作品タイトル不明
第62話:道化師 その2
アレクと出会った俺はそのまま彼を別邸へと連れ込んだ。
すると年若い執事やメイドさんがアレクを見て一瞬だけギョッとした顔になるが、すぐさま表情を取り繕って歓待してくれる。その切り替えの早さはまさにプロだ。驚かずに対応できれば完璧だったけど、アレクの外見はインパクトがあるから仕方ない。
ベテランの執事は平然と対応しているから、その辺りは経験の差によるのかもしれないが。
「出会ってすぐさま部屋に連れ込むだなんて、噂通り情熱的で積極的なのね?」
そしてアレクはというと、応接室に連れて行くなり余裕を取り戻したのかそんなことを言い出す。その口調はからかうようなもので、俺は思わず首を傾げてしまった。
「情熱的で積極的? そんな噂が流れてるのか?」
はて、そんな浮名を流すような真似をした覚えはないんだが。
「キドニア侯爵家のカリン嬢をパーティで口説いたり、異常成長したダンジョンに取り残された彼女を危険を顧みず救出したり、その後も守り抜いたり……素敵な噂が流れているわね」
「うーん……合っているような合っていないような……反応に困るな」
事実といえば事実なんだけど、そんな意図があったのかと聞かれると困る。先日の事件でダンジョンを破壊して二週間以上経っているし、王都で色んな噂が飛び交うこと自体はおかしくないのだが。
とりあえずアレクに椅子を勧め、部屋付きのメイドさんに紅茶とお茶請けのお菓子を頼む。モリオンとゲラルドもついてきたため四人分だ。ゲラルドだけ年上だが、こうして男連中だけで集まっていると前世の学生時代を思い出すな。
それと、年若い執事に俺が使っている客室から と(・) あ(・) る(・) 書(・) 類(・) を持ってくるよう頼む。
「若様、お待たせいたしました」
「いや、こちらこそ急にすまなかったな。ありがとう」
そして一分とかからず紅茶とお菓子……作り置きのクッキーが出てきた。俺がアレクを屋敷に案内した時点で準備してあったのだろう。紅茶は蒸らす時間があるし、ここまで時間ピッタリだとタイミングも見計らっていたのか。別邸ながら優秀なメイドさんでありがたい限りである。
「ん? どうかしたか?」
椅子に座ったアレクがじっと見つめてきたことに気付き、首を傾げる。何かあったのだろうか?
「……いえ、少しばかり珍しいものを見てね。それで? わざわざ屋敷に連れてきてまでアタシに聞きたいことっていうのは何かしら?」
そう言って、ティーカップに口をつけるアレク。そして『あら美味しい』と呟くのを見て俺は笑った。
「お口に合ったのならなによりだ。それで聞きたいことなんだが……ああ、来たな。ありがとう。アレク、まずはこれを読んでくれるか?」
丁度良いタイミングで執事が戻り、俺が頼んでいた書類を持ってきてくれたためアレクへ手渡す。少々分厚いが、『王国北部ダンジョン異常成長事件』に関する報告書だ。事件の発生から終結まで、どんな時にどんなことが起きたのかを時系列にまとめたものになる。
既に同様のものを王城に提出してあるためアレクなら概要ぐらいは知っているかもしれないが、さすがに報告書の全てに目を通してはいないだろう。
「これは……アタシが読んでもいいのかしら? それと、一応伝えておくけれどアタシは実戦経験がないわよ? 読んでも参考になることを言えるか保証できないわ」
「もちろんだ。君ならいずれ目にする機会があるだろうし、俺が聞きたいことにも関係するから遠慮なく読んでくれ。実戦経験の有無については気にしてないし、むしろ実戦から離れている君だからこそ色眼鏡なく見てくれるんじゃないか、なんて期待しているんだ」
『王国北部ダンジョン異常成長事件』は規模が大きすぎて隠すこともできず、機密というわけでもないため、遠慮なく読んでもらう。俺が聞きたいことに関しても、まずは内容をしっかりと理解してもらわなければ答えようがないはずだ。
