軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百四十七話 制圧

ルーナッド国の王都に入ったところで、次は王城を目指す。

先を行くノネッテ国の兵士たちに続きながら、周囲に視線を向ける。

「それにしても、ゴミゴミした街だな」

統一感がない異なった外観ばかりの家々と、家々の間を縫うように走る曲がりくねった道。

城塞都市の中という限られた場所を有効的に使おうとして、こんな密集した外観になったんだろうな

この狭苦しくて息苦しい感じ、前世の東京で見た、昭和情緒が色濃く残る下町の住居街に似ている。

こうして俺が観光気分を発揮して周囲に目を向けている間にも、ノネッテ国の兵士たちは職務に励んでいた。

「進め! 素早く移動して、王城を落とし、王とその親族を残らず捉えるのだ!」

「偵察兵! 王城への道を見つけてこい! なんなら、家の屋根に上ってもいい! こう密集して建っているんだ、屋根伝いに移動できるだろ!」

部隊長たちの大声が響き、それに合わせて部下の兵士たちが動いていく。

こうしてノネッテ国の兵士たちが動くことを、ルーナッド国の兵たちだって黙って見てはいない。

「この街から出ていけ!」

剣を振り上げた数人の兵士が、こちらに特攻をしかけてきた。

王都の道の幅が狭いため、ノネッテ国の兵士たちが持つ長柄の武器は役に立たないと見ての強行を判断したんだろう。

確かに、長い柄の武器だと、狭い場所では取り回しが難しい。

でも、そんなこと。長年、長柄の武器を愛用してきた、ロッチャ国時代から叩き上げの兵士には分かりきったこと。

そして、ノネッテ国の森林で、俺に散々ぱら奇襲を受けた経験も生かされて、いまでは不意の攻撃にも強くなっている。

「舐めるな!」

突っ込んできた敵兵を、ノネッテ国の兵士たちは武器ではなく、鎧を着けた腕で殴り倒す。

鉄の手甲に覆われた腕だ。金槌で殴られたような衝撃だったことだろう。フォンステ国の兵士たちは、あっという間に気絶してしまう。

ノネッテ国の兵士たちは、気絶した敵兵の手足を縛ってから道の端に転がして置き、王城への進軍を再開する。

「うわわわあっ!」

俺たちの姿を見て、王都の住民らしき人物が慌てて脇道へと走り逃げていく。

周囲の家々でも、住民が慌てて鎧戸を閉める姿がチラホラ見える。

本来なら、街中が戦場になったら、住民は戸締りした家の中で籠るもの。

でも、俺たちの王都内での侵攻が早すぎるからか、住民たちの対応が遅れているようだ。

「あらかじめ注意しておくけど、逃げる住民を見て、変な気を起こさないでよ!」

俺が兵士たちに注意すると、笑い混じりの声が返ってきた。

「時間がねえって、わかってますよ!」

「女の尻を追いかけて、この国の王族を取り逃したりしたら、ドゥルバ将軍に殺されますって」

「この国の王様やその家族を捕まえれば、この場所もノネッテ国の一部だ。少し気は早いが、同じ国民の財貨を奪おうだなんて、しやしませんって」

冗談口調ではあるけど、弁えた内容の言葉に、俺は心配し過ぎだったと反省する。

もう少し、兵士たちの自主性を信じても良いんだろうな。

王城への道が曲がりくねっていたため、なかなか到着できなかったが、戻ってきた偵察兵の案内で無事にたどり着くことができた。

ここで俺を含めた馬に乗っていた者は下馬する。ドゥルバ将軍も馬車から降りた。

そして俺は、王城を見上げる。

「自然の大岩を土台にした城塞か」

岩の小山のような、一枚の大岩。それを土台にして、城が立てられていた。

つまり、天然の石垣に守られた城というわけだ。

そして城の周りには石壁が作られていて、侵入者を追い返すための備え付けの大型のボーガンが見て取れた。

こうして間近で観察すると、籠城戦に適した城であり、その防備は中々に堅牢だと分かる。

「でも、こちら側の動きに対応しきれてないな」

城の壁の上には、チラホラと兵士が居るだけ。

大岩に作られた王城へ至るための階段には、いくつか門が設置されている。だが、大岩の麓近くはまだしも、その他はまだ空いている状態。慌てて兵士が城への階段をのぼりながら、順々に他の門も閉めようとする姿が見えている。

