軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

三百四話 領主仕事、再開

パルベラとマルクにファミリスとの家族団欒をしばらく楽しんだ後、ホネスとジヴェルデとその子供たちとも家族の時間を取った。

全員が俺の無事の帰還と、多大な戦果を喜んでくれた。

久しぶりに家族全員での夕食を取り、その後はパルベラと夜の会話を楽しんだ後、ホネスとジヴェルデを順に褥を共にした。

「戦続きで高ぶっていたのか、頑張り過ぎたな……」

二連戦後の徹夜なので、朝日が目に染みる。

なんて馬鹿な感想を抱いていたところで、山積みになっている領主の仕事をこなさないといけないと、気分を入れ替える。

戦争で物資を消費したし、戦争で領地が増えたこともあって、決めるべきことが沢山ある。

「戦費の補充と物資の蓄積。兵員の取り込みに訓練、武装の購入。それに、手に入れた新領地では土地に見合った税率の改変」

その他にも、攻め落とした国にいた武官文官と面会して有能なら再雇用し、邪魔な既得権益を取っ払い、流通の活性化を目的に道路の敷設を行わないといけない。

そんな色々なことをやるためにも、まずは下準備から。

関係各所へ書類を回して、各種仕事の人員確保や時間調整をしていく。

細々とした仕事を続けていくと、ホネスとジヴェルデが照れ顔ながらも満足そうな表情で、アテンツァが普段通りの表情でやってきた。

「センパイ、おはようございます。お仕事、手伝いますね」

「くぅ。終業時間より大幅に寝過ごしてしまうとは、自らが情けないですわ」

「ミリモス王子。仕事の分担指示をしてください」

三者三用だけど、彼女たちの姿を見て、俺は安堵の息を吐く。

「助かるよ。やることが多すぎて、手一杯になりそうだったんだ」

「そりゃそうですよ。戦争中は、私たちが代理で仕事してましたけど、センパイじゃないと決められないことはそのままにしてましたし」

「頭の固い方だと、『ミリモス』とサインが入っていない書類では受け付けられない方もいらっしゃいましたし」

「ミリモス王子は、戦争と国土拡大に目を向けず、足場固めを重視しては?」

「色々と耳が痛いから、少しずつ改善できるよう努力はする気でいる」

帝国から『ノネッテ国は第三の大国になるように』と要望もあるので、足場固めへ盛大に時間はかけられないけどね。

そんなこんなで手伝ってもらいながら、仕事を続けていく。

その間にも、色々な情報が次々に飛び込んでくる。

多くは陳情という形で、どこそこのなにそれが不足しているから、どうにかして欲しいというもの。

中には、国を攻め獲って国境が取っ払われたことで、その国境付近に住んでいた、野盗などの犯罪者集団や税金逃れの棄民が暴れ出して困っている、なんてものもある。

不足には補充を、暴れている人には軍を、それぞれ宛がう。

「アコフォーニャ地域からも知らせが来ているな」

アコフォーニャ地域も、俺が治めるルーナッド地域と同じく、今回の戦争で領地が増えている。

特に、カルペルタル国の土地は、騎士国と折半した事情もあり、気にかかる場所だ。

その場所の情報について、速報という形で情報がきている。

「……いまのところ、混乱は少ないようだね」

騎士国という『正しい』国の手で、カルペルタル国の王族や重鎮は死滅された。

この事実が、元カルペルタル国の国民が『王様が悪い事をしたんだから国がなくなるのは仕方がない』という諦めを産んで、新たな支配者の統治を受け入れる土壌になっているらしい。

そのうえで問題となっているのは、元カルペルタル国の土地が、騎士国とノネッテ国に分かれたこと。

特に国境付近では、親族の繋がりを利用した、民の移動が行われているようだ。

「その多くは、ノネッテ国の領土になった元カルペルタル国の王都から、騎士国の領土になった町村へ移動しているわけか」

片や二大国の片方。片や領土拡大を続ける戦争続きの国。

国民がどちらに安心感を抱くかは、考えるまでもないだろう。

国民が減るということは、税収も減るということ。

本来なら、この民の勝手な移動は咎めるべき事柄だろうな。

事実、アコフォーニャ地域の領主から、民の移動を止めるべきだろうかという相談がかかれている。

でも俺は、あえて見逃して上げるよう、アコフォーニャ地域の領主に手紙を返すことにした。

下手に移動を押し止めたところで、移動を封じられた民が不満を抱き、それが反乱の芽に繋がるかもしれない。

そんな不測の事態を招くぐらいなら、多少の民が逃げることなんて、見逃してしまった方が良い。

これは他の地域にも言えること。

ノネッテ国の法が気に入らないというのなら、別の国に行ってくれて構わない。

もちろん逆に、他の国からノネッテ国が良いと来る人は、大いに受け入れる気でいる。

「そういえば――」

報告書の山の中を探り、目的の紙束を引っ張り出す。

それは、エン国に攻め落とされたピシ国の民について書かれたもの。

エン国の元ピシ国領土に対する統治法は、帝国のものと似た、支配地の民を下級民に落とすもの。

下級民を作ることで、エン国のもともとの民に特別感と優越感を抱かせて、王の支配を歓迎させる機運を醸造することが狙いだ。

下級民に不満が溜まることは避けられないけど、権利が制限された下級民へ満足な対応がされるはずもない。

そんな残酷な未来を予感した先見性のある元ピシ国の民は、こぞってノネッテ国へと脱出してきている。

その多くは近場であるフォンステ地域に向かい、あえて元コル国の土地――つまりはルーナッド地域に逃げる者もいるという。

戦争直後の支配が盤石でない時期だからこそ、エン国の手が脱出する民にまで回っていない。

だけど、もう少し時間が経ったら、逃げる民を逃がさないよう、エン国とノネッテ国の国境に関所が設けられることになるはずだ。

それまでに逃げられなければ、元ピシ国の民は下級民として一生を辛く生きなければいけなくなるわけだ。

俺は脱出に手を貸すべきかと考えて、余計な真似はするべきじゃないと考え直す。

そも、エン国の下級民への扱いが心底『悪い』ものだったら、騎士国が『是正しよう』と出張ってくることは間違いない。

ならあえて、俺が火中の栗を拾う真似をしなくたって構わないだろう。

「領主が第一に考えるべきは、自分の国と領地の民だもんな」

俺は言い訳を呟き、残りの仕事に力を入れることにしたのだった。