軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 騎士国/帝国の軍勢の判断

神聖騎士国の面々は、前騎士王テレトゥトスが死体となって戻ってきたことに、大きな衝撃を受けていた。

「まさか、この方が戦いで破れるなど……」

歳を取って王の座から退いたとはいえ、一対一ならば神聖騎士国の五指に入る実力者だった。

そんな人物が後頭部に短剣を突き刺されて負けるなど、神聖騎士国の面々にはどうやって行ったかすら謎だった。

そして突き刺さったままの短剣に騎士王家の紋章が入っているのを見れば、その不可解なことを成した人物が誰なのかは一目瞭然だった。

「ノネッテ合州国のミリモス・ノネッテ。次女姫様の夫君。天然の神聖術の使い手ということだが、それほどの強者なのか?」

齢が三十にも届いていないミリモスが、こうしてテレトゥトスに勝てるなど、騎士国の面々には腑に落ちない事実だった。

この面々の多くが知るミリモスの実力は、パルベラ姫との結婚の許しを得るために、騎士王の前で行った腕試しのときのもの。

数年前の出来事ではあるが、その時点から順調に実力を伸ばしたとしてもミリモスがテレトゥトスに勝てるとは、どうしても考えられなかった。

そんな意見が大半を占める中、反論を展開したのは、コンスタティナだった。

「ミリモス殿は、風変りだった。自分のことを弱者であると認識しつつも、強者にどうにか討ち勝たんと策を巡らす、そんな戦い方だった」

「ではテレトゥトス様は、その風変わりな戦い方に足を掬われて倒されてしまったと?」

多少の手練手管で倒される程度の人物が、騎士国の王に成ることはない。

それ故に、テレトゥトスが自身の失策で負けたとは、この場にいる騎士の多くにとって考えられないことだった。

しかしコンスタティナにとっては、万が一ならあり得ると考えることができた。

「御父様はノネッテ合州国に赴いた際に、ミリモス殿と戦っている。そのとき、御父様が自覚なく生んでしまう隙を、ミリモス殿が把握した可能性がある」

「そんな、まさか」

「忘れてはいないか。この戦争の中で、騎馬術に長けた騎士が前線を突破し、ミリモス殿に肉薄したことがあった。そのとき、ミリモス殿は一撃でその騎士を退けてしまったという。初対面かつ馬に乗った彼の騎士を相手に、そんな真似ができる人物がどれほどいる?」

「それは……」

初対面の相手ならば、先ずは力量を確かめるために数合剣を合わせるのが定石といえる。仮に明らかに自分より劣る相手であっても、何か隠し玉があるかもとの用心で、最低でも一合は剣を合わせることだろう。

馬に乗った相手だったのなら、なおさら剣の腕と馬術の腕を確認するために、何度か実力を測るために剣を交えざるを得ない。

それが定石――自分の身を安全にしつつ、確実に勝ちを掴みとるための戦法だと言えた。

しかしミリモスは、そんな定石を投げ捨てて、馬に乗る騎士を一撃で下したと報告がある。

その行為はすなわち、相手に隙があると見るや、自分の身を危険に投げ入れてでも勝ちを取る人物である証拠といえた。

「テレトゥトス様は、後の帝国との戦いに備えるため、安全に勝とうと考えていた節があった。一方でミリモス殿は、捨て身で勝ちをもぎ取りに行った。そんな二人の心意の差が、実力差を覆したのではないかと?」

「加えて、相手の動揺を誘う奇策が、ミリモス殿の手元に勝利の糸が垂れた理由なのでしょう」

「ミリモス殿は奇策を用いてくる死兵であると考えよと、コンスタティナ様は仰りたいわけですな」

死兵とは、死を厭わずに戦いを挑んでくる者のこと。それこそ、自分の死と引きかえにしてでも相手を殺す、という行動をしてくる存在だ。

その本来の死兵の場合、死の恐怖を忘れるために、単一目的のみに固執した行動を取る――つまり頭を使った戦い方は、やろうと思っても出来ない。下手に思考力を残していると、死の恐怖に体がすくんで死兵足りえなくなるからだ。