そんな俺の言葉を聞いたアレクからは困惑の感情が透けて見えたが……どうやら興味自体はあったらしく、報告書を頭から読み始める。その間に俺は紅茶に口をつけ、クッキーも食べて……美味いなこれ。
「紅茶は香りがいいし、クッキーも美味しいな。うん、良い腕だ」
「きょ、恐縮でございます若様」
アレクが報告書を読み終わるまでの時間潰しにと若いメイドさんを褒める。いや、時間潰しと言うと失礼か。実際に美味しいしな。
モリオンとゲラルドも俺に倣ったのか紅茶とクッキーを口にしているが……モリオンは割と自然体だけど、ゲラルドは明らかにアレクを警戒している。まあ、外見が怪しいから仕方ないか。
「…………」
ゲラルドの視線に気付いていないのか、気付いていて無視しているのか。アレクは真剣な表情で報告書を読んでいく。報告書だから必要なことをわかりやすくまとめたつもりだけど、アレクは速読できるのか五分とかからずに報告書を読み終えたようだった。
そして、報告書から顔を上げ、俺をまじまじと見たかと思うと大きく息を吐く。
「色々と……ええ、色々と気になることというか、指揮官らしからぬ動きが多い気がするけど無視しておくわ。それで? この報告書をアタシに読ませて何が聞きたいのかしら?」
「何が聞きたいのか、か……」
そんなことを呟きつつ、メイドさんや執事をチラリと見る。するとそれだけで察してくれたのか、一礼してから部屋を出て行ってくれた。
「ミナト様、我々はどうしましょうか?」
モリオンが離席するべきか尋ねてきたため、俺は首を横に振る。
「いや、実際にあのダンジョンで戦った当事者として話を聞いてくれると助かる。ただし、俺とアレクの会話の中に 気(・) に(・) な(・) る(・) こ(・) と(・) があっても今は何も聞かないでくれ」
「はっ。それではそのようにいたします」
「だからなんでお前の方が従者らしい反応をしてるんだよ……」
素直に頷いてくれるモリオンと、そんなモリオンに対して呆れたようにツッコミを入れるゲラルド。
うん、現状の立場的にはゲラルドが俺の傍付きの従者であって、モリオンはあくまで寄り子のところから預かって傍に置いているだけだもんな。ゲラルドの方が正しいのに、モリオンは『何を言っているんだ?』とでもいわんばかりに首を傾げている。
「あなた達、仲がいいのねぇ……」
どことなく羨むような口調でアレクが呟く。それを聞いた俺は僅かに目を細め、記憶を探った。
(アレクは見た目や実家の仕事の関係上、仲が良い相手ができにくいんだったか)
外見が外見だし、女性口調だし。それならせめて女性口調をやめてみれば、とは思うが、アレクにとって道化師としての ス(・) イ(・) ッ(・) チ(・) が女性口調だったはずだ。俺はそれを知識として知っているから何も思わないが、ゲラルドみたいに警戒や不審の感情を抱く方が普通だろう。
そんなアレクも十五歳になると王立学園に入学するが、そこでも道化師という立場からは逃れられない。持ち前の性格から女子生徒に御呼ばれして女子会に参加するような一面もあるものの、友人らしい友人は『花コン』の主人公が初めてだったりする。
『花コン』で主人公の性別を男性にすると、最初にアレクの外見を見て驚きこそするがすぐに受け入れ、友人関係になる。
主人公の性別を女性にした場合はアレクの外見に驚かずにそのまま受け入れ、友人関係を築きつつも男性主人公と比べてアレクの反応が変化したはずだ。
そして主人公の性別がどちらだとしても、召喚先の世界に関して知らない主人公を助け、陰に日向に何かと気にかけるようになるのがアレクだった。
(俺としても友人付き合いができれば、とは思うけど……)
