軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

終わりの見えない道-2

「アリス様……!」

「あ、メノウ!」

外の様子をアリスがぼーっと眺めていると、通路の右側からメノウがほっと安堵した様子で姿を見せる。

「安心しました……もしかしたらアリス様とは別の場所に飛ばされたのかと」

「相変わらず心配性だなぁメノウは……ところでメノウ、ボクちょっと気になってるんだけど」

メノウに生じた謎の違和感に気付き、アリスは怪しんだ表情でメノウへと詰め寄る。すると、まじまじと観察するかのようにアリスはメノウの顔を凝視した。

「わ、私の顔がどうかしました?」

「変っていうか……なんというか。何かが足りないというか」

メノウはダークドラゴンに飛ばされる前と同じくいつもの服装で、礼装にも見えるサーコートに身を包み、上半身に合わせた紺色のズボンを履いている。見た目に特に変わった様子はない。唯一、角を隠すためにいつもつけている帽子を被ってないくらいだろう。

「……角がない!」

下から順にメノウの変化を探ったアリスはそこでようやく違和感に気付く。いつも帽子を被って隠していた角が、メノウの頭から綺麗さっぱり取り除かれており、アリスは指を差して思わず声を張り上げながら驚愕する。

指摘されたメノウも、「角がない?」と半信半疑になりながら自分の頭部へと手を触れさせ、何度か自分の頭を撫でた後にかつてない程に驚愕の表情を浮かべながら、「角が……ない⁉」とショックを受けていた。

「馬鹿な……魔王様にも立派だと褒めていただいた私の角がない⁉ ま、まさかアリス様も⁉」

そこでアリスも、着用していた服の中で魔力を抑える布だけが置かれていなかったことに気付き、後頭部につけたリボンの下に存在するはずの、垂れ下がった角へと手を触れさせるが、ペチペチと宝石のように艶めいた赤い髪を叩くだけで、角らしき物体を確認できずに終わる。

「つ、角がない!」

角がないことがわかった途端、アリスはメノウと違って落ち込んだりはせず、逆に嬉しそうに笑顔を浮かべ、「やったー!」と飛び跳ねて喜びを表現して見せた。

魔族の代名詞とも呼べる角がなくなったことを喜ぶアリスに、メノウは魔族である自分がそんなに嫌だったのかと一瞬困ったような表情浮かべるが――、

「これで、ボクが鏡さんと結婚したとしても、誰にもとやかく言われないね!」

アリスのその一言ですぐに困ったような、でもどこか微笑ましく思っているかのような複雑な表情を浮かべて感慨深そうに、「そうですね」とつぶやいた。

「でも、メノウに角がないとどこかの貴族みたいに見えるね。ボクはいつもリボンで角が隠れてたから何も見た目変わらないと思うけど」

「貴族……あんな下賤な者達と一緒にされるのはいささか不満ですが、一応褒め言葉として受け取っておきます。それにそれを言うならアリス様こそ大富豪の令嬢……いや、天使? っく……女神にしか見えません」

「メノウの目、大丈夫?」

何も変わらないと言った直後のメノウの発言に溜め息を吐きながら、アリスはとりあえずボーっと突っ立っていても仕方がないと通路の左側へと歩き始める。

「しかし、ここは一体どこなのでしょうか? 次のステージなのは間違いないのでしょうが……どうして我々はあのような場所で目覚めたのでしょう?」

「ボクに聞かれてもわからないよ。部屋をバラバラにされてた理由もわからないし。それに皆だってまだ見つかってないし……どこにいるんだろ?」

数分に渡って通路を歩き続けるが、同じ見た目のドアや置物が続くだけで、いつまで経っても出口らしき場所は見えてこなかった。あまりにも変わり映えしない通路に退屈し、アリスは途中からガラス越しに見える外の光景を眺めながら移動を始める。

するとアリスは突然何かに気付いたかのように立ち止まると、ガラスに手を当ててボーっと外の光景を凝視し始めた。

「この光景を……どう思いますか?」

「見たことがないものばっかりで正直どう言葉で表現すればいいかわからないよ。鋼鉄の箱とか、馬車とか、空を移動する乗り物とか、街の雰囲気だってボクの知らないものばかりだよ」

「ならば何故、あなたはそんなにも複雑そうな顔をしているのです?」

「……見たことないはずなのに、ボク、知っている気がするんだ。あの乗り物も、この街の雰囲気も、どこかでそれに近い何かを見ていたような……不思議な感じ」

「なるほど、世界をよく観察していないとその感覚には浸れない。……素晴らしいですね」

「……っメノウ?」

どこか異様な雰囲気を感じ取り、アリスは慌てて背後へと振り返る。するとそこにいるはずのメノウの姿は無く、白衣にも見える服に身を包み、こちらにむけて笑みを浮かべる細身の男性がすぐ背後に立っていた。

男性はアシンメトリーの長い黒髪で顔を半分包み隠し、どこか怪しい雰囲気を出しているにも関わらず、見ているだけで落ち着くような優しさに溢れた顔をしていた。そのせいか表情が読みにくく、アリスは思わず警戒して身構える。

「知っていて当然です。ここは日本、あなたが住んでいた国、ヘキサルドリアの元となった場所でもあるのですから」

すると細身の男性は、何気ない表情で神話で存在していた既に存在しないはずの国の名前を言葉にした。