こんな無様な防衛の姿を見て、ドゥルバ将軍が奮起しないはずがなかった。

「魔導鎧を、他の者に着せ替えよ! 終わり次第、城攻めだ!」

「そう言われると思って、もう準備整ってます! いままで魔導鎧を着ていた者は、金銭で接収した家で休憩させています!」

「よくやった! では、心おきなく、敵城を攻めるとしよう!」

「「「おおおおおお!」」」

魔導鎧を着た百人を先頭に、ノネッテ国の兵士が一丸となって、ルーナッド国の王城へと攻め上る。

そしてすぐに、階段に備え付けられた第一の門に到着。魔導鎧の大膂力任せに振るった武器で門を叩き壊し開け、先へと進んでいく。

第二の門に到着。同じように、すぐ叩き壊し、先へ。

第三の門も叩き壊したところで、俺たちの先に、いままさに第四の門の扉を閉めようとするルーナッド国の兵士の姿が見えた。

「閉じさせるな!」

「うおおおおおおおりゃああああああああ!」

俺の大声に、一人の魔導鎧を着た兵が動く。両手に持っていた大槌を、力一杯に閉まりかけている門へと投げつける。

空中を回転しながら飛んだ大槌は、門の扉に見事に当たり、盛大な音を奏でた。

「おわあああああああ!?」

不意に大きな力を食らった、門を閉めようとしていたルーナッド国の兵士たちから、悲鳴のような大声が聞こえてきた。

見れば、門の裏側でひっくり返っている様子が見える。

「駆け足!」

端的なドゥルバ将軍の号令に、ノネッテ国の兵士たちは階段を物凄い勢いで上り始める。

程なくして、閉まりかけた状態で止まっていた門に到着。そして大開に、こじ開けた。

「くそおおおおおおお!」

破れかぶれな様子で剣を振りかぶってきた敵兵だったが、すかさず無力化されて、階段の端に転がされてしまった。

ここでドゥルバ将軍が、俺の横に来て耳打ちしてきた。

「いまの城兵の練度は低すぎますし、新たな兵もやっては来ません。もしや、良い兵を全て前線に送ってしまい、ここには残った兵だけしかいないのやも」

「寡兵しかいないのが本当なら、制圧する絶好の機会だね」

「いまの状況は、早さこそ命と思いますが、ミリモス王子はどうお思いか?」

「ここから先の門は開けっ放しだし、さっさと王様とその家族を捕まえてしまおう。ノネッテ国の兵士たちには、階段を駆け上らせることになるから、恨まれるだろうけどね」

「はっはっは。この階段を上った程度で筋肉痛を起こすようなら、その兵は鍛え直さねばなりませんな」

ドゥルバ将軍は笑顔で俺の元から離れると、兵士たちに大声を放つ。

「突撃だ! 駆け上り、王とその親族の身柄を抑えてしまえ!」

「「「うおおおおおおおらああああああああああ!」」」

号令の返答に雄叫びを上げて、ノネッテ国の兵士たちは階段を駆け上り始めた。

本当に城に防備の兵士がいないのか、こちらの進行を止めようとする者は現れない。

そのため、体力の消費はあったものの、楽々とルーナッド国の王城の中に辿り着いてしまう。

ここまで来れば、流石に守備兵がいた。

ただし、両手の指で数え切れるほどの数しかいなかった。

「おのれ! これより先は――」

「邪魔だ、退け!」

階段を駆け上ったことで気が立っていたのか、ノネッテ国の兵士が乱暴な言葉を破棄ながら守備兵を殴り退かす。

あっという間に駆逐された守備兵を尻目に、俺たちは王城内へ進軍する。

ここで部隊毎に分かれ、王城内を探索することになった。

「王とその家族を探せ! 衣服を着替えているかもしれない! 使用人の見た目をしていようと、必ず全て捕まえて、部屋に閉じ込めておくんだ!」

「一分一秒が惜しい! 抵抗しない者は部屋に押し込めておけ! 激しく抵抗するものは、王と家族の居場所を知っている可能性が高い! 痛めつけてでも吐かせるんだ!」

それぞれが移動する中、俺はどうしようかと考えていた。

「ドゥルバ将軍」

「なんでしょう、ミリモス王子」

