軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

百二話 援軍準備

ハータウト国からの援軍要請が来た。

すぐに応じるつもりだったが、向かう先が指定されていることを知って、け準備に時間をかけることにした。

「まさか、他国の援軍を最前線に配置しようとするだなんて」

ハータウト国から一軍をつけてくれるらしいけど、こちらの監視としか思えない。

国王同士が親友だろうと、国同士は友人になりえないと言うけど、ここまで露骨に警戒されていると、多少のことは気にしない俺であろうと気分が悪い。

いっそ援軍を出すことを止めようかと思ってしまうけど、正しさを標榜する騎士国の騎士様の目があるため実現は不可能だしなぁ。

「仕方がない。援軍には三千の兵を出す。ハータウト国からの供給を当てにせず、武具と食料は自分で賄えるよう物資を集めるぞ!」

俺の号令に、兵たちが活発に動き始める。

各地で保存していた糧秣を集め、各地に分散配置していた兵たちを適宜抽出し、鍛冶師に無理を言って武具の整備を行わさせるのだ。

食料を集めると命令したことで豪族たちが民が飢えると文句を言ってきたが、もうすぐ夏麦の収穫があるためか、さほど強くは言ってこなかったことは助かった。

とりあえず冬前ぐらいまで戦えるぐらいの物資が集まる予定が立った。

物資が集積し終わる前の空き時間に、筆頭指揮官を誰にするかを決めないといけない。

「と言っても、ドゥルバ将軍しか適任はいないよね」

という俺の主張は、当の本人に否定されてしまうことになった。

「ハータウト国の南の地での戦いは、籠城戦になると目されています。残念ながら、自分は籠城戦を指揮したことがありません」

ドゥルバ将軍が言うには、ロッチャ地域がまだ国だった頃、ロッチャの民の戦い方は主に硬い防具に守りを任せた野戦ばっかりだったそうだ。

「それゆえに、学んだ戦術は前進制圧ばかり。籠城や搦め手の行い方は、教本の通りにしか行えないのです」

門外漢だから任務に適していないとの主張に、俺は困ってしまう。

「ドゥルバ将軍。自分自身が適していないって言うなら、せめて誰かを推薦して欲しいんだけど」

「ご安心を。籠城戦と搦め手に適した方に、心当たりがあります」

「へぇ、それは誰?」

「それは貴方――ミリモス王子ですとも」

ドゥルバ将軍の言い切りを受けて、俺は自分の戦果を腕組みしながら思い返してみた。

メンダシウム国との戦いでは、前線での籠城戦を行った。

ロッチャ国相手には、伏兵を用いたゲリラ戦法でかく乱した。

アンビトース国のときは、素早い侵攻で勝ちを拾った。

なるほど戦果だけ見ると、籠城戦の経験があって搦め手を使いこなす名指揮官のように思える。

「でも俺、この地域の領主なんだけど。前線に行っていいものかな?」

「なにをいまさら。ミリモス王子は常に前線に立たれてきたではありませんか」

「確かにそうだけどさ、普通『領主が前線に出るなんて!』って諫めるものじゃない?」

「普通の領主であれば、その通り。ですがミリモス王子ですから」

俺の名前イコール無茶の代名詞みたいに、言わないで欲しいんだけどなあ。

けどまあ、俺が出るのが最善だということは理解した。

「ロッチャの兵が籠城戦に慣れていないっていうのなら、ノネッテ国から砦での勤務経験がある兵を持っていきたいところだけど……」

いまノネッテ国の兵たちは、元帥になったサルカジモの下で増員と再編の最中――いや、サルカジモが元帥に相応しくなるよう、兵士一同で教育中と言った方が正しいな。

そんな慌ただしい中で、こちらに兵を割いてくれる余裕があるとは思えない。

そもそも、俺を目の敵にしている感じのサルカジモが許可を出すとは思えなかった。

「いまある手札でやりくりするしかないか」

せめて籠城の助けになるような道具や魔導具はないかと、俺は研究部に顔を出すことにした。

「俺が援軍の総大将として出ることになって、籠城戦になる予想なんだけど、なにか良い物ない?」

おれのざっくりとした要望に、研究部一同は困惑顔だ。

まずは鋼鉄班。

「帝国の魔導の紋様の再現を試みた副産品で出来た、違う硬度の鉄を積層にした武器は、今までの物とは比べ物にならない優秀さがあるぞ」

「まあ、魔法の模様は再現がまだまだだから、魔法の武器にもなってないけど」

次に青銅班。

「魔法の障壁を張れるよう、木製の盾に判子で模様を丸写しにした板金を付けるだけなら、数は揃えられます。でも性能は荒いものにしかなりませんね」

「板金の模様がある部分が削れでもしたら、効果が消失するからな」

最後は新素材班。

「硝子作りと作り方の指導で多忙でして、魔導具の研究は一時棚上げになっていたので」

「あ、でも。魔導具の木の鳥に必要な丸い水晶。硝子で代用できるようにはしてます」

三班の報告を聞いて、俺は研究成果をどう使うかを考えた。

「鋼鉄班は、その複層鋼鉄で手斧を出来るだけ多く作って。青銅班は盾じゃなくて、護符みたいな形で兜や鎧の内張りに使える感じの青銅板を作って。新素材班は木の鳥を量産。出立まで日がないけど、それまでに作れるだけ作ってくれ」

「「「了解!」」」

俺の指示に、研究部一同が張り切って作業を始めた。

物資の集積が終わるまでの数日で、どれだけの数が作れるかは未知数だし、作ってもらっても活躍してくれるかも未知数だ。

それでも、やれるだけのことはやらなければいけない。

戦争中に、あのときにああしておけばよかったなんて、回想している暇なんてないんだろうしね。