軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第132話:生徒会とは

思いがけないメリアの行動に困惑した俺だったが、透輝にグランドエンドやアイリスルートと並行でメリアルートも進めてもらう、という意味では嬉しい誤算といえた。

ただ、あくまでもメリアルートはサブプランの一つである。『魔王』を『消滅』させるという意味ではアリな選択肢なのだが、如何せん、その方法がメリア頼みになってしまうのがいただけない。

俺としては『魔王』によって人類が滅ぶぐらいなら、メリアの力で魔王を『消滅』させてほしい。

ただしメリアルートのグッドエンド以外でそれをやると対『魔王』戦後に周辺国家が一斉に宣戦布告をしてきてパエオニア王国が滅んだり、短期間の『封印』しかできなかった上でメリアの存在が消滅したり、他にも色々起きたりと大変なことになる。

それらの中でも一番起こる可能性が高いのは周辺国家からの宣戦布告だろう。

パエオニア王国は『魔王』との戦い、発生したモンスターへの対処などで国力を大いに損耗することになるが、そこにオレア教の秘密兵器であるメリアの力が炸裂すると周辺国家が恐慌状態に陥るのである。

オレア教は『魔王』すら滅ぼせる危険な力を持っており、パエオニア王国はそんなオレア教と手を組んだ上で黙認していた――そんな否定できない事実をもとに、 そ(・) の(・) 力(・) を向けられたら自分達も滅ぼされると判断。

対『魔王』戦で消耗している今この時を逃せば勝ち目はないと、無抵抗で服従するよりも戦うことを選ぶのだ。

しかも周辺国家が全て同時に敵対するため、元々パエオニア王国相手に戦いを仕掛ける際、同調するよう同盟を組んでいたことが判明する。その裏には『魔王の影』が潜んでいることが『花コン』では描写されていたのだが。

(一発だけの超強力なミサイルみたいなもの、なんて周りにはわからないしな。いやぁ、『魔王の影』は本当……余計なことしかしねえわ)

メリアルートで『魔王』を倒せたと思ったら、エンディングロールの後に『周辺国家に宣戦布告され、最終的にパエオニア王国は滅んだ』なんて表示された時の脱力感よ……なんだよ最終的にって。なんで滅ぶまで戦争やってんだよ、なんて思ったものである。

そんなわけで、俺としては第一目標がグランドエンド、第二目標がアイリスルートのグッドエンドに手を加えた改造エンド、そしてメリアの力を借りて『魔王』をどうにかするのが第三目標だ。

アイリスルートのグッドエンドを目指し、『魔王』と戦う際にランドウ先生やメリアの力を借りて『消滅』させることができれば楽かもしれないが。

(この世界が そ(・) れ(・) を許してくれるかね?)

この世界は現実だと思っているが、ところどころにゲームを踏襲しているというか……『花コン』のタイムスケジュール通りに透輝が召喚された点から、全部が全部上手くとは思えない。

しかしそれを言い出せば 俺(ミナト) もグランドエンド以外だと途中で死ぬし、アイリスルートの改造エンドも上手くいくかわからないわけで。

(やっぱり実現できるならグランドエンドが一番なんだよな……問題は、と)

色々と考え事をしていた俺だが、その足は生徒会室へと向いていた。今日の授業が終わって放課後になったため、普段通り生徒会室に顔を出そうと思ったのだ。

生徒会室に到着したらナズナやモリオンを筆頭に、大名行列が解散となる。

これ、そろそろやめてもいいんじゃない? 駄目? 面倒だと思うんだけど……なんて思うものの、本音かどうかはわからないけど派閥の人間には割と好評だったりする。東部派閥の結束を周囲に見せるのに丁度良いんだとか。

そんなこんなで生徒会室の扉を開ける。そして中を確認するが、広い室内に反して中にいる人数はかなり少ない。いやうん、少ないというかアイリスとカトレアしかいないわ。

「お疲れ様です、アイリス殿下、カトレア先輩」

そう言って何食わぬ顔で生徒会室に足を踏み入れる俺。『花コン』を基準にして考えると、生徒会メンバーだけがこの場にいるのはおかしなことじゃない。むしろ 俺(ミナト) がいる方が異常なのだ。

それでも気にせず足を踏み入れ、最近定位置になっている椅子へ座る。アイリスにもほど近く、役職持ち以外の生徒の席の中では一番 上(・) 座(・) だ。

さて、王立ペオノール学園の生徒の頂点ともいえる生徒会だが、その運営メンバーは生徒会長、副会長、書記、会計、庶務、会長補佐、各種委員長、平の生徒会メンバーとわかれている。

この中でも基本的に毎日生徒会室で何かしらの仕事をしているのは生徒会長や副会長、あとは会長補佐といったメンバーだけだ。

書記は会議の時ぐらいしか来ないし、会計は備品のチェックや予算の計算に追われているし、庶務は生徒会に寄せられたちょっとした作業を担当しているし、各種委員長はそれぞれの仕事がある。