アレクは『花コン』でも数少ない、ミナトに対して中立的なキャラである。他のキャラはほとんどが敵対的で毛嫌いするか苦手に思うかだが、アレクは道化師という立場がそうさせるのか、あるいは本人の性格か、ミナトへの接し方が 普(・) 通(・) なのだ。
一応、ミナトに対して比較的好意的な態度を取るキャラも僅かにいるが……メインキャラだと二人しかいないし、『花コン』の物語が進むにつれて色々と仕出かすミナトに対して安定した態度を取るのはアレクしかいない。
だからこそ、俺としてもアレクとは仲良くしたい――が、頭がキレる人間に『よっしゃ仲良くしようぜ!』なんて明け透けに近付いても警戒されるだろう。それが許されるのは『花コン』の男性主人公ぐらいだ。
そのため俺は相談という体でアレクを連れてきたのだ。もちろん、本心から相談に乗ってほしいというのもあったが。
「聞きたいことはいくつかあるんだが……最初に情報というか、認識を共有しておこうか。その報告書にも記載しているけど、モンスターの発生数が通常のダンジョンと比べてかなり多かった。この認識で間違いはないな?」
俺はアレクの呟きに敢えて触れず、話を切り出す。
最初に話題に挙げたのは、異常成長したダンジョンでのモンスターの発生数についてだ。
異常成長したんだからモンスターの数が異常でもおかしくないのでは? なんて言われたら納得しそうだが、過去に起きたダンジョンの異常成長と比べても今回の件は異質だったらしい。
ダンジョンが異常成長した際、うちの軍役に同行していた軍監が言っていたけど過去に起きた異常成長は三件。その内 基点(コア) の破壊が一件、特定のモンスターの討伐が二件と解決方法についても教えてくれた。
今回の異常成長と過去の三件。これらを比べて何がおかしいかというと、今回はそもそも解決に乗り出す余裕すらなかったのだ。
戦力を分散して二ヶ所の防衛をしていた、片方の指揮官が軍役初体験の俺だった、トーグ村が防衛に向いていなかった、カリン達の救助や途中で悪天候に見舞われるアクシデントがあった。理由を探せばいくつも挙げられるけど、どのみち打って出てダンジョンを破壊するのは無理だっただろう。
「ええ……恥ずかしながら、若様の報告書を読むまでモンスターが通常のダンジョンより多いなんて考えもしませんでしたが……」
「私は聞いた話より多いな、と思っていたぐらいですね。ダンジョンの差か、聞いた相手が悪かったのか、実戦だとここまで違うのか。その全部なのか悩みましたが」
「アタシは知識として知っているぐらいだけど、たしかに多いわね。過去の事例と照らし合わせると……二倍……いえ、三倍ってところかしら」
俺が尋ねると全員頷いてくれる。うん、そうだよね、途中でポーションや薬が足りなくなって焦るぐらいにはモンスターが多かったよね。
「そのせいで本当に大変だったよ……で、だ。モンスターの数もそうだし、種類も獣系、軟体系、鳥系、亜人系、死霊系とバラバラだったし、リッチみたいな中級モンスターが何体も出てきたし、ボスはデュラハンだったわけだが」
「報告書を読んで、実際に話を聞くと、よくもあれだけの被害で乗り切れたと感心するわね。アタシは初陣もまだだけど、この規模の戦いになると死者や負傷者をゼロにすることなんてできないってことぐらいは知っているわ。それでもあの被害の少なさは称賛するしかないと思うの」
そう言いつつ、アレクがそろそろ本題に入れと目線で促してくる。そのため俺は苦笑すると、防衛戦を行っている最中に覚えた疑問を口にした。
「俺としても出来過ぎな結果だと思っているよ。でも、本当に 出(・) 来(・) 過(・) ぎ(・) て(・) い(・) る(・) 気がしてね。運が良かっただけかもしれないけれど、デュラハンが撃った闇属性の上級魔法に巻き込まれた兵士が一人も死ななかったし、モンスターの攻め方もおかしかった」
