軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百四十七話 戦う準備完了

訓練期間は十日と見積もっていたのだけど、対戦相手である砂漠の民からの返事を待っていたら、十五日間まで引き延ばしになっていた。

余分に五日間も時間が増えたことで、アンビトース地域の騎乗兵たちの連携練度をさらに上げることができた。それこそ、過日にスペルビアードが連れていたカミューホーホー乗りと同じぐらいには仕上げることが出来たと自負できる。

訓練で予想外のことがいくつかあったけど、一つはファミリスが訓練を手伝ってくれなかったことだ。

訓練を始める前、俺が要請はしたのだけど、ファミリスに断られていたのだ。

『アンビトースの騎乗兵たちや砂漠の民は、魔法の徒なのでしょう。その戦い方を研鑽する教師に、神聖術の使い手である私は不適格では?』

言われてみて、そしてアンビトース地域の騎乗兵の戦いぶりを見たら、ファミリスの指摘の通りだった。

騎乗兵たちは、カミューホーホーを操って砂漠を駆け、槍や剣で近接攻撃し、魔法で遠距離攻撃する兵種。

ファミリスは、馬術兵法を流用してのカミューホーホーを用いた集団戦は教授できるだろうけど、魔法攻撃のやり方は教えることができない。

『馬術のみの片手落ちになるぐらいなら、当初からミリモス王子が馬術と魔法の両方を用いる戦法を考え、彼らの身に染み込ませることのほうが有益のはずです』

そんな真っ当な主張の下で俺は、今まで読んできた兵法書と、自分ならこうするという魔法の使い方を考えて混ぜ合わせ、どうにか騎乗兵の戦法を確立した。

そして訓練を開始した当初に、二つ目の予想外が発覚した。

騎乗兵が魔法を放つ際、呪文に意識を割かなければいけない関係で、カミューホーホーへの指示出しが疎かになるという弱点があったのだ。

俺の考えでは、弓矢を操る軽騎馬兵よろしく、カミューホーホーを駆けまわらせながら魔法を使わせようと考えていたので、戦法が破たんしかけて困ってしまった。

訓練の果て、いまではどうにかカミューホーホーをそれなりに戦術機動させながら、魔法が撃てるようにできたので良かった。

そうして満足のいく水準まで騎乗兵を鍛え上げた後に、通商路を握る砂漠の部族からの返事がきた。

「戦場は、アンビトース地域の中ではなく、国がない砂漠地帯の一画を指定か」

読み終えた書状を、俺はフヴェツクに見せる。ちなみに領主であるはずのヴィシカは、俺に任せると告げて、統治作業に戻ってしまっている。

ともあれ、相手側からの返事に、フヴェツクは不満そうに眉を寄せている。

「向こうは地の利を得に来ましたね。拒否して、アンビトース地域内での戦いにしましょう」

「いや。そう提案したところで、向こうは折れないと思うよ。次の返事に『自分の土地でしか戦えない腰抜けめ』とか書いて挑発してくるんじゃないかな」

戦争の際に、知っている土地で戦うアドバンテージは大きい。

それに今回は、お互いに同数の騎乗兵を用いての戦いだ。戦力で差をつけられないのだから、地の利で優位に立とうとすることは当然の考えだろう。

そう。当然の考えだからこそ、向こうがそう提案してくると、俺が想定していないはずがなかった。

「通商路がある付近の砂漠は、細かい砂ばかり。そんな開けた場所が戦場になると思ったからこそ、騎乗兵にはカミューホーホーの操作と魔法の行使を集中して鍛えさせて、岩の後ろに隠れたり、足場の悪い場所に誘因するような作戦は覚えさせなかったんだから」

「なるほど。基礎訓練が、そのまま戦争の役に立つ場所というわけですね」

「狡すっからい手が使えず、地力の勝負になっちゃうから、誤魔化しが大きくきかないことが不安材料ではあるんだけどね」

ともかく、相手の指定した場所で戦うことを了承する。

返答の使者を先に出発させ、俺は五十の騎乗兵と糧秣を乗せたカミューホーホーを連れて、目的地へと向かうことにした。

「もちろん、 私(わたくし) たちも観戦のために同行いたします!」

「パルベラ姫様。冬の砂漠は寒いですし、砂除けのためにも、ちゃんと外套を羽織ってください」

すっかりお馴染みになったパルベラとファミリスも加えて、アンビトース地域の南に広がる広大な砂漠へと進みだしたのだった。