軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ミスダンジョンコンテスト その4

「では、お待ちかねの出場者の入場です。大きな拍手で迎えてください。記念すべき、一人目はこの方!」

ムナミが魔道具の拡声器を手に叫ぶと、舞台の袖から一人の女性が歩み出てきた。

黒縁の眼鏡に緑のワイシャツとスーツスカートの様な服装。あれっ、両替商のアコウイじゃないか。生真面目そうな人だから、こういったイベントには参加するタイプじゃないと思っていたよ。

「商人や商店の方々は既にご存知でしょう。いつもお世話になっております、両替商のアコウイさんです!」

舞台は半円状になっていて観客席側の円形部分の縁を歩くのが決まりらしく、いつものように冷静な表情でただ黙々と歩き、司会進行役のムナミの隣でピタリと止まった。

「アコウイさん、意気込みを聞かせてください」

「狙いは優勝賞品のみです。この世で何のしがらみもない無料程、惹きつけられるものはありませんので」

「さ、流石、お金にシビアなアコウイさんといったところでしょうか。どうもありがとうございました!」

本音で話をすればいいってものじゃないと思う。でも、アコウイと関わりのある人たちは拍手喝采だな。あの激しく手を打ち鳴らしている大柄な人は部下のゴッガイか。

以前、花を彼女に渡したそうだが二人の関係はどうなっているのだろう。少しだけ気になる。

「続きましての入場は、この方!」

次に現れたのはカチューシャで前髪を上げた長い黒髪。地味な色合いのロングスカートとエプロン姿の見るからに大人しそうな女性。この人って、あの人だよな。

「道具屋の看板娘、フィア! 実は密かにハンターの男性陣に人気があったのですが、カリオスさんとお付き合いを始めて嘆き悲しんだ人が数多いと聞いております!」

公衆の面前に晒されて恥ずかしいのか、少し俯いて顔を真っ赤にしながら小さく手を振っている。

カリオスの彼女はフィアって言うのか。初めて知った、覚えておこう。

「くそぅ、カリオス死ねっ!」

「可愛いぜ、フィアさん! カリオス死ねっ!」

「あんなに美人なのにもったいねえなぁ、カリオス死ねっ!」

野太い声援が飛び交っているのだが、語尾に「カリオス死ね」を付けなければならないルールがあるのだろうか。

当のカリオスは彼女に見惚れていて声が聞こえていないようで、緩みきった顔で大きく手を振っている。フィアさんも気づいたようで照れながら手を振り返している。

そして、その光景を目の当たりにしたハンターたちの殺気が膨れ上がった。

隣にいるゴルスが大きくため息を吐いているのが印象的だ。気苦労が耐えないな、頑張って。

「意気込みをどうぞ」

「あ、あの、できるだけ頑張ります……」

照れた仕草と声が好印象を与えたようで男たちがざわついている。そして、カリオスへの殺気が倍増する。

「続いての参加者はこの方!」

黒い艶のある体毛に愛嬌のある顔には大きな鼻。一枚しか服を羽織っていないという大胆な格好。

「大食い団の紅一点。足の速さと大食いが自慢、スコちゃんです!」

短い足で歩いているだけだというのに観客の顔が緩んでいる。外見の愛くるしさは人間には太刀打ちできない魅力となっている。

美人かどうかは判断できないが可愛いのは確かだ。

「スコちゃん、意気込みをどうぞ」

「優勝してお腹、いっっっぱいになるまで、高い商品を食べたいです」

わかり易い目的でいいな。誰かと被っているけど。

「四番目の入場は……昨日飛び入りでエントリーされた、このお方!」

出てきたのは真っ赤な女性用スーツの上下にブーツまで同色で揃えた服装。一見、気が強そうに見えるが根は優しい責任者、始まりの会長だった。

いつもの少し怒ったような表情だが、頬が若干赤く舞台を歩いている際に何故かこっちの方を見て睨みつけている。

「ひゅーひゅー、カワイイでっせぇ、始まりの会長はん! ほら、笑顔、笑顔。にぃーっと笑わんと」

闇の会長が応援……いや、あれはからかっているようにしか見えない。

迷路会長と熊会長は視線を逸らして、始まりの会長と目を合わせようとしない。何かあったのだろうか。

「むっちゃ睨んでたわ、こっわー」

「お主が挑発したのが原因で参加する羽目になったのだから、当然であろう」

「挑発なんてしてへんで。ただ、折角の祭りやのに会長ももっと積極的に参加するべきやないかな。ここで会長自ら参加したら、始まりの階層の住民たちもこの階層に馴染むのが早くなるかもしれんなぁー。って言っただけやん」

「それだけでは、なかったであろう。やっぱり自信が無いのか、その年で独身の理由はそういうことかぁーとか、煽っておったではないか」

「なんのことかさっぱりやわ」

闇の会長が始まりの会長を引っ張りだしたのか。あの人の性格で参加するのが不自然だとは思っていたが、そういうからくりだったとは。

「始まりの会長、意気込みを一言」

「我が階層の住民がお世話になっている。この祭りを少しでも盛り上げる為に参加させてもらった」

始まりの会長らしい真面目な意見だ。

彼女が急遽参加することになったから、俺が代わりに審判員としてここにいるのか。

「では、五人目の入場です!」

今度の出場者はかなり小柄な少女だった。これまでの出場者の中で最も高価な服を着た、ツインテールのお嬢様。

スオリも参加していたのか。まだ十歳前後なのでミスダンジョンコンテストには場違いのような。美少女コンテストならありだが。

「スオリちゃん、意気込みお願いできるかな」

「うむ、わらわが目指すのは優勝のみ。よろしくお願いいたしますわ」

スカートの端を摘み優雅に礼をしている。

少し生意気な態度もその可愛らしさと根はいい子だとわかっているので、住民からの受けは悪くない。集落が壊滅状態になった後、多額の寄付をしてくれたことが知られてからは、更に親しまれるようになった。