しかしミリモスは、死に身を晒すことを厭わないまま、敵を欺く策を生み出して用いていた。

冷静な頭脳のままに死兵と成ることができるなど、それだけで稀な才能の人物といえる。

これは、ミリモスが自身をどう思っているかを置いておきミリモスが行った事実を見て考えると、神聖騎士国の面々にとってそう考えざるを得ないという話である。

「テレトゥトス殿ほどの強者が負けたことを鑑みるに、冷静な死兵に討ち勝つには、こちらも死兵とならねばならぬということだろうな」

「いや、死兵と化すだけでは不足なのだろう。彼の馬術に長けた者は、我が身を捨ててミリモス殿を討つ気構えでいたはず。にも関わらず打ち負けたということは、冷静さを欠いた意識では負ける証左であろう」

「ミリモス殿と同じ心持ちと頭脳を持つ者を用意せよと? それは無理ではないか?」

生物の基本原理は、生き延びること。その原理が『正しい』ことだと、神聖騎士国の面々は考える。

そんな意識が根底にあるからこそ、日本にある成句の『死中に活を求める』といった考えは浮かんでこない。

「死を忌避することは人として当たり前の感情。その感情を押し殺そうとすれば、どうしても思考は鈍らざるを得ない。まったく、ミリモス殿はどうやって、死の恐怖を乗り越えながら冷静に戦えるのだろうか」

「一度死を体験すれば出来ようが――死んでしまえば、それで終わりなのだ。意味のない考えだな」

ミリモスと同じような人物は用意できないと、一同の認識が定まった。

ならば、どうやって倒せばいいのかと、議論が向かおうとする。

その一歩手前で、ここまで黙っていた今代騎士王のジャスケオスが口を開いた。

「ミリモス殿を倒そうとするならば、戦った経験のない人物を数人集め、一度に掛かるしかないでしょう」

一人でダメなら、多人数で戦えばいい。

当たり前の論法だが、ここまで神聖騎士国の面々が口にしなかったのには理由がある。

それは――ジャスケオスが言葉にする。

「しかしミリモス殿は、陣地の後方に位置している。前線を構築するノネッテ合州国の軍勢を抜けて殺到することは難しい。我が国の騎士であっても、あの大柄の鎧を着た者に数人が仮で抱き着かれれば振り払うことができなくなるのは、数日前に行った戦法で証明されています」

「……その通りでございます。大人数で抜けることが出来ないと判明したからこそ、今日の戦いでは前騎士王様とコンスタティナ様に前線を突破していただいたのです」

「結果は、コンスタティナは足止めされ、テレトゥトス殿はミリモス殿によって討ち死に。事ここに至っては、判断するしかないでしょう」

「判断とは?」

「ノネッテ合州国の軍勢に打ち勝つことは難しいということをですよ」

ジャスケオスの発言に、一同は驚きで目を剥いた。

「負けを認めろと!?」

驚愕の声に、ジャスケオスは落ち着けと身振りした。

「そうではありません。このまま戦っていけば、我が軍勢がノネッテ合州国の軍勢に勝つことは間違いなでしょう。今日一日で多くの被害を相手に与えていることから、それは分かります」

今日の戦いで、神聖騎士国の側はそれなりの被害が出ていた。しかしそれ以上に、ノネッテ合州国の軍勢の被害は大きい。

今日の戦いの調子で戦っていけば、三日でノネッテ合州国の軍勢が人的被害から瓦解することは予想がついた。

しかし、その勝利は、神聖騎士国の軍勢の大半を使い潰しての勝利だ。

「大被害を被ってノネッテ合州国に勝利したとしても、後にある帝国との戦いで負けてしまいかねません。そうなっては、結局は負けです。とはいえ、安全にノネッテ合州国の軍勢に被害を与えようとすると、時間がかかり過ぎてしまいます。帝国が最終防衛地点を過ぎてしまった場合も、我々の負けになってしまいます」

