軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百八十七話 審判役

プネラ国と戦争状態に移行したわけだけど、意外なことに、プネラ国は奮闘しているらしい。

ノネッテ国がフォンステ地域に置いた軍隊と、プネラ国の主力軍が戦闘しているわけだけど、フォンステ地域の軍隊は防御に徹しているため、戦闘は長引いている。

そして、ドゥルバ将軍の軍がプネラ国に侵攻すると、全てのプネラ国の貴族が一致団結して侵攻を食い止めている。

貴族たちが一致団結なんて、どうやってやったのかと疑問に思ったのだけど、理由があると報告書に書かれていた。

なんでもプネラ国の新王は、戦争に負けてノネッテ国の支配下に入ることになったら全ての権利を取り上げられる、と貴族たちに噂を流布していたらしい。

大半の貴族はその噂を信じ、ドゥルバ将軍と戦うことを決意したのだとか。

それでも理性的な貴族もいて、ノネッテ国と話を持つべきだと主張した。しかし、大勢の貴族から反戦主義者というレッテルを張られた上で、粛清されてしまったという。

「意外な奮闘ではあるけど、こちらが有利な状況には変わりない。問題は、カルペルタル国から来た書状だよ」

俺はフラグリ国の中に軍と共にとどまって、その領土をアコフォーニャ地域へ編入させるための作業をしていた。

そこに、カルペルタル国から使者がやってきたのだ。

使者が手渡してきた書状を読むと、ノネッテ国の侵攻を非難する内容と共に、これ以上に戦火を広げることを止めるようにという警告が書かれていた。

随分と居丈高に言ってくるもんだと感心しながら書状を読んでいき、最後にある押印に目を奪われた。

そこには、三つの押印がされていた。

一つは、カルペルタル国のもの。もう一つは、カルペルタル国が参加している小国連合『助け合いの翼』のもの。

そして最後の一つが、神聖騎士国ムドウ・ベニオルナタルのものだった。

なにかのみ間違いかと思い、俺は自分の短剣――パルベラと出会ったときに貰った短剣の柄に目を向ける。

柄に刻まれた紋章と、カルペルタル国の書状に押されている押印の模様は同じだった。

「つまり、カルペルタル国からの書状は、騎士国も同意しているってことか?」

そう考えることが自然だが、少し違和感もある。

俺の妻は、騎士国の次女姫だったパルベラだ。

パルベラを通せば、直接俺に意見を通すことが可能だ。

仮にパルベラが伝言を嫌がっても、騎士国の騎士であるファミリスがいる。

だから、カルペルタル国を代理にして書状を送るなんて真似をする意味がない。

となると、パルベラやファミリスを通さない理由があるということになるわけだけど、書状の内容を見る限りには、そんな理由があるようには見えない。

どういうことかと考えて、俺はハッと思い出した。

「騎士国を後ろ盾にして小国同士の戦争を仲裁する、そんな審判役を気取った国が現れた、って報告があったっけ」

カルペルタル国が、その審判役となった国の一つっていうことか。

そう考えれば、この書状の内容にも合点がいく。

居丈高な文面は、騎士国の後ろ盾を利用して言うことを聞かせようという、審判役としては相応しいものに見える。

「審判の言うことを無視するのは拙いんだろうけど……」

前世のスポーツを通して、俺の価値観には、審判には従うものという認識がある。

それでも理性的に現状を考えると、カルペルタル国からの書状を無視することに、一定の価値があることに気付く。

その気付いたことに対する意見を求めるため、軍の部隊長を集めることにした。

部隊長たちは、カルペルタル国からの書状を見て、不機嫌そうに眉を寄せる。

「大勝しているこちらを非難するべく、騎士国の手を借りて横から突いてくるとは。恥知らずな」

「しかし、騎士国が後ろにいるとなれば、従わぬわけにはいかんだろう」

誰もが戦争はこれで切り上げかと思っていそうなので、俺は『気付いた』ことについて相談することにした。

「ねえ。この書状を無視したら、どうなると思う?」

俺の質問に、部隊長たちは目を丸くする。

「無視するお積りで?」

「いくらミリモス王子が騎士国の王と縁続きとはいえ、手前勝手に無視すれば、騎士国から非難を受けるのではないかと」

「騎士国の騎士は、相手が間違っていると思えば、身内にも容赦がないと、もっぱらの噂でありますぞ」

部隊長の反論に、俺はもっともだと頷く。

でもその上で、尋ね返した。

「でも、この書状はカルペルタル国からのものであって、騎士国から直接来たものじゃない。ということは、騎士国の思惑と、この書状に乖離があるかもしれないでしょ?」

「……ミリモス王子の言い分は、その通りと言いたくはなりますが」

「屁理屈ってもんでしょう、それは」

「しかし、カルペルタル国の書状を無視することと、騎士国からの書状を無視することは、別のことでは?」

「そのカルペルタル国の書状に、騎士国の紋章の印が押されているのだぞ。これは、騎士国の意向が入っていると見ることが普通では?」

部隊長たちの間で、議論が巻き起こる。

俺はその会話を聞き続け、結論がまとまりかけ始めた頃を見計らって、議論の決着を要約した。

「君たちの話を聞くに、この書状の内容を騎士国が承知しているか、騎士国に直接尋ねた方が良いってことだね」

「はい。完璧に無視すると、騎士国が出張ってくる可能性が浮かびますので」

「仮にカルペルタル国が勝手に印を使っているのなら、それはそれで騎士国の逆鱗に触れる真似です。我らが手を出さずとも、勝手にカルペルタル国は滅ぶでしょうな」

方針がまとまったところで、俺は直ぐに書状を作成して、騎士国に送ることにした。

「返事が来るまで、攻め取った土地の支配を進めることにしよう。幸い、この書状には、支配した土地を返還しろとは書かれていないんだしね」

俺の決定に、部隊長の一人が心配顔になる。

「ドゥルバ将軍の軍と、フォンステ地域に、戦争の休止を命じなくてよいのですか?」

「仕方がないじゃないか。戦争を仕掛けているのは、プネラ国の方なんだ。ノネッテ国は、それに受けて立っているだけ。カルペルタル国が、ノネッテ国とプネラ国との戦争を止めたいと思うのなら、プネラ国に書状を送らないとね」

自分のことながら、詭弁が過ぎるとは思うけど、プネラ国との戦争は止められない。

止めれば、こちらの被害が増すと分かっているからだ。

はてさて、この決断がどうなるか、騎士国からの返事を待つことにしよう。