「そういえば、モンスターがこちらを振り回すように波状攻撃を仕掛けてきたことがありましたね。それでもあの時はお粗末過ぎてこちらに対応する余裕がありましたが……」
「――ふぅん?」
モリオンの言葉を聞いたアレクが意味深に呟く。そして俺を見て、モリオンやゲラルドを見て、どこか納得がいったように口元を歪めた。
「なるほど…… そ(・) う(・) い(・) う(・) こ(・) と(・) ね。貴方が何を聞きたいのか……いえ、何を警戒しているのかわかったわ。でも、そっちの二人は 知(・) っ(・) て(・) い(・) る(・) のかしら?」
「知らないけど、ゲラルドは俺の代の騎士団長としていずれ知る立場だし、モリオンは自力で気付くよ」
ここまでの会話で俺が聞きたいこと――『王国北部ダンジョン異常成長事件』の裏側に『魔王の影』が潜んでいるかどうか、意見が欲しいことに思い至ったらしい。
『花コン』でもアレクは他の貴族の子女よりも早い段階で『魔王』や『魔王の影』、オレア教が行っている『想書』に関する情報を得ていた。そうでなければ道化師として適切な助言が送れないからだろう。
ただし、『花コン』に登場する他の貴族のメインキャラより事情通で、見た目が奇抜で、意味深な言動をすることからプレイヤーの中にはアレクこそが『魔王の影』ではないか? なんて疑う者もいた。
(まあ、俺はそうじゃないって知っているからこそ、こうして相談できるわけだけど)
俺はメタ的にアレクが『魔王の影』ではないと知っている。それどころか『花コン』のメインキャラの中でも能力的にも立ち位置的にも重要で、出来得る限り良い関係を築いておきたい。
「ふーむ……少し時間をちょうだいね?」
アレクは俺の返答をどう捉えたのか、再度報告書に目を通し始める。そして一分とかけずに考えをまとめたのか小さく頷いた。
「あくまでアタシの私見として答えるわね? 可能性としてはゼロじゃない。でも、仮にそうだったとしてもかなり下手な指し手ね。目的が曖昧で、指し筋が雑だわ。いっそ偶然こうなったって考えちゃうぐらい」
「敢えてそう見えるようにしている可能性は?」
「もちろんゼロじゃないわよ。でも……そうねぇ。指し手がいたとしてもかなり若い……いえ、幼い? どこかチグハグな印象を受けるわ」
「む……」
アレクの言葉に俺は唸るような声を漏らす。俺が『花コン』で知る情報と乖離した意見だったからだ。
『花コン』に登場した『魔王の影』は複数――四体。
そのいずれもが幼いという印象はなかった。『魔王』を発生させて人間を滅ぼすべく、何十年、何百年と活動している面々である。人間への理解が乏しい部分があるが、少なくとも幼さとは無縁だったと思う。
(そうなると、全部ただの偶然だった? もしくは何か理由があって手を抜いていた……手を抜く理由がないんだよな。他に可能性があるとすれば……)
ただの偶然で片付けて良いものかと悩む俺だったが、疑問を解決する答えがすぐに浮かんでくる。
(この世界が『花コン』の世界だとしても、『花コン』と全く同じってことはない……というか俺がいるから全く同じじゃないんだよな。そうなると……俺が知らない『魔王の影』がいる?)
今回の件、ダンジョンが異常成長して『花コン』にないイベントが起きたように。俺が知らない『魔王の影』が『花コン』にいた、あるいは新たに誕生した可能性は否定できない。
その可能性に思い至った瞬間、俺は言い様のない怖気を全身に感じた。全身の毛穴が開いて冷や汗が一斉に噴き出るような、嫌な感覚だった。
(アレクの見立てが正しいなら、生まれてからそこまで年数が経っていない『魔王の影』が存在している可能性がある、か……ソイツが今回の異常成長を引き起こして手を出してきた……とか?)
