軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十二話 ユージ、第二次開拓団を連れて開拓地へ帰る

「おーい、ユージさん! こっちだこっち!」

ユージを呼ぶ大きな声。

ユージ、アリス、リーゼ、コタローは開拓地へ帰るべくプルミエの街の門を目指していた。

同行するのはケビンと専属護衛の二人、それからエルフの少女・リーゼの護衛のギルドマスター・サロモン。

どうやら元3級冒険者パーティ『深緑の風』の盾役・ドミニクと斥候・エンゾはすでに待ち合わせ場所に来ており、エンゾが声をかけてきたようだ。ドミニクは、かたわらにいる一人の女性と見つめ合っている。どうやら彼女がドミニクの婚約者のようだ。

三人の横には、さらに五人の男と三人の女の姿が見える。

「みなさんお揃いのようですね。私たちが最後でしたか」

「ユージ殿とケビン殿を待たせるわけにはいきません。アイツらには言っておきましたからな」

ケビンとサロモンが言葉を交わす。

ケビンはこのまま街で王都行きの準備を進める予定になっていた。

領主に報告して旅の許可を得る、馬や馬車を用意する、旅の間の食料を用意するなど、旅に出るにはさまざまな準備が必要なのだ。

サロモンは開拓地まで同行する予定。

エルフの護衛と、引退した冒険者を送り出す開拓地をその目で確かめるという名目で。ゴブリンとオークの集落を討伐して以来、サロモンは元来の気質を抑えきれなくなってしまったようだ。

「ユージさん、聞いてくれよユージさん!」

いつになくテンションが高い元冒険者のエンゾ。ユージに駆け寄り、肩を組んで笑みを浮かべる。

「ど、どうしたんですかエンゾさん? なんかいいことでもありました? あ! ひょっとして!」

「そうなんだよユージさん! いやあ、イヴォンヌちゃんは俺にホの字みたいでさ、『貴方になら身請けされてもいい』ってよ! うへへへへへ……」

「おおおおお! やったじゃないですかエンゾさん! ……あれ? それで、どの子がイヴォンヌさんなんですか?」

手紙が功を奏したのか、あるいはワイバーンの革や売り払った場合の現金に惹かれたのか、それともエンゾが開拓地に建築予定の家の存在がよかったのか。

ついにエンゾは、夜の店で働くイヴォンヌちゃんのハートを射止めたようだ。喜びのあまり言動がおかしくなっている。

呆れたように視線を落として頭を振り、ワフッワフッと鳴くコタロー。ほのじって、それじゃしょうわよ、と言いたいようだ。

独身男として仲が良かったユージは、身請けの意味も聞いていたらしい。

「いや、さすがに身請けの金をすぐには用意できなくてな。イヴォンヌちゃんはイイ女だからしょうがねえんだけどよ……」

せっかく本人のOKが出たものの、店のオーナーに提示された金額はエンゾの貯蓄とワイバーンの革の報酬を超えるものだったようだ。

エンゾの言葉を聞いたケビンの目が光る。

「え? じゃあどうするんですか? 諦めるんですか?」

「そんなわけねえだろ! だからな、ユージさん。開拓地まで送ったら、俺は街に戻ってちょっと冒険者やるわ。なーに、ちゃっちゃと稼いでくるだけだからよ!」

どうやらエンゾは現金を稼ぐため、しばらくの間、開拓地を離れるつもりのようだ。出稼ぎ労働者である。

「エンゾさん、それには及びませんよ。ちょっと私、護衛の冒険者を探してましてねえ……」

肩を組むユージとエンゾに近づくケビン。

どうやら『深緑の風』のうち、王都に行く一人は決まったようだ。

「ユージ殿、こちらが今回開拓地に向かう元冒険者パーティ『紅蓮の炎獄』だ。ちなみにこんな名前だが、魔法使いはいないからな」

「おやっさん勘弁してください。パーティ名は若気の至りなんすよ……」

「なに言ってんだ、きっちりギルドに登録してある名前だぞ。コイツらは元5級の冒険者だ。『深緑の風』と比べたら戦力としては落ちるが、全員農村出身の次男坊と三男やらだ。ガキの頃は農作業もしてたらしいから、ガンガン使ってやってくれ」

「ユージさん、これからよろしくお願いします。あの、ところで、あの女性たちは……」

ユージに挨拶する五人の元冒険者。

二人は軽装で弓を持ち、三人は盾を持った男たち。どうやらサロモンが言った通り、魔法使いなし、盾と斥候兼弓士の力押しパーティのようだ。とはいえそのパーティ構成が20代後半の若さ、5級のランクで引退を決めた理由かもしれないが。

代表してユージに話しかけた男が、横にいる三人の女性グループに目を向ける。

「ああ、ユージさん。挨拶させるのが遅れました。あの子たちはケビン商会で雇った針子見習いの三名です。彼女たちも農村出身なので、繁忙期には農作業の手伝いをさせてかまいませんよ」

ケビンの言葉を受け、ペコリと頭を下げる女性たち。彼女たちの目はアリスが着ている服に向けられている。

「よろしくお願いします。あの、ケビンさん、その子の服は……」

「ああ、さすがに針子希望なだけはありますね。ええ、これが開拓地で作った服ですよ。アリスちゃん、ちょっと見せてあげてくれないかな?」

「はーい! これね、ユルシェルさんが作ってくれたんだよ! アリスもリーゼちゃんもちょっとおてつだいしたの!」

そう言ってまだ若い女性三人の下へ向かうアリス。できた少女である。

なにこれスゴイ、開拓地って聞いて焦ったけどひょっとして成功なんじゃない、ア、アリスちゃんって言うの、かわいいわね、こっちはリーゼちゃん、ああ、違うかわいさがあっていいわ、開拓地は最高かも、とさっそくわいわいガールズトークに花を咲かせている。一人怪しい。