手詰まりだと言いたげなジャスケオスの言葉に、一同は顔色を暗くする。

しかしジャスケオスの顔色は、一向に曇ったりはしなかった。

「簡単にノネッテ合州国の軍勢に勝てないのであれば、相手を変えればいいのです」

唐突に起こったジャスケオスの言葉に、神聖騎士国の面々はなにを言われたのか理解が出来なかった。

「相手を変えるとは?」

「この戦場から引き上げて、我が国の領土を侵攻中の帝国に殴りかかろうと言っているんです」

俗っぽい言葉をあえて使ったと分かる口調での説明に、今度こそ面々は驚いた顔になった。

「ノネッテ合州国の軍勢に勝たなければ、帝国と戦っても負けるだけでは?」

「我らが勝つ条件は、それだけではありません。正しく表現するのならば、ノネッテ合州国の軍勢もしくは帝国の軍勢の、どちらかを先に叩き潰せば勝てる、というものですよ。ノネッテ合州国の軍勢が手強いのならば、帝国の軍勢を先に潰してしまっても良いのですよ」

確かに騎士国の勝利条件は、ジャスケオスの言った通りだ。

しかし面々は納得し辛いようだった。

「勝利条件がそうあろうとも、現時点でノネッテ合州国を放置して移動すれば、我らはノネッテ合州国の軍勢から追撃を受けるのでは?」

「そうはなりませんよ。ノネッテ合州国の軍勢は、今日多くの被害を受けています。その被害がある程度回復するまで、すぐに後を追いかけてくることは難しいでしょう。それにノネッテ合州国の軍勢の多くは、重たい鎧を着た者たちです。そんな重りを持つ者たちですから、神聖術を使って移動する我々の速度に追いつけるとは思えません」

ここまで説明されて、ようやく神聖騎士国の面々は理解した。

今日無理攻めに等しい戦い方をしたのは、作戦が成功してミリモスが打ち取れれば良し、打ち取れなくてもノネッテ合州国の軍勢に被害を与えて追う足を止めるためだったのだと。

帝国に攻めかかるための布石なのだと理解してからは、面々の理解が進むのは速かった。

「確かに、ノネッテ合州国の軍勢は足が遅い。移動する我々に追いつくのは難しいな」

「しかし取って返して帝国に殴りかかるなど、出来るものか?」

「帝国の軍勢の位置は、黒騎士が見張っているだろうから、判明は用意だろう」

「付け加えて言いますと、帝国は我々の襲撃を予期していません。その油断を誘うために、帝国と相対する我が国の部隊には、足止めのみを周知徹底せてきたのですからね」

ジャスケオスの追加説明に、再び面々は舌を巻いた。

足止め部隊を用いることで、帝国に『騎士国はノネッテ合州国の軍勢を打ち倒すまでの時間を稼いでいるのだ』と意識させる。つまり『ノネッテ合州国の軍勢を倒すまで、騎士国の本隊はやってこない』と無意識に誤解させるよう誘導したということ。

そして、予期しない場所から攻撃を受けると軍隊は脆いものだというのは、この世の常識だった。

「手強いノネッテ合州国の軍勢は放置し、油断しきって倒しやすそうな帝国の連中を叩く。なるほど、道理に合っている」

「帝国の連中は最終防衛地点まで急いで移動しようとしているはず。隊列が伸びている軍隊など、薄紙のようなもの。楽に打ち破れよう」

すっかり神聖騎士国の面々の意識は、ノネッテ合州国から帝国へと移ってしまったようだった。

そうして神聖騎士国の軍勢は、ジャスケオスの計画に合わせて、この戦場から撤退することを選んだ。

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帝国の軍勢は、我が物顔で騎士国領内を進んでいた。

途中途中で騎士国の少数の部隊が足止めを行ってきはするものの、帝国の大軍勢の前には無力だと理解しているのだろう、対した邪魔が出来ないまま逃げていく。

その騎士国の部隊の情けない様子を見て、侵攻部隊の最前線に配置された帝国将軍は笑ってしまう。

「ぐふふふっ。無駄な足止めなど止めて、最終防衛地点まで引きこもっていればよいのにのお」

帝国将軍は、逃げる騎士国の部隊を無視して、騎士国領土の奥へ奥へと部隊を進めさせる。

もちろん敵が色々な足止めをしてくることを見越して、斥候を放っている。斥候専用に育成した人材もそうだが、鳥を模した魔導具による天空からの索敵も行っている。

故に軍勢の行軍は、戦争開始から順風満帆に進んでいる。

それこそ余りの進みの良さから、占領した村や町で軍勢を休ませる余裕があるほどだ。

「ぐふふふっ。借り上げた家で指揮官級以上の者は休むように。食料も買い上げて大鍋で作れ。作った料理は村人に振舞うことも忘れるなよ。食料に毒が入れられていれば、村人が拒否するはずだからな。それと、借り上げと買い上げは共に軍票で行うように。略奪されたと勘違いされては、帝国軍人の恥になるからな。ぐふふふふっ」

