいに言うのね」

「その通りだ。なんならあいつらは昔、ただ人間や他の知的生命体を捕食するだけの化け物で、音だって発していた」

「……どういうこと?」

「進化は俺達人間だけの専売特許じゃないってことだ。むしろ、自力で進化出来ない俺達は……アース上でもっとも劣った存在だと言っていい」

まるで喰人族だけではなく、他の人種も進化するかのような言い方だった。そしてそれは、タカコが抱いていた疑問の一つ、進化した人間であるアースクリアの住民がどうしてこんなにも数少ないのかを物語っていた。

タカコには対処方法のわかっている相手に、アースクリアの人間がそう簡単に殺されるとは思えなかった。だが、想定外の事態が発生したのなら話は別だった。同じ対処法が通用しないのであれば、どれだけ能力の高い人間でも圧倒的な身体能力でねじ伏せられるほどでなければ隙をつかれて死ぬ。

こうも慎重に連携を意識して行動していたのは、想定外の事態が多発するアースの地上で、その隙を限りなく生まれないようにするためだったのだと理解した。

「っひ……うわ!」

その時、タカコとは正反対の位置に立つレジスタンスの前衛部隊の一人の前に喰人族が音もなく移動する。

視覚で居場所を認識する以外に対処する手段がない状況において、背後を取られないようにするこの円陣は有効ではあったが、アースクリア出身の者であっても目の前に立たれてタカコのように対処できなければ意味がなく、前衛部隊の一人は行動する暇も与えられずそのまま喰人族に噛みつかれた。

「あ……あれ? え?」

だが、喰人族の鋭く大きな牙が首元に触れた瞬間、ガキッ! という鈍い音をたててピタリと止まり、レジスタンスの前衛部隊の一人は、喰人族に顔だけを口内に入れられた状態になっていた。

「い、生きてる⁉ な、何が……だ、誰か! 暗くて何が起きてるのか……た、助けて!」

パニック状態に陥った様子で前衛部隊の一人は喰人族の口内で喚き散らす。生きているのがわかるや否や、両隣に立っていた他の前衛部隊が対処しようとするが、「陣形を崩さないで!」という背後から聞こえた一喝により動きを止める。

その直後、顔を咥えられた前衛部隊の一人のお腹から突如眩く光る熱線が撃ち放たれ、喰人族は熱線を受けた衝撃で上空へと吹き飛び、そのまま熱戦による熱で搔き消えた。

何が起きたのか全く理解できず、一同は混乱状態に陥り息を乱す前衛部隊の一人に視線を送ると絶句する。あの状況で生きていたのが信じられなかったからだ。只理解できたのは、頭を咥えられた前衛部隊の一人の背後に立って、背中に手を触れさせていたパルナが何かをしたのだろうということだけだった。

「あ、あんたが助けてくれたのか?」

「喰人族を倒したのはあたしだけど、あんたの命を助けたのは私じゃないわ。あたしがやったのはあんたの身体を使って魔法を撃ち放っただけ、魔力は勝手に使わせてもらったけどね」

「お、俺の身体と魔力を使って? そんなの出来るわけが! そもそも俺は魔力はあるが魔法をほとんど使えないんだぞ⁉」

「あたしが持ってるのはそういうスキルなのよ。あ、魔力がなくてもその時はあたしの魔力を使うから心配しなくていいわよ。見た感じ接近戦が主な戦い方みたいでどうせ使わなそうだったし、温存させてもらったわ」

パルナはそう言うと、いたずらっぽい笑みを浮かべてウィンクする。嘘かのように思えたが、自分の体内から魔力が失われていることから、それが事実であることを物語っていた。

スキル……魔女の手

効果……触れた生命体を魔力発動の媒体とし、対象の魔力を利用して魔法を発動出来る。

スキルの効果を耳にし、予想外な展開と考え方によっては他人の魔力を根こそぎ利用することも出来る恐ろしい力に、その場にいたほとんどが驚愕の表情を浮かべた。

そんな中、唯一アリスだけは過去に何度もその力で守ってもらったことから、使い方次第で今のように身に危険が降り注いでも守ってもらえる力であると解釈しており、頼もしそうにパルナを見つめて微笑を浮かべていた。