そんな女性陣に熱い視線を送る元冒険者の五人。

どうやら五人の独身男たちは、モチベーション高く開拓に取り組んでくれそうである。

「ではユージさん、こちらの準備が整ったら開拓地に向かいますので。鍛冶工房から誰か下見に連れていくかもしれません」

「わかりました、ケビンさん。お待ちしてます!」

「ケビンさん、俺はいつでも行けるようにしておくからな! 報酬を忘れないでくれよ!」

プルミエの街の門の前。

ユージとケビンが言葉を交わす。これから街と開拓地に離れ、それぞれ準備を整えるのだ。

男同士の熱い握手の間に割り込んできたのは、斥候のエンゾである。あっさり身請け金の目処がついたことがうれしいのか、テンションが高い。

「いよっしゃあおまえら、モンスターを見つけたら殺せ! 獣を見つけたら狩れ! 出発だあああ!」

「うっす!」

五人の後輩冒険者を引き連れ号令をかけるエンゾ。もはやキャラが変わっている。

そして、ついていきます! と言わんばかりに揃って返事をする五人。うら若き乙女たちにいいところを見せようと張り切っている。ちなみに三人の女性の荷物はすでに男たちが背負っており、女性陣は手ぶらである。

『深緑の風』の盾役・ドミニクは、無言で手を差し出して婚約者の荷物を受け取っていた。さすが無口なくせに女性を射止めた男の気遣いは違う。

アリスとリーゼの近くにいたコタローがワンワンッ! と叫ぶ。ちょっと、またつっこみやくがいないじゃない! と吠えているようであった。

針子とドミニクの婚約者も含め、第二次開拓団九名とユージたちは開拓地へ。

いや、ホウジョウ村へ向けて出発するのだった。

□ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □

「みなさん、つきましたよ! ここが開拓地、ホウジョウ村で……え? あれ?」

コタローに続いて一行の先頭を歩いていたユージ。

二泊三日の道程を終え、振り返って第二次開拓団とサロモンに声をかけようとする。

が、振り返る動作を途中で止め、開拓地を二度見する。

金属の門で補強された第三防壁、木製の柵の第二防壁を越え、見えてきたユージ宅は変わりなかった。共同住宅も変化はない。

だが。

共同住宅の横に、似たような外観の建物が一軒。

それより小振りな建物の骨組みが二棟分。

ユージが不在にしていた三週間で、開拓地はすっかり様変わりしていたのだ。

ちなみにプルミエの街から開拓地までの道中はなんの危険もなかった。

元3級冒険者が二人、元5級が五人。しかも盾役のドミニクを除く六人の独身男たちは張り切りまくっていたのだ。

昼間は索敵と狩猟、道案内にとコタローが忙しくて大変なぐらい、夜は年頃の女性を目の前にしたユージの精神状態が大変なぐらいであった。

途中、ギルドマスターのサロモンが木こりと猿を激励したり、触発されたのか五人の元5級冒険者が全力で薮を払い、元3級のドミニクが大木を肩に担ぐといった一幕もあったが。

張り切る男たちによる至れり尽くせりの接待で、ドミニクの婚約者と三人の針子見習いはただのピクニック状態であった。

「あ! おーい、ユージさん! どうっすか? 親方たちとがんばったっす! いやー、事前に作っておいて一気に組み立てるってすごいっすね!」

「え? いや、トマスさん、さすがに早すぎません?」

「ああ、まだガワだけっすから! 人が増えるって聞いたんで、雨風しのげる建物は先にやるぞって親方が。中はこれからっす!」

驚くユージに、内装はこれからだからと説明するトマス。それにしても早い。

「おっ、ユージさん、帰ってきたか。おいおい、おやっさんまでいるじゃねえか。それでソイツらが第二次開拓団か? ほれ、ぼーっとしてないで指示出してくれユージさん」

トマスに続いてユージたちの前に現れたのは元冒険者パーティ『深緑の風』のリーダー・ブレーズである。

その言葉を受けて、ようやく再起動を果たすユージ。

「ああ、みなさん失礼しました。あらためまして……ようこそ、ホウジョウ村へ!」

ようやくユージが所在なさげに立つ第二次開拓団の面々に宣言する。

ユージの言葉がきっかけになったのか、リーゼちゃん、行こー! と声をかけ、手を繋いでユージ宅へ向けて走り出すアリスとリーゼ、コタロー。

どうやら我が家に帰ってきたのが嬉しかったようだ。

まあ二人の少女は、おっふろっおっふろっと歌うように口ずさんでいたが。

どうやら二人とも、現代日本のお風呂文化にだいぶ毒されてきたようだ。

「えっと、じゃあまず、みなさんの住む場所を案内しますね。そのあとは休憩してもらって、夕方に顔合わせをしましょうか」

アリスとリーゼ、コタローに置いていかれたユージは、まだ仕事が残っているようだった。

開拓団長、そして村長を兼務するユージ。

これまでは名前だけであったが、いまや開拓地には総勢で24名の住人がいる。

サロモンや出張に来ている木工職人組を含めたら、開拓地にいる人数は30名を超えるのだ。

ユージは、ホウジョウ村村長としての仕事も増えていくのだった。