軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十二話 ユージ、バスチアンやリザードマンたちと話をする

「それで、バスチアン様とシャルルくんは今年も来ちゃって大丈夫だったんですか? その、繫がりがバレるとマズいんですよね?」

「ユージ殿、お忍びゆえ今年も様付けは必要ないわい。そしてユージ殿、問題ない」

「ユージさん、今回ボクらは、領地にあるリザードマンの生息地を訪れていることになってます。従者と護衛として執事のフェルナンと、ドニだけを連れて」

「うむ。ゆえに人目につかなくて当然なのじゃ。儂らはそのまま川を上り、ハル殿に拾ってもらったというわけじゃな」

「え? じゃあいつもの執事の人とドニさんは?」

「二人はリザードマンの生息地を見てまわっておる。帰った時に手ぶらではマズいじゃろう?」

「ユージさんが作ってくれた辞書がありますから。問題がありそうなら、リザードマンから離れて湿地で野営しながら待つことになってます」

「リザードマンの里に置いてけぼり……けっこうハードですね……」

ユージの家のリビング。

ソファに座って、一部はフローリングの床の上に座って言葉を交わしていた。

ひとまずユージは、バスチアンとシャルルを心配したようだ。

「でも、ありがとうございます。シャルルくん、後で去年みたいに魔素を見てもらっていいかな? ああ、見せたいものもあるし明日でいいから」

「はい、もちろんですユージさん」

キリッと答えるシャルルの隣には、アリスがぴったりとくっついている。

抑えようとしてもその口元はだらしなく緩んでいた。うれしくてしょうがないらしい。

「俺はありがたいですしアリスも喜んでますけど、二人はよかったんですか? その、何もない村だし退屈なんじゃ」

「ユージ殿、退屈とはほど遠いわい。村に限らずじゃが、季節一巡り前に来た時は大量のお土産があったのじゃからな。王都の地下水路の存在、シャルルの位階上げ、リザードマンとの交流と辞書……シャルルがもらったあの服は、上級学校で流行となっておるしな」

