軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ぶっ倒して終わりだろ?-9

「タカ……コ?」

その存在を目の当たりにした瞬間、レックスは驚愕の表情を浮かべた。二年前に街を去ったレックスから見れば、この二年で一体何があったと言いたくなるほどの威圧的な雰囲気を纏っていたからだ。思わず冷や汗を垂らして後ずさりしてしまう程だった。

そんなレックスの脳裏に過ったのは、「……こいつ本当に女性?」という考えだった。

「悪いわねクルルちゃん。これは……私のものよ」

まるで、暴君が庶民から搾取するかのように、タカコはクルルが受け取ったチケットをピッ指で挟んで奪い取ると、タカコの姿を見るや否や無言で傍によって床に座り込んだケンタ・ウロスの上にドカッと座る。

座ると同時に、「んぐほぉい!」と気持ちの悪い奇声をケンタ・ウロスがあげるが、そんなのは気にならない程に、あまりにも突然すぎる帝王かのような雰囲気を纏わせたタカコを全員が呆然と凝視した。

「タカコ殿……一体どうされたのだ? クルル殿からチケット奪う程に鏡殿の後を追いたいのか? まさか……店を私に任せて旅に出ていたのは……」

「その……まさかよ」

呟かれたその一言で、その場にいた全員が戦慄する。

「この三年間で気付いちゃったのよ……私には、鏡ちゃんが必要だってことに」

そして放たれた衝撃の事実に、クルルとアリスはショックを受けて青ざめる。「まさか……そんな」と、勝つビジョンも負けるビジョンも全く見えない異様な相手を前に、頬に一滴汗を垂らした。

そう、タカコは気付いてしまったのだ。鏡がいないと自分の恋路が全く進展しないことに。

タカコはこの三年間、デビッドにアプローチをかけ続けていたが何も進展させることが出来ず、それどころかどんどんデビッドから女扱いを受けなくなりつつあることに焦りを感じ始めていた。

鏡がいた頃はそうじゃなかった。鏡のアイデアがデビッドの裏をかき、タカコが常に一枚上手でガンガン攻めることが出来ていたが、今はそうじゃない。常識人であるタカコには、常識人であるデビッドの裏をかくアイデアが思いつけず、何をやってもさっぱりダメな毎日を繰り返していた。

そんなある日、タカコは遂に絶望し、どうせこのまま独身で平凡な日々過ごすだけで終わるくらいなら、修行して鏡の後を追い、連れ戻してデビッドとの仲を取り持たせようと考えた。

それ故に、タカコも修行の旅に出ていたのだ。

「文句は言わせないわよ? 強い人が……行くべきなんでしょう?」

そう言うと、タカコはステータスウインドウを開いて見せる。そこには、はっきりとレベル245という誰よりも強い数値が記載されていた。

そこではっきりとレックスは理解する。自分が感じた威圧的な雰囲気は単純にタカコの強さから来ていたのだと。見た目だけじゃなく、内面の強さまで手に入れたタカコにもはや死角はなかった。

「245……って、タカコさん。一体どんな修行したんですか? タカコさんは武道家でそもそも素手での戦いが強いでしょうし。鏡さんが教えてくれた方法でも経験値が得にくいでしょう?」

「全身に重りをつけて……両手を縛って尚且つ常に片足だけで戦い続けた結果よ」

女性がやるにはあまりにも過酷かつ想像を絶する修行方法を聞いて、その時の光景をイメージしてしまったティナは思わず、「聞かなきゃよかったー!」と後悔する。

「よ、よく死なずにそこまで強くなれましたね。元々修行はしてたんでしょうけど……!」

「愛が……私を強くしたのよ」

その言葉で更なる勘違いが生まれ、更なるショックにアリスとクルルは表情をより青ざめさせる。どうしたものかと二人は何かつけ入る隙はないかと、おろおろしながら周囲を見渡す。

そんな中、レックスは、『こんな凄いのと一緒にいかなきゃ行けないの? えぇ……』と、二人っきりになった時のことを想像して焦りを感じ始め、ティナは諦めたのか机に突っ伏し、デビッドはあまりにも衝撃的な怪物の登場に無表情のまま恐怖し、メノウは、「愛のために私はここで雑用させられてるのか」とまた違った意味でのショックを受け、パルナは一同の慌てっぷりにヤレヤレと溜息を吐いた。

「魔法が得意なのが一人はいた方が絶対いいでしょ? レックスと鏡とタカコさんだとバランス悪いし、行くなら接近戦が得意な人と遠距離戦が得意な人で行くべきよ」

そこで、オロオロとするクルルとアリスが見てられなかったのか、パルナがそう言って助け舟を出す。するとクルルとアリスは、「それだ!」と言わんばかりにタカコへと詰め寄り各々がチケットの所有権を主張し始める。

そしてその必死さを見て、「仲間内で何を争ってんだか」とパルナは再び溜息を吐いた。

「ならレックスちゃんがお留守番ね。私の方がレベル的に見ても上だし」

タカコの提案にレックスは驚愕の表情を浮かべながら、「ちょっと待て」と抗議の輪の中へと入る。実際、タカコはレックスよりもレベルが高く、近接戦闘という面だけで見れば強い可能性があったが、本末転倒すぎるその提案を受け入れるわけにはいかなかった。

「じゃあ回復役がいた方がいんじゃないですかねー。ほら、タカコさんがいれば戦闘なんて問題ないでしょうし、傷を治すのが得意な人が一緒の方がいいですよ! 私とか!」

「そうね……ならティナちゃん。一緒に行きましょう!」

「「ちょ、ちょっと待って!」」

回復役なら自分達でも出来るとクルルとアリスが主張し始め、バーの中はぎゃーぎゃーと誰が次のステージに行くのがふさわしいのかで揉め始める。

「……提案があるのだが」

そして暫くした後、いつまで経っても終わらない争いに痺れを切らしたのか、メノウがヤレヤレと溜息を吐きながら、真面目な表情で揉め合う一同の中に割って入る。

「もしかしたらだが、全員で行けるかもしれん……聖の森に行けばな」

するとメノウは、出来れば提案せずに胸の内で留めておきたかった一つの方法を口にした。