軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三百九話 状況は動く、チビチビと 後編

俺の身近に変化があったと同じように、大陸の状勢も少しずつ変わっていっている。

まずは、カルペルタル国で騎士国の騎士王と会談したときに話があったけど、騎士国の領土が少しずつ増えていっている件だな。

小国郡は前々から戦国時代に突入している状態だ。

配下が王を弑逆する下克上や、弱小国が食い物にされたり、逆に弱小とされた国が頭角を現わしたりと、状況が日々変化しているわけだ。

その戦国の流れに乗った者は大躍進を果たすことができるわけだけど、そう上手くいく人ばかりじゃない。

目まぐるしく変わる状況に対応しきれなかった者がいて、軍隊に攻め込まれて潰された町村があり、友好国が一夜にして敵対国に占領されてしまった国がある。

そうした状況変化に、小国とその国に住む民は疲れ始めていた。

その疲れから、戦国の状態から抜け出したい、という欲求が生まれることとなった。

しかし、同じ小国に身を寄せることでは、戦国の世界から逃げることが出来ない。

やはり、寄らば大樹の陰。

大国の庇護の下に行きたいと結論することは、自然の流れだった。

そして『正しさ』を掲げる騎士国は、身を寄せるに相応しい大国だった。

そういった事情から、騎士国に接する小国は次から次へと騎士国の傘下に入る選択を行っていった。

つまり、近くにある小国たちが勝手に傘下に入ってくるため、騎士国の領土は日を追うごとに広くなっているわけだった。

小国が騎士国の下に入っていく状況があるため、このまま行けば大陸の西半分を騎士国が支配できる――とは上手くいかない。

騎士国が領土を拡大しているように、小国の中にも戦争に勝って領土を広げる国もある。

そうした勝っている小国が防波堤のような役目を発揮して、パルベラが赤ん坊を産んだ前後から、騎士国の拡大は食い止められつつあるようだ。

騎士国の拡大防止に一役を買っている国の中には、戦士の国ことアナビエ国もある。

アナビエ国は、そもそも現時点でかなりの国土を誇っているうえ、戦士の質も高い。

だからこそ戦国の世でも平気で生き残れる算段がつくため、騎士国に身を寄せる必要がない。

その証拠に、西に国土を伸ばすために戦争を行い、戦争に勝っている。

アナビエ国が戦争で躍進していることに呼応するように、熱帯雨林地帯のハティムティ国も戦争行動をしている。

ハティムティ国の戦力の主力は、魔法の使える動物――魔物だ。

草食であろうと肉食であろうと、魔物の腹を満たすために、ハティムティ国では大量の食料を必要としている。

その食料を賄うため、ハティムティ国は周辺諸国を吸収することで、食料を確保しようと画策していた。

しかし国土が増えれば、防衛戦力も更に必要になる。

そこで更に魔物を確保して戦力を拡充し、さらに食料が必要となり、食料を求めて近くの国を攻め落とす、という流れが生まれているらしい。

そして、もうそろそろ熱帯雨林地帯全域が手に入ってしまうため、ハティムティ国は森林の外へ出て平野部へ進出しようとしている様子だ。

そういった事情があるため、遠くない時期にハティムティ国は、アナビエ国ないしはノネッテ国に国土を接するようになり、戦争を仕掛けてくると見られている。

戦争を続けるアナビエ国とハティムティ国とは違い、キレッチャ国は平和な様子だ。

といっても、キレッチャ国は商人の国。金儲けのために、暗躍していないわけではなかった。

アナビエ国とハティムティ国が戦争を続けることに目を付けて、その二国と敵対する国に武器防具を売りに行っている。

アナビエ国とハティムティ国に対抗するために必要だから、キレッチャ国の武器防具は言い値にも関わらず飛ぶように売れているという。

支払は現金が基本だけど、物々交換でも行われている。

交換するモノは、宝石や美術品もあれば、珍しい動物だったり、働く能力がある人間だったりする。

人身売買なんて奴隷じゃないか。そんな真似、騎士国が許すはずがない。

そう誰でも思ってしまうだろうけど、キレッチャ国は抜け道を用意していた。

武器防具と引き換えに売りに出された人たちは、その武器防具の代金を同じ借金を背負った債務者という扱いであり、借金を返すためにキレッチャ国へ出稼ぎに行っている――という建前を作った。

この建前の上手いことは、どうあってもキレッチャ国に非難が向かない点だ。

出稼ぎ者という、実質的な奴隷に借金を背負わせたものは、彼らの生国だ。そのため彼ら彼女らを奴隷に落とした非難すべき存在は、その生国となる。

そしてキレッチャ国は出稼ぎを受け入れているだけで、出稼ぎ者がどういった扱いを受けるかは職場の問題だとしている。職場での待遇に不満があるのなら、別の場所に就職し直せばいいと公言して、徹底して奴隷働きをさせていないというスタンスすらとっている。

そうした『出稼ぎ者は奴隷ではない』という理論武装があるために、騎士国が『奴隷制度は正しくない』と行動を起こすことが出来なくなっている。

とまあ、ルーナッド地域で執務中の俺が、こうした情報を入手で来ていることからわかるように、アナビエ国とハティムティ国とキレッチャ国の動向は広く知られている情報だ。

キレッチャ国の奴隷に関しても、公然の秘密というやつだ。

キレッチャ国と関連するけど、国土拡大を続けていた帝国では侵攻が停滞している。

理由は、キレッチャ国と海運で交易がある国を、武力ではなく交渉で手に入れようとしているため。

どうして回りくどいことをしているのかというと、無理に力攻めでその国を落とすと、稼ぎ先を一つ失うこととなるキレッチャ国と敵対することになってしまうから。

魔導技術に優れた帝国が、どうしてキレッチャ国に配慮しているのかというと、海賊だ。

キレッチャ国は海賊にも武器を売っている。その関係でキレッチャ国と敵対すると、帝国の海運に問題が起こるであろうことは、火を見るよりも明らかだ。

実は、帝国は海にあまり力を割いていない。

唯一拮抗している敵国である騎士国とは、陸地での戦争に終始している。

そのため、陸上で行う魔導技術は高まりに高まっているものの、逆に海に関する技術はさほど育っていない様子だ。

海軍もあるようだけど、帝国の軍の中で、いわゆる左遷部署といった扱いだ。軍船も、帝国の船という割には、さほど魔導技術も使われていない普通の船。

そんな二線級や三線級の戦力で、海を荒らしまわっている海賊と敵対することは、帝国であっても国家予算の浪費にしかならない。

だからこそ帝国は、キレッチャ国に配慮する形で、キレッチャ国と取引がある国を平穏に傘下に組み入れたいというわけだった。

「色々と状況は動いているけど、ノネッテ国とはあまり関係ないから、一年ぐらいは平穏にゆっくりできそうかな」

俺は集めさせた情報がかかれた報告書を机の端に置くと、締め切りが迫っている書類を改めて取り出し、統治作業に戻ることにしたのだった。