「大変でした……特に女子たちが……」

遠い目で呟くシャルル。

この世界に誕生した制服風ブレザーは、女子のハートをわしづかみしたらしい。ハートキャッチである。

「あ、流行ってるんですね! よかった、のかなあ」

ユージ、いまいち喜べないようだ。

なにしろいつか稀人が来たら『制服を広めた男』として、変態扱いされるかもしれないので。

いや。

ユージたちが知識を提供して、ケビン商会はさまざまな服や服飾品を売り出している。

コサージュ、ブラウス、各種ドレス、今回の制服風ブレザー、子供服などの各種衣料品。

ユージたちに協力しているデザイナーやパタンナーや針子に女性が多いからか、あるいは掲示板住人の大半を占める男たちのせいか、それともそのほうが売れるためか。

ケビン商会が売り出した服は、ほとんどが女性用であった。

下着も。

この世界にはいままでなかった服である。

いつか稀人が来たら、ユージは『女性用の服と下着をこの世界で売り出した人』と認識されるだろう。

変態である。

すでに手遅れである。

「バスチアンさん、シャルルくん、それでその、この二人? 二体? はなんで来たか知ってます?」

《あはは、地面が木だ! ニンゲンはおもしろい住処なんだなっ!》

《細かい仕切りが多い。冬にはいいかもしれぬ》

ソファに座るユージたち。

そのすぐ横で、リザードマンがフローリングの床にあぐらをかいていた。ビッタンビッタンと尾を打ち鳴らして。

「うむ。フェルナンとドニをリザードマンの住処に置いてきてな。里を見せる代わりに、ニンゲンの生活を見たいと言い出したのじゃ」

「でもいきなり街には連れていけませんし、近隣の村ではどれだけ説明してもモンスターに見られるでしょう。それで、その、申し訳ないんですけど……」

「街にも村にも、ならず者や跳ねっ返りはいるからのう。じゃがこの村は儂らも、それどころかエルフを迎えても平然としておった。それを思い出してな」

「そうでしたか。まあ見せるぐらいならいいんですけど……みんな大丈夫かなあ」

ユージは村人たちを心配しているようだが、その必要はない。

この村の住人は非常識には慣れているのだ。

ユージのせいで。

いや、ユージのおかげで。

バスチアンが言うように、エルフが平然と歩く人間の村や街など存在しない。

王都に暮らすハルでさえ街を行くたびに注目を集め、時おり襲われているぐらいなのだ。

襲われても返り討ちで、注目を浴びるのは楽しんでいるようだが。

「あれ? でもバスチアンさんの領地で暮らすリザードマンは、この二体とは群れが違いますよね?」

「そうじゃ。じゃが、なぜかこの二体が派遣された。ユージ殿、辞書を使った単語の会話では理由はわからなくてのう……」

「あ、そっか。じゃあ俺が聞いてみますね。《いま理由を聞いてたんだけど、なんで君たちがここに来たのかな?》」

《ユージ殿、我らもニンゲンの暮らしを知りたくてな》

《鱗が黒いアイツらは、里から離れたくないんだって! 臆病者だなーっ!》

《言うな。そもそも言葉が通じるニンゲンの存在など信じられまいよ》

《……そりゃそうですよね。俺だってなんで通じるかわからないし、その群れとは会ったことないですし。でもうーん、ウチを見せても参考にならないかもなあ》

《む? ニンゲンの家はこのような物ではないのか?》

《ええ、まあ。えっと、とりあえず明日、村の人たちに聞いてみますね。それまではウチにいてください》

《了解した》

《あっ! お土産を持ってきたんだぞーっ! アタシの群れとアイツらの群れからなーっ! ほらっ!》

バスチアンの領地で交流をはじめたリザードマンたちは、ひとまず執事のフェルナンとドニの滞在を受け入れた。

ニンゲンが暮らす村や街には興味があるが、まだニンゲンを信用できない。

そこで、ユージたちと旅をしたこともある、違う群れの二体に頼んだようだ。

リビングに入ってから脱ぎ捨てていたローブをゴソゴソと漁る小さなリザードマン。

脱いだついでに荷物も外していたらしい。

ユージに差し出したのは、二つの壷だった。

《ユージ殿、我らの里で作った酒と、もう一つの里で作った酒。それと干し肉だ。ニンゲンは何が喜ぶかわからぬが、ユージ殿たちは宴の際に飲み食いしていたゆえ》

《あ、ありがとうございます》

《あとこれもっ! キラキラしててキレイだろーっ!》

続いて、革紐に通した貝殻とモンスターか獣の牙でできた装飾品を差し出すリザードマン。

手作り感満載のアクセサリーである。

独特のセンスに、とりあえずユージもアリスもテンションは上がらなかったようだ。

ただ一人、いや、ただ一匹。

コタローだけが、嬉しそうに尻尾を振ってアクセサリーを見つめていた。

貝殻のキラキラ感にやられたのか、屠った獣の牙を身につけるという原始的な感じに惹かれたのか。しょせん獣である。

「《はは、ありがとうね》うーん、ハルさんは自分の家、バスチアンさんとシャルルくんはいつもの部屋でいいとして……リザードマンはどこに泊まってもらおうか。和室? ベッドのほうが落ち着くかな?」

「ユージ殿、まずは家を案内してはどうじゃ? 落ち着かなければ野営してもらえばいいじゃろう。ここまで彼らとは野営してきたからのう。問題ないはずじゃ」

「バスチアンさん。そうですね、そうします。えーっと、まずウチの風呂場かなあ」

ユージ、リザードマンが水場に暮らしていたことを考慮して、お風呂を宿泊場所の候補に入れたらしい。

さすがに落ち着かなさそうだが、そこは別種族。

まあ見てもらえばいいか、と呟いて、ユージは家の案内をはじめるのだった。

『ニンゲンの里、ニンゲンの住処が知りたい』とホウジョウ村を訪れた二体のリザードマンたち。

ユージの家を見て、勘違いしないことを祈るばかりである。

ユージがこの世界に来てから7年目の夏。

元の世界では、秋のキャンプオフで来客を迎える準備がはじまっている。

ユージがいる世界では、一足早くホウジョウ村に珍しい来客を迎え、ユージの家とこの村を案内することになるようだ。

元冒険者、農民、針子、職人。平民、元奴隷、貴族。

果てはエルフにリザードマン、オオカミ型のモンスター、コタロー。

ホウジョウ村は、多種族を受け入れてきたこの国においても、様々な存在を受け入れる懐が深い村になっていた。

常識はずれの奇妙な場所である。

まあいまさらだ。

なにしろ最初にこの地に来たのは、ユージとコタローなので。