軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

向き合うこと、それが始まり-11

「回復する暇を与えるとでも思ったか?」

鏡が憤りを感じて歯を噛みしめたその時、治療中だったティナの背後に一瞬にして王が接近する。

「悪いが僧侶。お前がいてはいつまでも戦いが終わらん」

「……っ!?」

あまりにも一瞬のことに、治療されていた鏡は何も反応出来ず、王はそう吐き捨ててティナの首筋に当て身を与えて気を失わせる。

「安心しろ。殺してはいない……先程も言ったが利用価値があるのでな」

すると鏡は、ティナの身を守るよりも優先して王から距離をとった。そうしないと次は自分がやられる。そう判断したから。

「っメノウ! 援護してくれ!」

「……わかってはいるが私も同じだ。身体が重い……この力、普通じゃないぞ!」

メノウが苦しそうに歪めた表情を見て、咄嗟に鏡はアリスに視線を向ける。するとアリスも同じように苦しそうな表情を浮かべていた。

「私のスキルはそういうものですので……申し訳ありません」

すると、余裕があるのか本当に困ったような表情を浮かべながら、ミリタリアはそう言った。

だが、余裕を保てるのも仕方がないと思えるほどに力の差があり、鏡とメノウは額に汗を浮かばせた。

頼りの綱であった魔王が消され、回復役のティナまでこの短時間で倒された。負けるかもしれない状況は何度も経験したことがある。だが、逃げられない状況は今まで一度もなかった。

今回は勝つか負けるか、全てを失うか凌ぐかの二択しかない。そんな状況で、明らかに劣勢な現状にメノウと鏡は額に汗を浮かべて焦りを感じていた。

「さあ……どこまで抗えるか試させてもらおう!」

その焦りの表情を鏡から垣間見え、それが見たかったと言わんばかりに王は笑みを浮かべると、そう宣言し、大剣を構えた。

それから三十分間、鏡とメノウは不利な状況にも関わらず、なんとかアリスを守りつつ戦い続けた。ミリタリアによって下げられた身体能力、レックスと王から放たれる剣による連撃、パルナから降り注ぐ魔法をその身に何度も受けながら、ギリギリのところで全て耐え凌いでいた。

だがそれも、もう限界に近かった。

これ以上はもう、アリスを守りながら戦うのは難しかった。むしろ、これ程までにボロボロになりながらよく守り抜いたと称賛して良い程に、鏡とメノウは体力の限界ギリギリまで戦った方だった。

「そろそろ諦めたらどうだ? そこの魔族の娘を見捨てれば……まだ戦えるかもしれんぞ?」

「俺は……諦めない」

「そうか……ならばもう終わらせてやろう!」

王はそう叫ぶと、一瞬にしてアリスの目の前へと移動する。そして、持っていた大剣を上へと掲げると、手加減を感じられない程の勢いで真っすぐにそれを振り下ろした。

その直後、王の行動に一つ遅れて鏡もアリスの目の前へと瞬時に移動する。だが、その時には振り下ろされた大剣は鏡の目の前にまで接近していた。身体能力が低下しているが故の感覚ずれによる遅れ。本調子であれば、振り下ろされた大剣を防げたはずの鏡にとっても想定外の遅れだった。

制限解除も間に合わない程に危機的な状況であると鏡はすぐさま判断すると、自分の身を守るよりもアリスを庇うように抱きしめてその背を王へと向けた。

そして、終わりの時は訪れた。

「か……鏡殿!」

鏡の背中から、大量の血が噴水のように噴き上がる。誰がどう見てもそれが致命傷と思える程に、王の大剣は鏡の背中に深く斬り降ろされた。

「か……鏡さん?」

アリスは鏡に抱きしめられながら、背中から血を噴き出させ虚ろな瞳を向ける鏡と共にドサッと倒れ込む。すぐさまアリスは起き上がり、鏡の身体を揺すって安否を確認しようとする。

「……鏡さん! 起きて、ねえ起きてよ!」

そして、耳を塞ぎたくなるほどに悲痛な叫びが王の間に響き渡った。

鏡は虚ろな瞳を浮かべたまま、ぴくりとも動かなくなった。

「愚かな……魔族を庇って絶命するなど。いや……すぐに反応して止められなかったワシにも責任はある……か」

王はそういうと、恨めしそうに自分の手に視線を向ける。

「何を言っている……殺したのは貴様だろう!」

「ワシはこの者を殺すつもりはなかった。ワシも……強い者が必要だからな。まさかここまでしてこの魔族の娘を庇おうとするとは思わなかったのだ」

そう言うと、王は握っていた剣を手放し、何もない歪んだ空間の中へと消し去った。

「……どういうつもりだ?」

「その村人の行動に敬意を示し、せめてもの情けだ……ワシ自身はもうこれより手出しはせん」

「逃がしてくれる訳ではないのだな」

「それは無理な相談だ。そこに……お前達魔族に恨みを抱く者がいるのでな」

そう言うと、王はパルナへと視線を向ける。対するパルナは、少し悲し気な表情を浮かべながら倒れる鏡と必死に声を呼びかけ続けるアリスの姿を見ていた。

「どうしましたパルナ?」

「え……ええ。何も問題ないわ」

様子のおかしいパルナに対し、ミリタリアはそう声をかける。すると、パルナは気を取り直すように顔を左右に振り、アリスの元へと近付いた。

「どきなさい。あなたがそこにいると、そいつの遺体を傷つけることになるわ」

そしてパルナはアリスの背後に立つと、そう言って魔力の込もった手をアリスへとかざす。

「ぱ、パルナ……貴様! 一体何をするつもりだ!」

「……殺すのよ。あんたが大事にしているアリスちゃんをね。勿論……あんたも殺すわ」

「ふざけるな! 私がさせると……っ! な、何をする!?」

殺すと宣言したパルナを止めようと、メノウが一歩足を踏み出そうとしたその瞬間、瞬時に接近してきたレックスがメノウの身体を抑えつける。

「お主がワシに求めた願いだ。好きなようにやるがいい。邪魔は入らせぬ」

「き、貴様ぁあああああああああ!」

王はそう言うと、既に興がそがれたのか、パルナに背を向けた。