軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三百十五話 対応検討中

小国郡が崩壊して出来た広大な無法地帯について、ノネッテ国が執った対応は国境線の防衛だけ。

これは俺の意見がチョレックス王の裁可で施行されたもの。

まあ、無法地帯と接する国境を持つ地域は、アコフォーニャ地域、ルーナッド地域、そしてグラバ地域だ。

それら地域の中で、アコフォーニャ地域もルーナッド地域も、戦後に占領した地域の立て直しをしている最中。とても小さな武装組織を潰して回るなんて労力が多くて実入りのない仕事はしたくないのが本音だ。

グラバ地域は、ノネッテ国に恭順して間もないため、領主陣は功績を立てようと乗り気だ。しかし一方で、国の名前を失ったグラバ地域の民の感情は、ノネッテ国のために働こうという意識にまで至っていない。

つまるところ、誰も火中の栗を拾う気がないため、場当たり的な対応でお茶を濁そうという感じなわけだ。

消極的な姿勢ではあるけど、これはこれで利点はある。

まず、国境近くにある村や町を重点的に守るため、そこの住民に安心感を与えることが出来る。それらの場所は、先の戦争で手に入れた土地だ。積極的に守る姿勢を見せて、住民の好感度を稼いでおいて損はない。

次に、侵攻するよりも国土を守る方が、兵站への負担が少ない。そも小さな武装組織を潰して回るなんて真似、どれだけ物資があっても足りるもんじゃない。しかも、独立した町村が武装化した関係上、敵はそこの住民だ。戦闘で倒しても、人がいなくなった貧しい村や町が手に入るだけ。手間と時間をかけて手に入れるにしては、あまりにも見返りが薄いしね。

最後に、敵の目的である略奪を阻止し続ければ、相手は勝手に物資不足に陥って干上がっていくことになる。その自滅を待てば、大した苦労を背負わずに、武装化した独立勢力を倒すことが出来る。

そう言った観点からも、今回の消極的な国土防衛策は、効果が見込まれるわけだ。

しかしながら、懸念される問題も、ないわけじゃない。

まずは、他の国が武装勢力への対応をどう決めるかだ。

ノネッテ国は消極的な敵対を選び、キレッチャ国は武装勢力へ支援に動いている。

それ以外の二国――アナビエ国とハティムティ国が、どう対応するか。

討伐に乗り出してくれるなら、こちらとしても万々歳。

しかし、武装勢力を傭兵として囲い込んでから他の国に攻め入る、なんて選択だってあり得るんだよね。

次は、武装勢力の大型化だ。

武装勢力が、単独で物資の略奪が出来ないと悟れば、周囲から人手を集めてでも略奪を成功させようと動くはず。

しかし手勢が多くなれば必要とする物資も増える。それをまかなうべく、次の村や町を襲いに行くだろう。

そんな旅する巨大略奪部隊なんて現れた日には、前世の歴史の授業であった『蝗害』のように、国土のあちこちを食い荒らされてしまうだろう。

「うーん。やっぱり、戦争する準備は必要になるかもなぁ……」

俺が執務作業をしながら、つい零してしまった独り言。

それをジヴェルデが聞き咎めた。

「次はどこと戦う気でいるんですの?」

「いや、どこというか、武装化した独立勢力について考えていてさ――」

俺が考えていたことを伝えると、ジヴェルデは呆れ顔になった。

「武力で解決を図ることが割に合わないと思うのでしたら、戦争に至らずとも解決できる方法を考えなさいな」

「それって、例えば?」

「無法地帯にある独立勢力とは、一つの集まりではなく、個々の村々が自主独立したものなのでしょう。それならば、それらの村々で意識が違うことが道理ですわよね。であれば、裏工作で仲違いさることはかのうではありませんの?」

「なるほど。お互いに潰し合わせるわけか」

まさかジヴェルデから離間工作の提案が来るとは、恐れ入った。

でも、意外といい手かもしれない。

俺は、ついつい武装化した独立勢力のことを、一塊の存在として扱っていた。

しかし独立勢力の実態は、ジヴェルデが指摘した通り、個々の思惑で動く別々の存在だ。

もともと別の存在なのだから、仲違いの工作なんて、一国の貴族たちに離間工作をしかけるよりも簡単に行えるはずだ。

それに工作に成功すれば、相手を弱体化させることが出来る。失敗しても、こちら側は手間以外に失うものはない。ローリスク・ハイリターンが見込める。

そういうことなら、独立勢力同士だけでなく、独立勢力と他の国との仲違いも画策してみてはどうだろうか。

キレッチャ国は無理だろうけど、アナビエ国やハティムティ国が独立勢力を目の敵にしてくれるようになれば、討伐に動くかもしれないし。

「ありがとう、ジヴェルデ。意見、助かったよ」

「まあ。お礼を言われるだなんて、珍しですわね」

「そんなに言うほど、珍しいか? こうして書類作業を手伝ってくれることだって、いつも有り難いと思っているし」

「思ってくださっていることには気付いていましたわ。けれど、口に出していってくださることは、稀でなくて?」

指摘されてみれば、確かにその通りかもしれない。

俺は納得しつつ、ジヴェルデが俺から礼を言われて嬉しそうな顔になっていることに気付く。

「それじゃあこれからは、思うだけじゃなくて、口に出していうことにするよ」

「そうなさってくれると、大変に嬉しいですわ。口でのお礼であろうと、感謝されると分かっていれば、作業にも張り合いがでるというものですし」

「センパイ! わたしにもお願いします!」

ホネスまで乗ってきたことに対して、俺はつい苦笑いしてしまう。

そんな和気あいあいとした雰囲気のまま、この日は書類作業を続けていったのだった。