「俺は、念のために、王都の横を流れる川のところに行ってみようと思うんだ」

「ふむっ。フォンステ国の王とその親族が逃げるとしたら、川に逃れるしか手はありません。となれば、川に船があるはず」

「じゃあ、川に船があったら、止めるか壊すかするよ」

「ミリモス王子、お一人で? 護衛は必要では?」

「護衛はついてこられないだろうから、城の探索に使ってよ」

「ついてこられないとは、何処を行く気なので?」

「ここから階段を下りて、街に出てから川に移動したんじゃ、時間がかかり過ぎるからね。この城の壁と街の壁は近いから、ぴょんっと飛び渡って、そこからさらに川まで飛び下りる気でいるんだよ」

「それはまた、魔導鎧を着ても、ついていくことは難しいでしょうな」

ドゥルバ将軍に諦め混じりの同意を貰ってから、俺は神聖術を使うと有言実行で城の壁から街の壁へと飛び移り、その勢いのまま壁から飛び降りた。

着地を無事に果たし、抜いた剣を手に周囲の探索を行う。

川に沿って歩き、逃走用の船が浮かんでないか、川岸に定着していないかを探っていく。

すると、数隻の船を見つけた。

一つ一つは、人が五人が乗れば満杯になってしまうぐらいの、小さな 平船(ボート) だ。

船頭も船一つに一人ずついて、ソワソワと気忙しい様子をしている。

「これは大当たりかも」

フォンステ国の王と家族を待っているんじゃないかとあたりをつけ、俺は船の方向へと足を向ける。

近づいていくと、船頭の一人が見咎めてきた。

「誰だ!」

櫂(オール) を構えて、威嚇してきた。

その構えは堂に入っていて、武芸の経験者だとうかがわせる。

よくよく見てみれば、格好は船頭だけど、腰には見事な造りの短剣が差し込んであった。

自衛用にしては高価な一品に、彼は船頭ではなく護衛の兵が偽装しているんだと、俺は悟った。

「本当に大当たりを引いたな、これは」

俺が剣を手に近づいていくと、近くの茂みが揺れる音が聞こえてきた。

俺は船頭たちに気を配りつつ、茂みから出ようとしている者にも注意を向ける。

それからすぐに、茂みが分けられ、そこから旅装姿の人たちが十人以上出てきた。

俺は船頭に向けていた件を、いま出てきた人たちに向け直す。

「フォンステ国の王と、その家族ですね。お待ちしておりました」

実のところ、俺の発現には確信はなかった。半ばハッタリだ。

しかしここで、向こうが動いてくれた。

「ふはっ、一人だけか。我らの逃走経路を見抜いたことは褒めてやろう。しかし、功に逸って一人で来るなど、愚か者でしかない!」

茂みから出てきた人の中で一番の年嵩の男性が、大きく身振りする。

すると、船にいた船頭たちが船から離れ、俺に突っ込んできた。

「我らが王のために!」

船頭の一人が上げた言葉に、俺はニヤリと笑う。

彼の一言で、さっき指示を出した人物が、フォンステ国の王だと分かったからだ。

「じゃあ、さっさと捕まえるとしようか」

神聖術を全開にし、一気に船頭たち全員を剣の腹で叩き伏せた。

俺はフォンステ国の王に顔を向けると、船頭たちが十秒も経たずに全滅した光景を見て、信じられないという顔をしていた。

俺は剣を持ち上げ、フォンステ国の王へ突きつける。

「抵抗はしない方がいいですよ。貴方が言ったように、俺は一人だけ。手に余るようなら、斬り殺す気でいますから」

そう脅すと、茂みから出てきた人物たちが全員、無抵抗を表す格好になった。

「お主には勝てそうにない。降伏する。降伏したからには、殺さないでくれ」

「心配しなくていいですよ。無抵抗の人を殺すほど、人間性を捨てているつもりはないので」

さてさて、この場はこれでいいとして、この人たちを城に連れ戻すには、ノネッテ国の兵士が応援に来るまで待たないといけないな。

城に王と家族が居ないとわかれば、こっちにくるだろうから、それまでゆっくりと待つことにしよう。