軍票とは、帝国軍が貨幣の代わりに配る金券のこと。帝国の然るべき場所に持って行けば、額面に記されたお金を払ってもらえる。

逆を返せば、騎士国の中で持っていても紙屑にしかならない物だとも言えた。

そんな紙切れでの支払を行うことは、実は帝国の占領地政策の一環だったりする。

人間は得た物の価値が減じられることを、極端に嫌がる性質を持っている。

例えば、帝国で使えば金貨百枚になる軍票を手に入れたとしよう。

しかし軍票は、騎士国に居ては銅貨一枚の価値すらない。

では、その軍票を手にした者は、どう行動するだろうか。

普通に考えるなら、その者は帝国に出向いて換金することだろう。

では、軍票を手にした相手が、町村だった場合はどうなるだろうか。

騎士国に所属したままでは無価値の紙が、帝国に属した途端に金貨百枚に変わるのだ。

思わず、騎士国から帝国に所属を変えようと考えてしまうのではないだろうか。

もちろん、軍票を手にした町村全てが帝国に帰順するとは、帝国のお偉いさんも思っていない。

単純に、騎士国の支配から脱却しても良いかなと考えてしまう土壌を生み出せれば、それで構わないのだ。

なにせ現時点で、もし未来に町村が騎士国の所属を続けたとしても、帝国には得しかない。

なにせ紙入れ一枚で家の借り上げから食料の買い上げを行っている――つまりは、ほぼタダで寝床と食料を奪い取っている図式だ。むしろ、騎士国に所属したままを選んでくれた方が、帝国にとっては金貨が減らないから良いと考える風潮すらあるほどだったりする。

ともあれ、そうした軍票をばら撒いて、侵攻軍の帝国将軍は配下に良い目を見させてやった。

新鮮な食料と上等な寝床を得て、部下たちの健康と意気は高い水準を保っている。

帝国将軍自体も、未亡人からの歓待を受けて、大満足の心持ちである。

「よしっ、進軍だ!」

帝国将軍の号令と共に、帝国の軍勢は騎士国の奥へと向かって進軍を開始。

一日で移動できるだけ移動する気でいるが、途中に良い休憩場所になりそうな町村があれば滞在する。

そんなことを繰り返しながらの進軍は、帝国の軍人にとってピクニックに等しい移動だった。

「大した戦いもないまま、上手い飯が食えて、言い値どこで寝れる。今回の戦いは楽なこと、この上ないな」

「ははっ、違いねえ。それもこれも、如才なく立ち回ってくださる、我らが将軍様の手管のお陰ってな」

移動中の兵士たちの顔は明るい。

その様子を見て、帝国将軍の気持ちも満たされる。

しかし気は抜いていない。少数部隊とはいえ、騎士国の部隊が足止めしようと向かってきているのだ。慢心からうっかりと大被害を受けてしまえば、将軍の座を交替されてしまう。

