軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わりの見えない道-12

「私はアースの出身だ。あんた達と違って普通の人間……村人だと思ってくれたらいい」

「またまた謙遜しちゃってー、アースクリア出身の人間顔負けの凄腕スナイパーのくせにぃー」

「支援が出来るだけだ。ディグダーに頼らなければ何も出来ないし、敵に接近されればそれで終わり……って頭撫でるな!」

ツンっとした態度で抵抗するメリーにおかまいなしに、ニコニコと笑顔を浮かべて油機は自分の欲望を満たそうとする。

その傍らで一同は首を傾げていた。スナイパーと呼ぶには、それらしき武器をメリーは所持していないのと、スナイパーと呼ぶ程の飛距離の矢を放つのに必要な筋肉量を、アース出身のメリーが持ち合わせているとは思えなかったからだ。

「あ、そうだよね。スナイパーって言ってもアースクリア出身の人なら困惑するよね。えっとね、アースには古代人が作って残した兵器って呼ばれているディグダーがあるの。今じゃ中々手に入らない素材や失われた文明で作られたりして凄く稀少なんだけど……その中でも特に稀少な魔力を弾にして放つ魔力銃器ってのがあるんだけど、メリーちゃんはそれの使い手なの」

「魔力銃器?」

「これのことさ」

レックスが聞きなおすと、メリーは腰元のホルダーに入れてあった黒い物体を素早く手に取りだし、取っ手の部分に指を押し込んで発射口らしき部分からガォンッ! と爆発音を鳴り響かせて七色に輝く弾を撃ち放つ。

七色に輝く弾は、レックスのすぐ真横を目にも止まらぬ速さで通り抜けると、そのまま背後に存在した家屋の壁にへばり付いていた手の平サイズの生物へと命中し、弾は光を放って四散する。

「ちょっとメリーちゃん、施設内で使っちゃダメだよ! 危ないよ?」

「実際に見せた方が早いだろ? それに私の腕を疑ってんのか? 私が狙いを外すわけないだろ……ほら見ろ、土ヤモリだぜ。地面を掘ってここに紛れ込んだんだ。貴重な食料品ゲットだ」

弾が当たったことで地面にポトリと落ちた土ヤモリをメリーは拾い上げ、小さな皮袋の中に入れ込んだ。

「とりあえずこういうこと。今は弾の飛距離が短い代わりに連射が可能な魔力改良式ガバメントしかメリーちゃん持ってないけど、普段はもっと長距離にいる相手にまで弾が飛ぶ狙撃用魔力銃器、魔力改良式ドラグノフを使ってバンバンモンスターに当てるんだよ? 言っておくけど狙った獲物に弾を外さずに確実に当てるのってすごく難しいんだから」

「っふ、どうだ? ちょっとは私のことを尊敬したか?」

ない胸を張って自慢げな表情をメリーは見せるが、いまいち凄さがわからないのか一同はポカーンとした表情でメリーが持つ魔力銃器、ガバメントを見つめていた。

「これが魔力銃器……凄い速度で飛ぶのね。私でも避けれるかどうか怪しいわ」

そして暫くして、感心したかのようにタカコがそうつぶやくと、レックスとメノウも同意見なのかうんうんと頷いた。続いてパルナが、「あたしは絶対に避けれないわね、魔力で防壁作ったりとかで対処のしようはあるけど」と言うと、賛同するかのように女性陣がうんうんと頷く。

「まず避けれるとか対処のしようがあるって発想に至れる時点で、このディグダーよりあんたらの方が凄いんだけどな。まあだから、あんた達はこういうディグダーに頼らなくても充分に力を発揮出来るから、私みたいなアース出身の人間がこういうのを使って戦うんだ」

「それがあればあんた達だけでも充分戦えそうな感じするけど……來栖って奴が言うに、それでも通用しないのよね確か、どんなモンスターがいるってのよ」

「言ったろ? 兵器に部類されるディグダーはかなり稀少なんだ。そんなに数もないし……それに……」

パルナの言葉にメリーは何かを言いかけるが、「ま、実際に戦ってみたらわかるさ」と言って再び街道を歩き始める。言葉を濁す程の相手がこの先待っているかもしれないという事実にタカコは少し不穏を感じると共に――、

「そうまでしてどうして戦うの? さっきも接近されれば終わりって言ってたけど……私達アースクリア出身の人間に比べれば命を失う危険は大きいはずでしょう?」

そんな相手に対して果敢に立ち向かおうとするアースの人間の行動原理が単純に気になった。

「あ? アースクリア出身の連中ばっかりに戦わせられるわけないだろ? そりゃ前線に立って戦いはしないさ、それで死んで稀少なディグダーを失ったら元も子もないしな。でも、あんた達アースクリアの人間だっていくらでも補充できる程人員がいるわけじゃないんだ。全員生きて帰れるようにサポートくらいするさ……そもそもアース奪還は、私達が願っていることだからな」

命を失ってでも成し遂げたい夢がある。そんなかつてのアリスの信念に似通った想いがメリーから漂った哀愁ある表情から感じ取れ、タカコは思わず感極まって、「立派じゃない」と、メリーの頭をわしゃわしゃと撫でる。

案の定、「やめろ、触るな! 子供扱いするな!」と叫んでメリーは飛び退くが、「素直じゃないわねぇ……アリスちゃんとはそこだけ大違いだわ」とどこか納得した様子でタカコは苦笑を浮かべると、メリーの行く先を追った。

「まあ色々説明したけど、そんなに不安になることはないさ。相手がどんな脅威であろうとちゃんと生きて帰れるように組織があるんだ。大事なのは死ぬ程に無理せず仲間を頼って戦うことさ」

「さっきチラッと言っていた部隊のことか? 今確かそこに向かっているんだったな。そこにはお前達以外にもアースクリア出身の人間も含めて戦っている連中がたくさんいるのか?」

「ああ、この地下施設ノアの人間で構成されたレジスタンスがこの先にある。お前達と同じ英雄達……アースクリアの出身の人間もいるぞ」

「そっか……それじゃあそこに鏡さんもいるんだね」

レジスタンスの存在を聞いて、傍で戦っていた者達に聞けばいいという來栖の言葉通り、アリスはメリーの傍に近付いてパッと明るい表情で鏡の存在を聞き出そうとする。

「鏡……? 誰だそれ?」

だが、メリーは全く覚えがないのか困惑した様子で首を傾げる。油機に顔を見合わせて確認を取るが、油機も覚えがないのか同じように首を傾げていた。

「僕達が来る3……いや、1年前に役割が村人の男が来ているはずだ」

「村人……? あ、ああ! 鏡ってもしかしてあの『史上最悪のがっかり英雄』のことか? あんた達が来る一つ前に来た村人のこと⁉ ていうかあんた達あの糞英雄と知り合いなのか?」

「し、史上最悪のがっかり英雄……?」

あまりの言われように一同は顔を見合わせて困惑するが、それが誰なのか思い出しただけで憤怒した様子のメリーを見て、それが冗談で言っているわけではないのを察した。