軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四百十二話 戦場で暴れ回る

四方八方を敵に囲まれ、直近の味方はファミリス一人。

傍目から見たら絶望的な状況だろう。

けれど、そんなに悲観する状況ではないと、俺は感じている。

「さあ、挑んで来い!」

帝国の兵士たちへ挑発しながら、俺は右手で剣を振り、左手で手綱を操る。

神聖術を纏った剣は敵兵を切り裂き、人馬一体の神聖術で強化された乗馬の後ろ脚の蹴りが敵兵の胸元をくぼませる。

「さあさあ! どうしたどうした!」

俺が乗馬と共に暴れ回っていると、帝国の兵士の中から声があがった。

「単独で当たるな! 取り囲め!」

「剣と馬の脚は長くない! 槍を使え!」

剣を持つ兵士が退き、引き換えに槍持ちがわらわらと近寄ってきた。

たしかに槍の長さがあれば、俺の剣と乗馬の脚の間合いの外から攻撃することができるだろう。

けどそれは、俺がこの場に留まっていればの話。

いや、そもそもだ。槍に周りを取り囲まれる状況になったら、俺と帝国の兵士との間合いが広がるので、上空から『鳥』が俺を狙って落ちてくる可能性が高まる。

ここはやはり、相手に間合いを取らせない立ち回りが必須だろう。

「無理矢理にでも、近づく!」

俺は鐙で乗馬の腹を蹴り、間合いを取ろうとしている帝国の兵士に近づかせる。

こちらの行動が予想外だったのか、帝国の兵士の一部に混乱が生まれた。

「う、うわっ!」

帝国の兵士の一人が、驚きの声と共に、槍をこちらに突き出してきた。

槍の穂先は、魔法が発動していることを伺わせる、ほの明るい光が灯っている。

まともに食らえば、神聖術を発動している身とはいえ、手痛い一撃になってしまったことだろう。

しかし慌てて放った一撃なんて、腰も入っていなければ、勢いすらない。

俺はあっさりと剣で槍を横に打ち払うと、乗馬を不用意に攻撃してきた兵士へと突き進ませた。

馬と兵士が衝突し、重さの差から、兵士が空中へと吹っ飛んだ。

飛んだ兵士が空中を漂っている間に、俺は周囲の敵兵へと剣を振り回す。

「たああああああああ!」

二度、三度と振り回し、敵兵一人の頭を両断し、他の二人に手傷を負わせる。

ここでオマケに、乗馬に後ろ脚で周囲を蹴り回させ、さらに敵兵三人を蹴り飛ばさせた。

俺が暴れ回っていられるように、少し離れた場所では、ファミリスが大暴れしていた。

「帝国の兵士は弱くなったようだな!」

ファミリスは嘲笑が聞こえてきそうな声色で言い放つと、雑草を払うかのように、敵兵をばったばったと斬り伏せていく。

帝国の兵士たちは、ファミリスは俺と違って槍でも止められないと判断したのか、盾を持った兵が周囲を固めている。

あの盾にも魔法の輝きがあるので、並大抵の防御力ではないはずだ。

しかしファミリスにとって、普通の盾と変わらないんだろう。一撃で盾を両断し、その後ろに隠れる兵士すらも斬り捨てている。

……いや、盾を両断できること自体、普通じゃないよな。俺も神聖術を使ったら盾の両断ぐらい出来るようになっているから、ちょっと感覚がズレてしまっているな。

そんなこんなで俺とファミリスが帝国の兵士と相対していると、やがて俺たちの後方で爆発音が聞こえるようになってきた。

音の種類は、『鳥』が爆発したときと同じもの。

俺は帝国の兵士を斬り伏せた後で、一瞬だけノネッテ合州国の軍勢が居る後方に視線を向ける。

その一瞬で見えた光景は、上空から『鳥』がノネッテ合州国の軍勢へと落ちていく様子だった。

俺とファミリスに使うと味方に被害が出るから、味方の被害を気にしなくていい相手に『鳥』を使うことにしたようだ。

「ノネッテ合州国の軍勢の最前線は大楯持ちだ。あの盾も魔導の盾だ。『鳥』の爆発なら何発か耐えられる」

正確に言えば、盾自体なら十発ぐらいは持ちこたえられるだろう。しかし盾を持つ兵士の魔力が、何回かの爆発で尽きてしまう。

あの盾は、魔力が多い者が兵士になっている帝国の魔導盾を参考に作られたもので、魔力の少ない人物が使うよう設計されていないからな。

一応は魔導鎧の技術を応用して、出来るだけ魔力消費を押えた作りにはしているけれど、それにも限度がある。

それこそ帝国の魔法なんて強力な攻撃を防ごうと思ったら、やっぱり数回で盾持ちの兵士の魔力が尽きてしまう。

とはいえ、帝国の『鳥』の数は百を少し越えるぐらい。

一方でノネッテ合州国の軍勢の盾持ちは、千を優に超える。

割合を考えたら、盾持ちの兵士の魔力が尽きることはないはずだ。

「って、そんなことを気にしている場合じゃないよね」

上空の『鳥』がノネッテ合州国の軍勢に向けられているのなら、こうして敵兵に囲まれ続ける意味はない。

俺が怖がったのは、あの『鳥』が百も一斉に振ってきて、絨毯爆撃を受けること。

現時点で上空を周っている『鳥』の数は、ほんの十羽程度。

このぐらいの数じゃ、絨毯爆撃にはならない。

「ファミリス! 突破するよ! 狙いは、敵の魔法使い部隊!」

「了解! 邪魔だ、退くがいい!」

ファミリスはネロテオラを暴れ回させて、帝国の兵士を吹っ飛ばす。

俺も暴れて敵兵を下がらせた。

そうして空いた空間を利用して、俺とファミリスは乗馬を加速させ、増速した馬体をもって敵の包囲網を無理矢理に突き破る。

俺たちの狙いを知り、帝国の兵士たちは慌てて対応しようとしてくる。

「止めろ! 体で塞げ!」

「これ以上進ませたら、非常事態だからと、味方の魔法を食らうことになるぞ!」

帝国の兵士から悲痛な声が上がる。

どうやら帝国の魔法使いたちは、いよいよとなったら味方の被害を無視して、俺たちを魔法で攻撃してくるらしい。

そう知ってから帝国の陣地後方に視線を向けると、昔に騎士国と帝国との戦争で見た、三つの杖を掛け合わせたような形の魔導具が幾つも立ち上がっている。

「さて、このまま後方陣地へ突撃するか、あえて魔法を食らうよう立ち回って帝国の兵士を巻き込まさせるか」

同士討ちで敵を減らさせることに魅力を感じたけど、ただでさえ危険な戦場で更にリスクを上乗せする必要はないよな。

それに、敵の魔法使いに俺たちを遠慮なく狙わせた方が、ノネッテ合州国の軍勢への魔法攻撃を減らすことに繋がる。

やっぱり、このまま突撃が最適解だろう。

「さあ、押し切ってくよ!」

「言われずともですね!」

俺とファミリスはお互いに近くに寄り合うと、並走した状態で帝国の後方陣地へ向けて進みだす。

途中、帝国の兵士たちが進路を塞いでくるが、遠慮なく馬で轢き殺して進んでいった。