たとえば決闘委員会の会長であるゲラルドは部下の決闘委員の教練をしたり、決闘の立会に駆り出されたりと、やることが決まっているためわかりやすいだろう。

そして平の生徒会メンバーだが、彼ら、彼女らは基本的に必要な会議に出席するだけだ。

彼ら、彼女らは各派閥のリーダーだったり、ナンバーツーだったりと、各派閥で重要なポジションにいるだけで生徒会の中では特に重要でも必要でもない。

一学年あたり各方面の派閥につき二、三名。一学年全体で十名から十五名ほどとなり、三学年全体で見ると大人数になる。そのため毎日生徒会室に集まるのは無駄だ。そんな大人数が集まってもやることがないのだ。

そのため基本的に通常時は役職持ちだけが仕事をして、必要になれば平のメンバーが集まって意見を出したり多数決を採ったりする。

そう考えると平のメンバーである俺も毎日のように生徒会室へ来る必要はないのだが――。

(透輝の 攻(・) 略(・) 状(・) 況(・) は毎日確認しておきたいからな……あと一応、アイリスから補助を頼まれてるし)

俺が生徒会室に来る理由はほぼ私欲だ。アイリスやカトレアを手伝いつつ、透輝を誘導して『花コン』のメインキャラを攻略させるのが目的である。

「お疲れ様です、ミナト君。今日は決闘じゃないんですね」

「ハハハ、カトレア先輩、それだと俺が毎日決闘をしているみたいじゃないですか」

やだなぁ、最初の数日毎日複数回決闘をしていたけどそれが例外なだけですよ? ジェイドと決闘をして以降は一度も決闘をしてないし。

「おや、今日は透輝はいないので?」

カトレアの冗談に笑って返し、透輝がいないことを確認してから尋ねる。すると書類仕事をしていたアイリスが苦笑しながら顔を上げた。

「その、透輝さんがいても退屈でしょうから……学園内で好きに過ごすよう伝えてあるんです」

「なるほど……ま、それがいいでしょうね」

王族であるアイリス、侯爵家の長女で将来婿を取って領地を運営する予定のカトレア、辺境伯家の長男で将来領地を継ぐであろう俺。

現時点で組織の運営や政治、経済等様々な分野で学んでいる俺達と異なり、透輝は普通の高校生だ。学校で勉強することに慣れてはいても、学んだ知識をもとに実際に 仕(・) 事(・) を(・) す(・) る(・) のは経験がないだろう。

そう思えば放任というか、生徒会室で待機させるより自由に行動させた方が良いとアイリスが思うのも当然といえば当然だった。

(俺との一件で下手なことはしないようになったしな……しかし、透輝が単独行動か……)

この世界の常識や知識に関してはまだまだ勉強が必要な透輝だが、やったらまずいことは既に学んでいる。何かあっても不用意に触らない、近付かない、といったことはできるはずだ。

(メインキャラと交流を深めて生徒会メンバーにスカウトしてくれるといいんだが……ゲームみたいにいくか?)

『花コン』だと週の前半、後半、週末に行動を選択して授業を受けたり、訓練をしたり、ダンジョンに挑んだり、アイテムを錬金したり、各キャラクターと交流したりと、何をするかはプレイヤーの選択に委ねられる。

だが、ここは現実の世界だ。透輝が何十人どころか何百人といる生徒の中から『花コン』のメインキャラを探し出し、交流を深め、生徒会メンバーにスカウトする確率はどの程度だ?

『花コン』でならゲーム画面上で行先を選択し、その行先に対応したキャラクターが登場していたが、透輝が向かった場所、向かった時間に『花コン』のメインキャラが本当にいるだろうか? いたとして、透輝が話しかけて仲を深めることができるだろうか?

(……この前のメリアみたいに、俺が直接連れていく、もしくは俺が生徒会室に連れてきてメンバー入りさせてから交流させる……そっちの方が現実的だよな)

交流を深めるといっても、人間関係というのは基本的にどれだけ一緒にいたかで決まるだろう。

中には一目惚れして最初から好感度が高い、みたいな可能性もあるけど透輝と『花コン』のメインキャラの間でそんなイベントはなかった。

サブキャラのスグリはそういう傾向があったけども……スグリはグッドエンドがないから、万が一にもルートに入られると詰むしな。だからこそ俺がある程度親しくしているんだし。

透輝が各メインキャラと出会い、好感度を上げ、生徒会メンバーに誘い、生徒会に入ったら一緒に訓練したりダンジョンに挑んだりして、個別イベントを進め、好感度を更に上げて『絆』状態までもっていく。

それを卒業手前の時期までに十人分……気が遠くなるな。やっぱりアイリスルートの方が楽だわ。グランドエンド以外だと 俺(ミナト) は死ぬけど、まあ、それも必要経費として割り切るなら本当に楽なんだよな。

