作品タイトル不明
ぶっ倒して終わりだろ?-7
「このチケットを何枚用意出来るかはわかりませんでしたので、勇者の役割を持つレックス様に修行してもらうのが一番良かったのです。鏡様程の力をすぐに持てないとはいえ、本質は勇者。誰よりも強くなれる素質を持っていますからな」
「それで……レックスに鏡が向かった先に行ってもらうってこと?」
パルナが聞くと、デビッドはゆっくりと頷いた。それを見てパルナは溜息を吐く。
「なーんで隠してたよ。別に教えておけばいいじゃない。ていうかティナは結局なんなのよ」
「私は別に関係なく修行の旅に出ていただけですよ? 旅に出る前にデビッドさんから、この日にレックスさんが鏡さんの跡を追って旅立つって聞いてたので見送りに来たわけです」
するとティナは胸を張ってえっへんと、「ああ、私はなんて仲間想いなんでしょう」と呟く。
「あ、でも。もう一枚チケットがあるなら私が行ってもいいですね。私もかなり強くなったんですよ? 鏡さんがやってた無茶もたまにやったりして」
そう言うとティナはステータスウィンドウを開く。そこにはレベル136という数値が確かに刻まれていた。それを見たパルナは「はんっ」と鼻で笑い、逆にステータスウインドウを見せつけ返し、ティナは驚愕の表情を浮かべる。
「ぐ……追い抜いたと思ったのに! やっぱり一年そこらじゃ無理でしたか」
「残念だったわね。強い人が行くってことなら、このチケットはあたしの物かしら?」
パルナは勝ち誇った笑みを浮かべるとテーブルの上に置かれたチケットへと手を伸ばそうとする。だが、パルナが取るよりも早く、ティナはささっとツインテールを揺らしながらテーブルの上に置かれたチケットを奪い取る。
「いやいや待ちましょう。やっぱり回復役が一人は必要だと思うんですよ。それに私も……鏡さんに会いたいですし」
「何よそれ、まさかあんたもあいつのことを……?」
「いやいや違います! 断じて違います! クルルさんみたいな惚れっぽい方と一緒にしないでください! あのアホさを見れなくなって久しいのでちょっとまた見たいってだけですよ!」
ぎゃーぎゃー言い合う二人を見て、メノウとデビッドが溜息を吐く。すると、暫くぽけーとしていたアリスの表情が引き締まり、意を決したものへと切り替わる。
「いいじゃないですか! どうせ少ししか差がないんですし! だったら回復役の方が絶対に大事ですよ! それに私が一体どんなスキルを覚えたと……ってあぁ!」
暫くして言い合いを続けるティナの背後へとアリスはそろーっと近付き、隙を見てスパッとチケットを奪い取った。
「なら、回復役も攻撃役としても活躍できるボクが行くね」
奪い取ったチケットをひらひらと揺り動かしながら、さもそれが当然かのようにアリスは満面の笑顔を浮かべる。
「待ちなさいアリス。あんたが行くならあたしが行くわ。何があるかわからないのよ?」
「ヤダ。絶対にこれだけは譲らない。ボクが鏡さんに会いに行く……会えなかったとしても、鏡さんが一体どうなってしまったのかくらい、ボクは知りたい」
「気持ちはわかるけど絶対だめよ。私はあいつにあんたのことを任せられてるんだから。絶対に絶対にぜぇ~ったい行かせないからね」
「よし、ならボクとパルナさんで行こう。レックスさんはお留守番で」
「それならオッケーよ」
二人のやり取りにレックスは、「オッケーなわけないだろ」と呆れた様子で溜息を吐く。メノウもデビッドも同意見なのか、同じように困った表情を浮かべた。
「私がレックス様にだけ修行するようにお話ししたのはこのためですよ。チケットの奪い合いになると思ったからです。チケットは1枚しか用意出来ないと思っていましたから。こんな取り合いになるくらいであれば用意しなければ良かったのでしょうが……現状を打破するには少しでも戦力が必要です」
するとデビッドはアリスからチケットを奪い取り、そのままメノウの傍に移動してチケットをメノウへと突き付ける。
「あなたが行って来てくださいメノウ様。この中でレックス様の次に力があるのはあなたのはずです。何よりあなたは一度ダークドラゴンの元に辿り着いた経験がある」
突き出されたチケットを見てメノウは困惑した表情を浮かべる。真っすぐに悲し気な表情を浮かべて視線を向けるアリスを差し置いて、自分だけが行く気になれなかったからだ。
何より、自分が受け取っても意味がない可能性があった。ダークドラゴンは、願いを叶えて次のステージに行けるのは人間だけと言っていたからだ。その真意はわからない。
だが、仮にそうだったとしても、強い者を連れていくとなれば自分よりレベルの低い者が行ったところでどうしようもないのもわかっていた。メノウは、あのダンジョンのモンスターの強さを知っているから。
「……よかろう。私で大丈夫かはわからないがな」
そしてメノウは暫く思い悩んだ後、意を決したのかそのチケットを受け取ろうとする。
「そのチケット……私に譲りなさいデビッド」
その時、バーの入り口から聞き慣れた声が響く。その懐かしい声色にデビッドは思わず目を見開いて声の聞こえた方向に視線を向けると、そこにはボロボロのマントに身を包んだクルルの姿があった。