下手な者に部隊指揮が渡ることになれば、配下たちが不幸な目に合うことになってしまう。

折角ここまで健全に部隊を保てているのに、その苦労が水の泡になることは、帝国将軍にとって耐えがたかった。

「軍とは帝王様の所有物。つまりは帝王様からの預かり物。その預かっている配下を悪戯に消耗させるなど、将軍の座にある者がして良い真似ではないからな。ぐふふふふっ」

そう考えて、真っ当に指揮をし続ける帝国将軍。

しかし、そんな彼にも気の緩みは存在した。

騎士国の本隊は、ノネッテ合州国の軍勢と戦闘中。だから帝国の軍隊に攻めてくる騎士国の軍勢は居ない。

侵攻する帝国の軍勢にいる誰もが考えるように、帝国将軍もそう考えてしまった。

だから斥候も鳥の魔導具も進行方向にある罠を見抜くために使い、横や後方の状況を核にするためには使わなかった。

その方針は、今の今まで正しかった。

騎士国の軍勢が、ノネッテ合州国の軍勢を倒せないと判断して、標的を帝国の軍勢へと向け直すまでは。

この日も、帝国将軍は気楽な進軍を続けていた。

真昼間を過ぎた時間になり、今日はどの辺を休息場所にしようかと、放った斥候の状況を元に作った地図を見ながら、帝国将軍は馬上で頭を捻っていた。

すると突然、周囲の兵士がざわめいた。

「ん? どうしたのだ?」

帝国将軍の問いかけに、近くの者が返答する。

「どうやら、我が隊の横合いに、所属不明の人の群れが居るのを見つけたようで」

「横合いに? 騎士国の者かの?」

「それが、相手が遠くにいるようで、ここからでは分からないようで」

「ふむっ。鳥の目をそちらに向けてみるよう、指示を出しておくとしようかの」

そう帝国将軍が鳥の魔導具の操り手に指示を出そうとすると、ざわめきが大きくなった。

いや、ざわめきというより、悲鳴に近い声がでていた。

「あんな遠くにいたのに、もうあんな場所に! 移動が早すぎる!」

「かなり数が多い! それにあの甲冑は、騎士国の騎士だ!」

「将軍を守れ! 俺らにここまでよくしてくれた人は、そんなに居ないんだ! ここで失うわけにはいかない!」

わーわーと兵士が声を上げて、帝国将軍の近くに集まって魔導の武器を構える。

帝国将軍が状況の把握に努めようとするも、その努力が完遂させる前に、もう目の前といって良い位置に騎士国の軍勢が迫っていた。

その軍勢は、今まで敵対してきた騎士国の軍勢とは違い、まるで一本の太い槍かのように隊列を整えて突撃してきている。

「騎士国の本隊!? まさかノネッテ合州国が負けたというのか!? 帝国で出した予想より五日は早いぞ!!」

驚きの声を上げる将軍を、近くに居た兵が馬上から引きずり下ろした。

なにをすると問い返す間もなく、突撃してきた騎士国の軍勢に、将軍がいた周囲が蹂躙された。

蹂躙しつつもあっという間に駆け抜けていった騎士国の軍勢。その背中に向かって、魔法が射出されるが、一発も命中することなく逃げられてしまう。

そして蹂躙されてしまった部分に向けて、周囲から救援がやってくる。

救援が見た光景は、馬に乗る全ての者の首が斬られ、地面を歩く兵士も大なり小なり斬り傷を負っていた。

そんな中、急遽味方の手によって馬上から引きずり降ろされた帝国将軍は、献身的な味方が盾になってくれたこともあって、無傷での生還を果たした。

「おのれ、騎士国の騎士たちめ。配下をこんなに殺しよって! それにノネッテ合州国はどうしたのだ! 騎士国に敗北したのであれば、騎士国の軍勢が来るより先に、その報せを送ってくるぐらいのことはせんのか!」

ぷりぷりと怒りながらも、帝国将軍は大慌てで部隊の再編と指揮の再構築を始める。

騎士国の本体が来てしまってとあっては、これ以上先に進むことは難しい。

しかし開けた場所で、騎士国の騎士を相手にしたのでは、被害がいたずらに多くなってしまう。

帝国将軍は断腸の思いで、部隊を引き返すことを選んだ。とりあえず、一日前に滞在した、それなりに外壁があった町へ向かうことにした。

「侵攻を途中で止めたことで将軍職を罷免されるかもしれんが、騎士国の騎士に蹂躙されたとしても、未来はおなじこと。ならば配下の命が多く助かる分、引くのが正しい選択というものよ。ぐふふふふっ」

配下の尽力によって助かった命だからこそ、配下の命を守るために使うのだと、帝国将軍は毅然とした態度で撤退を命じた。

先ほどの襲撃で馬上の者が全て殺されていたことを鑑みて、全ての者が歩きで撤退するように周知徹底することを忘れないようにして。