「な、なんですか? ミナト様、どうしてそんなにじっとわたしを見るんですか?」

俺が思わずアイリスを見ていると、その視線に気付いたアイリスがたじろいだ様子で尋ねてくる。

「いやなに、はとことして透輝との関係が上手くいっているのか気になりましてね。あとはそろそろその様付けをやめてほしいんですが、やめるとそれはそれで揉めそうだな、なんて思っただけですよ」

アイリスは基本的に透輝以外を様付けで呼んでいる。王家の人間が腰が低いと思われるかもしれないが、全員を一律で同じ扱いにしなければそれはそれで面倒なことになるからだ。

本当は俺の『はとこ殿』呼びも止めるべきなんだろうけど……以前色々と言った手前、気軽に相談してほしいのも本当だし、今の俺の立場なら無礼だなんだって文句をつけてくる奴もいないからそのままにしている。

あとはアイリスが望んだ通り、俺がアイリスと親しくしているとその『召喚器』扱いされている透輝の後ろ盾にもなるしな。

そんなわけで透輝に関して尋ねると、アイリスは作業の手を止めて視線を彷徨わせた。

「上手く……いっているのでしょうか? 同年代の異性で、透輝さんみたいに近い距離に置くことになった方は今までいなかったので……」

「はとこ殿が異性を傍に置く、なんてことになったら嫌でも注目を浴びますしねぇ。下手したら将来の王配ですし」

俺が軽口を叩くように言うと、アイリスは僅かに頬を赤く染めた。

「王配……は、さすがに、その……お兄様達も叔父上もいらっしゃいますし、えっと……」

「そうは言いますけど、殿下は継承権が第四位でしたよね? こう言っては不敬かもしれませんが、殿下を お(・) 慕(・) い(・) 申(・) し(・) 上(・) げ(・) る(・) 男子生徒はそれこそ山のようにいるのでは?」

おっと、興味をひく話題だったのかカトレアも食いついてきた。恋愛と呼ぶには血生臭い話題になるが、女性らしく興味をひかれたんだろうか。

「たしかに……はとこ殿の意向次第ですが、臣籍降下するか一家を立てて婿を取るか……継ぐ家がない、貴族の次男以下から見ればさぞ魅力的に見えるでしょう。継ぐ家があるとしても、王族を迎え入れることができれば 格(・) が(・) 上(・) が(・) る(・) というものですしね」

まるでアイリスを出世の駒か道具かのように扱う形になってしまうが、これはアイリスが王家の姫君に生まれた時から決まっていたことである。例外が起こり得るとすれば、一国を救うような大功を立てた上でアイリスと結ばれることを望むような人物が現れることぐらいだが。

(そう考えると、『魔王』を倒してアイリスと結婚するアイリスルートのグッドエンドは理にかなっている気がしてきた……いや、『花コン』のイベントを踏襲するなら俺は死んでるから、アイリスと透輝が結婚するところは見られないんだけどさ)

グランドエンド以外に入った場合、俺も本当に死ぬんだろうか? 『魔王の影』に利用される気なんてサラサラないし、仮に襲われても抵抗できる程度には鍛えてきたつもりだが。

(それこそどうやっても『花コン』通りになるなら、元々 そ(・) う(・) い(・) う(・) 運(・) 命(・) でグランドエンド以外だと死ぬんだろうけど……その場合、今の俺が死ぬ原因ってなんだろうな)

『魔王の影』が想定以上に強いのか、急に心臓発作でも起きて死ぬのか。前者はともかく後者はどうしようもなさすぎて、いっそ笑えてくるが。

まあ、その辺りは考えすぎても仕方がない。俺が焦りと羞恥が半々といった様子のアイリスを眺めていると、アイリスの視線がカトレアへと向く。

「わ、わたしのことは置いといて……カトレア様もわたしと似たような立場ですよね? お相手の目途は立っているんですか?」

「あら、痛いところを突かれてしまいましたね。わたしの方は……うーん、探してはいるんですけどねぇ……」

カトレアも侯爵家に来る婿を求めている立場上、アイリスと似た立場といえばそうかもしれない。アイリスとの違いがあるとすれば、よっぽど優秀じゃない限りカトレアが爵位を継いで夫は添え物になるって点か。中々に難易度が高そうだ。

「素直で能力があって、権力に溺れなくて、あとは剣が達者なら言うことないんだけど……」

そんなことを言いつつ、チラ、と俺を見てくる。いや、見られても困りますよ。

「俺は先約済みですから」

「残念ねぇ……まあ、どの道嫡男と嫡女じゃどうにもならないんだけど」

からかうようにしてカトレアが言ってくるが、どちらも嫁に行ったり婿に行ったりできない立場だ。だからこそ気楽に言える部分があり、俺も笑って返す。

(アイリスの方は……透輝はまだまだ好感度が初期値から増えてない、か。こればっかりは仕方ないな)

日々、少しずつ仲を深めてもらおう。今は生徒会室にいないが、普段はもっと一緒にいるのだ。俺も微力ながらアイリスと透輝の仲が深まるよう、助力しよう。

そんなことを思いつつ、俺は入学直後の慌ただしさが嘘みたいな、平穏な放課後を過ごすのだった。