全ては推測で、あくまで可能性として考えるならあり得る程度の話でしかない。それでも『花コン』に存在しない『魔王の影』がいる可能性など、無意識の内に排除していた。
「若様、これって本当に俺が聞いていて大丈夫な話ですか? なんというか、やばい雰囲気がするんですが」
俺とアレクの会話を聞いていたゲラルドが不安そうに尋ねてくる。大丈夫だ、しっかりとヤバいぞ。逃がさないからな。
「あの時……会話……モンスター……指揮……モンスター……モンスターの、上……?」
そしてモリオンはといえば、何かに気付いたのかはっと表情を変えて俺を見てくる。俺はそれに無言で頷きを返すに留めた。言葉にしてしまうと、それが本当にあり得てしまうのではないかという不安があったのだ。
「…… 過(・) 去(・) の(・) 事(・) 例(・) で知る限りだと、あそこまで雑な手は打たないと思うんだがな」
「ああ、例の『召喚器』の貴族ね。たしかにアレも生まれたて……だったのかしら? 途中ですり替わって化けていたって考える方が無難な気もするけど、たしかにあの悪辣さは……いえ、幼さ故の残酷さって可能性も……」
以前オレア教の教会で聞いた、貴族の家に生まれた未来予知の『召喚器』の持ち主。アレも『魔王の影』だったわけだが、その件を持ち出すとアレクも考え込んでしまう。
「な、なあ、モリオン? 若様とこの道化師は一体何の話をしているんだ?」
「……あくまで推測でしかないですが、ゲラルド、貴方も無関係ではないでしょう。おそらくパストリス子爵から話を聞かされるのではないか、と思うのですが」
さすがというべきか、ここまで話せばモリオンもある程度推測ができたようだ。ゲラルドの方は……うん、モリオンと違って武人寄りの性格をしているからか、困惑しているだけである。ただし俺達の会話や雰囲気から物騒な気配を感じ取っているらしい。
「……ふぅ……いや、新しい知見を得られたな。感謝するよアレク。君に相談してみて良かった」
『魔王の影』が知識よりも増えているかもしれない――その可能性に気付けただけでもアレクと顔を合わせた甲斐があったというものだ。
(デュラハンに回復用のポーションが効いたし、ゲームとして『花コン』をプレイした時の知識が通じる時もある……でも、 そ(・) れ(・) だ(・) け(・) じゃないんだよな)
本当に『花コン』の通り、主人公が召喚されるのか。仮に召喚されたとして、『魔王』が発生するのか――発生した『魔王』を可能なら『消滅』させ、それが無理でも出来得る限り長い年月『封印』できるのか。
それを成すためにも気が抜けない日々が続いていくのだと感じつつ、アレクに向かって礼を述べる俺だった。
アレクが帰り、自室に引っ込んだ俺は『召喚器』を発現してページを開く。するとデュラハンを倒した時のページが変化しており、予想通りだな、と思った。
それは二十五ページ目、デュラハン関連で連続していたページの内一ページが、アレクが自分と似たような出で立ちの人物――おそらくは父親のオプシディアン子爵から何かを聞いている様子だった。
推測になるが、デュラハンの件と関連して『王国北部ダンジョン異常成長事件』について聞いているのではないだろうか。
うん……まあ、それは予想通りだから別に良いんだ。何を思ったのかはわからないけど、同世代の奴が指揮を執って村を守り抜き、ボスモンスターを倒して異常成長したダンジョンを破壊した、なんて聞けば嫌でも印象に残るだろう。
「…………」
問題は、新たなページが出現していることだった。三十二ページ目に別邸の庭でアレクを中心に俺やモリオン、ゲラルドの四人で会話をしている時の光景が描かれていたのである。
(……なんで?)
何も特別なことをしていないはずなのに、『召喚器』に記録されてしまった。普通に挨拶して会話して、あとは……うん、特に何もなかったはずだ。別邸に招いて『魔王の影』に関して尋ねた時の光景が載っていたのならまだ理解もできるのだが。
『花コン』のメインキャラに何かしらの影響を与えると俺の『召喚器』が変化する、と思っていたんだけど……間違いだった? 俺はアレク本人じゃないし、何か思うところがあったとしてもわからないけどさ。
(とりあえず、初陣で野盗を斬った時のページはそのままだし、あの頃から何かしら思うところがあったわけじゃないってわかっただけ良しとするか……普通に接したのが好印象だったのかもしれないしな)
俺は『召喚器』を閉じて消しつつ、そんなことを思った。