軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二百四十一話 重なる懸念

フォンステ国へ援軍に行くため、俺はノネッテ国の軍隊を連れて、カヴァロ地域からサグナブロ国へと入る。

兵員は重装歩兵で、数は二千人。

そして魔導鎧百着がある。

「魔導鎧がありますからな。前の戦の戦果を考えると、倍数の敵までなら、野戦でも勝てると保証しよう」

軍隊の行軍指揮がひと段落ついたところで、ドゥルバ将軍は自信満々の口調で太鼓判を押してきた。

倍の数となると、敵兵四千か。

ルーナッド国の軍事力がどれほどかは分からない。けど、ルーナッド国がフォンステ国を手に入れようとする理由は、砂漠貿易で得られる利益を狙ってのこと。つまりは経済は強くない。つまり常備兵の数はたかが知れていて、それでも数を動員できるとしたら国民兵になる。

その兵にしたって、フォンステ国がロッチャ地域産の武具を手にした途端に引き上げた事実があるから、装備も貧弱だと思われる。

だから直接戦うことになれば、こちら側の勝利は揺るがないだろうな。

「ドゥルバ将軍。戦争を早く終わらせたいから、戦法は迅速なものが良いんだけど、案はある?」

「であれば、カヴァロ国を叩き潰したときと同じ戦法が使えるでしょうな」

「あの時と同じ戦法ってことは、魔導鎧を全面に押し出して戦うことだよね」

「魔導鎧の打撃力で敵を蹴散らし、後詰めでダメ押しするという戦い方になる」

「そういうことなら、研究中の最新型があれば、もっと楽だったな」

言ってもしょうがないことを呟いたところ、ドゥルバ将軍は首を傾げてきた。

「最新型とは?」

「言ってなかったっけ。魔導鎧の武装や装備はそのままに、戦闘継続時間を伸ばす方向で研究開発してもらっているんだよ」

「ほほう、継戦能力が上がるとなれば、ますます魔導鎧が我が軍の主力となりますな」

「……あまり魔導鎧に頼った戦い方は、歓迎できないんだけどね」

「何故ですかな? 魔導鎧を使えば、兵は死なず、戦争にも楽に勝利できるというのに」

ドゥルバ将軍の考えは、軍を預かる者として当然のものだ。

俺だって、何も知らなかったら、魔導鎧の量産に大賛成する。

けど、魔導帝国一等執政官のフンセロイアからの『騎士国はやがて、ノネッテ国を敵とみなす』ていう忠告が、量産の考えに待ったをかける。

「騎士国が帝国とが長年戦争をしている理由、知っている?」

「噂程度であれば。たしか、騎士国は帝国の魔導技術を、人を堕落させる悪の所業と断じ、その技術を消滅させるために戦っているのだとか」

「おおむね、その噂は正しい。付け加えるなら、騎士国が問題にしている点は、無教養の子供でも人殺しが簡単にできる技術を開発すること、だけどね」

以前にパルベラやファミリスから聞いた話を伝えると、ドゥルバ将軍は眉を寄せた。

「兵練とは、つまるところ素人を一秒でも早く人殺しにするための訓練。誰でも楽に人殺しに出来る技術であれば、歓迎されるべきでは?」

ドゥルバ将の主張は正しい。前世で銃やミサイルが台頭したのだって、指先一つ動かすだけで大量に人が殺せる技術だから、と言い換えることが可能だしな。

「騎士国は、その名前の通りに『 騎士道(こだわり) 』があるんだよ。人を殺す技術を持つ者は、それに相応しい鍛錬が必須だってね」

「無暗に力を使わぬよう諫めるために、訓練を重ねなければならない、というわけですな」

「心が伴っていないと判断されたら、騎士だって身分を剥奪されるようだよ」

一騎討ちで戦ったテスタルドだって、正義に被れたという思想の理由で、騎士国の騎士という身分を捨てざるを得なかったようだし。

「そんな騎士国の考えに照らし合わせれば、魔導鎧だって危険一歩手前だって分かるでしょ」

「どんな兵であれ、着れば百人力に早変わり。なるほど、問題にしないわけがありませんな」

「いまは稼働時間が短いし、使っている人物は軍の兵士だけ。でも、この技術が民間に流れて、誰でも魔導鎧を着るようになったら」

「騎士国は、帝国との戦争理由と同じものを持ち出して、ノネッテ国に魔導鎧の技術を破棄するようにと申し入れてくるかもしれませんな」

「そう。だから、あまり魔導鎧の使い勝手を良くすることと、大量に生産することは、考え物なんだよね」

俺が悩まし気に言うと、ドゥルバ将軍はなぜか微笑んだ。

「ミリモス王子。気にしすぎてますな」

「そりゃ気にするよ。騎士国と戦争なんかしても、勝てるわけないじゃないか」

「なに。その時が来たのならば、魔導鎧の技術を破棄するなり、民間に流出しないよう法を定めるなり、騎士国と戦わずに済む方法などいくらでもあるのでは?」

そう言われてみれば、まさしくその通りだった。

俺は本当に考えすぎだったと反省する。

「先のことについて、考えを回し過ぎたか。起こってもいない事象について頭を悩ませても、仕方がないよね」

「将来の不安に対処することは、施政者としては正しい姿勢でしょう。大事なことは不安に怯えることではなく、その不安に立ち向かう気構えを常に持っておくことだと、自分などは思う次第」

軍人らしい意見だけど、一向に入れる価値のある考え方だった。

「ま、とりあえずは、ルーナッド国との戦いに思考能力を注力するべきだよね」

「その通り――いや、サグナブロ国との戦いになるやもしれませんな」

ドゥルバ将軍が目を眇めて注意めいたことを言ってくる。

サグナブロ国とは交渉が済んでいるのにと首を傾げると、道の先を探っていた偵察兵がこちらに駆け寄ってきた。

「報告! サグナブロ国の軍と思わしき人員が、この道の先で展開中です!」

「その者たちの目的はなんと推察する?」

「彼らの後方には町がありましたので、町を守るため布陣しているのではないかと!」

伝令の報告を受けて、俺とドゥルバ将軍は軍列の先へ進み出るため、馬と馬車を進ませたのだった。