軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ぶっ倒して終わりだろ?-5

あまりにも当たり前かのように座っていたため、拍子抜けた表情を浮かべるアリスと、呆れて溜息を吐くパルナ。数秒後、アリスはパッと表情を明るくしてレックスの元へと駆け出し、長く煌びやかな赤い髪を揺らしながら水平に飛びついた。

「熱っ!? お、お前何をする!?」

突然の飛びつきに対応出来ず、レックスは持っていた湯呑に入っていたお茶を顔面に直接被る。

「なんだ君は……僕のファンか? だったとしてもいきなり飛びついてくるとは常識がないんじゃないか? おいパルナ、僕がいなくなってから新人スタッフの教育が適当になってるんじゃないか?」

予想外の言葉にアリスは面喰らう。だがレックスの少し怒った表情から、それが冗談で言っているわけじゃないのはすぐにわかった。

「何言ってんのあんた? その子アリスよ?」

「は? 何を言っている。アリスはもっと小さいだろう。確かこれくらいで幼女と言っても過言ではなかったはずだ」

そう言うとレックスは自分の膝の下くらいに手を当てた。三年前よりも明らかに小さいその認識にアリスは思わず頬を膨らませる。

「失礼だなあ! ボクはもっと大きかったよ! ほら、これでもボクがアリスだって信じない?」

信じようとしないレックスに、後頭部の角を隠すためにつけているリボンと魔力を抑える布をアリスは外して見せつける。その瞬間、レックスは驚愕の表情を浮かべてあらゆる角度からアリスの身体をまじまじと見つめ始めた。

「……成長しすぎじゃないか? ……色々と?」

「元々三年前も13歳にしては小さすぎたのよ。遅い成長期だったってことでしょ。あんたは何も変わらないみたいだけど」

「そんなことはない! 最近髭が伸びる速度が速くなってきたし……それに筋量も昔に比べて増えたはずだ! 鍛えに鍛えまくったからな!」

「鍛えたって……あんた今まで何してたのよ? あんたとクルルがいなくなったせいで貴族のお客さんがすっごい減ったのよ? まあ今は……」

「世界各地のダンジョンを巡って籠って修行をしていた」

「はぁ? 一体何のために?」

その瞬間、アリスは何かに気付き、恐る恐るゆっくりとレックスから離れる。

「どうしたアリス?」

「いや……レックスさん、ダンジョンに籠ってたせいかな? ちょっと……臭い」

引きつった顔で笑顔を浮かべるアリスを見て、パルナもゆっくりとレックスに近付くと、その匂いを感知したと同時に、「うわっ臭!」と叫んで後ずさる。さすがにショックだったのか、レックスは無言で休憩室内を出ると、スタッフ専用の更衣室内にあるシャワー室へと向かった。

それから十数分が経過してから、タオルを首にかけてすっきりした顔でレックスは再び休憩室へと戻る。

「それで……ダンジョンに籠ってたってどういうことなの?」

「それに関しては私がご説明いたしましょう」

休憩室のドアがゆっくりと開き、そこから蝶ネクタイをつけてスーツに身を包んだ死んだ魚のような目が特徴的な男性が姿を現す。その背後に続いて、黄緑色のツインテールを垂らし、白い聖職者の服に身を包んだ少女が軽快な足取りでひょこっと顔を出した。

「ティナさん! どうしてここに?」

「おやおやアリス様。私にただいまの一言はないのですかな?」

「うっ……勝手に抜け出してごめんなさいデビッドさん」

「いいのですよ。アリス様が無事に戻って来られたのであれば何も問題ありません」

そういうとデビッドはニッコリとほほ笑んで見せた。数時間前まで、アリスが急にいなくなったことでクルルと同じようにいなくなってしまうのではないかと取り乱していたデビッドを脳裏に浮かべ、パルナは「はんっ」と鼻で笑う。

「去年とあまり変わらない気もしますが……アリスちゃんを溺愛するようになってしまってデビッドさんもすっかり保護者ですねえ。表情が豊かになったようで何よりですよ」

「ほっほっほ、そう言うティナ様こそ、一年前から随分と身長が伸びられたのではないですか?」

「いっやはぁー気付いちゃいましたか! 一時アリスちゃんに追い付かれそうになって凄く焦りましたが今ではほら……この通り」

見せつけたくて仕方がないのか、ティナはとてててとアリスの隣へと駆け寄ると、並んで「どうです!」と自信満々の顔を見せる。三年前よりティナの身長は確かに伸びていた。だが、ティナは今のアリスと同じ身長だった。

その事実を知り、ティナはショックだったのか驚愕の表情を浮かべた。

「ちょっと! 何また成長してるんですか! 私もう19ですよ!? これ以上成長しないんですよ!? このままじゃ私が一番チビになるじゃないですか!」

「そんなこと言われても……というよりティナさんはいつ戻ってきたの? 随分タイミングもいいけど……レックスさんと何か約束でもしてたの? レックスさんがダンジョンに籠ってたのってどういう理由なの?」

首を傾げながら聞くアリスと同意見なのか、パルナも軽く頷いてデビッドに説明を求める。するとデビッドは、「ここじゃなんですから移動しましょう」と提案し、今はメノウが経営を任せられているタカコのバーへと足を運ぶことになった。