特に高年齢層に人気があるようで、今も微笑みながら拍手をしている。孫のお遊戯会に参加している感じなのかもしれないな。

これで半分か。今のところ全員知り合いだ。残りの五人も予想がつくな。

「さってと、六番目は……今度も可愛らしい参加者ですよー」

初秋だというのに暖かそうなコートを着ている一人の少女。髪も服も白雪の様な純白で統一されている。

キコユも出るのか、始まりの会長に続いて意外性のある出場者だ。

見た目の年齢はスオリと同じか少し下に見えて、何処か儚げなところが保護欲を刺激するようで、年上連中の頬が上気している。女性はまだしも厳つい男連中は衛兵に逮捕してもらった方が良い気が。

「キコユちゃん、何か言いたいことあるかな」

「えと、新鮮なお野菜を売っていますので、よろしくお願いします」

宣伝効果を狙っての参戦か。一瞬、俺の方を見たので間違いない。

ここで知名度を上げることにより顧客を増やすつもりなのだな。流石、我がライバル店だと評価しておこう。

「さあ、もう折り返し地点を突破しましたよ、皆様の一押しは見つかりましたか。まだな方はこの後もご期待ください。では、七番目の入場です!」

もう七人目か、今度は誰かな。

男の子の様な短く切りそろえられた髪型なので一見、男の子に見える弓を背負った女の子が一人。

俺の方を見て舌なめずりするのを、やめてもらえませんかね、シュイ。

優勝賞品である無料お食事券を想像しているのだろうな。

「意気込みをどうぞ!」

「優勝して、胃袋がはち切れるぐらい食べるっす!」

うん、やっぱりスコと同じ発想だ。

「残りはたった三名。次の挑戦者は一体誰だー!」

ムナミの進行が格闘技のアナウンスじみてきたぞ。飽きられないように言い方を変えている努力は認めるけど。

黒衣にミルクティー色の髪はいつものように所々が跳ねていて、今日も碌に櫛を通していないようだ。当日なのに自然体で勝負なのか、ヒュールミらしいけど。

不機嫌な表情に見えるがあれは必死に照れを隠しているな。口角がぴくぴくと痙攣している。

「ヒュールミ、意気込みあるかな?」

「ん、まあ、それなりにやるさ」

ぶっきらぼうだが、ヒュールミがこの場に立ったこと自体が珍しいことだし、あれでもかなりやる気がある方だと思う。

「さーて、最後から二番目は……おおっ、本命の一人かっ!」

今までで一番テンションの高いムナミが声を張って紹介したのは、金髪のサイドポニーに青い短パン黒タイツでお馴染みのラッミス。

今日は革鎧を装着していないので、凶悪な二つの房が歩く度に揺れている。

男だけではなく女性の視線もその揺れに合わせて上下しているようだ。って、お前らじろじろ見るんじゃない。

「ハッコーーン! うち頑張るからねっ!」

俺の前で立ち止まって両腕を激しく振っている。風が巻き起こっているから程々にな。

周囲の男たちの視線が殺気を孕んでこっちに向けられるが、俺の姿を見てなんとも表現し辛い顔になっている。

嫉妬した相手が鉄の塊だからな。それにジェラシーを抱くべきなのか戸惑っているのだろう。俺が生身の人間なら今頃逃げ出していたかもしれない。

「ラッミス、やる気全開だねっ! 意気込みどうぞ!」

「えとね、みんな応援よろしくねっ!」

笑顔で片腕を突き上げると、会場から地鳴りのような歓声が上がる。

あれ、もしかして俺が想像している以上にラッミスって人気があるのだろうか。

若い男たちだけじゃなく老若男女が声援を送っている。あの人当たりの良さと復興作業での活躍で住民からの好感度が上がっていたのか。これは本気で優勝狙えるぞ。

「では、最後の出場者は……下馬評では大本命のこの方が、満を持しての登場だっ!」

未だに興奮冷めやらぬ会場のざわめきがピタリと静まった。

全員が舞台の一点だけを見つめている。

そこには、青いイブニングドレスから惜しみなく肌を露出している一人の女性がいた。大胆すぎる胸元のカッティングと腰まであるスリットは、人によっては下品に映るかもしれない。

だが、シャーリィが着こなすことで、それは一つの芸術となる。

艶やかな黒髪は日光に煌めき、薄いピンクの小ぶりな唇が少し開くだけで男たちは生唾をごくりと呑み込んでいた。

こ、この、圧倒的な色気は何だっ。今までの出場者とは明らかに質の違う雰囲気。

外見だけではなく、その足運びやちょっとした仕草の全てに釘付けになってしまう。

これが夜を支配し、一目で男を虜にする女帝と言われるシャーリィの実力か。

「あ、えと、シャーリィさん。今日もお綺麗ですね」

「ふふっ、ありがとう」

妖艶に微笑んだだけで一部の男性が腰砕けになっている。

ここまでくると魔性の美しさだな。

「あの、意気込みをいただけますか」

「そうね、応援お願いしますわ」

シャーリィ―がウィンクをすると、男性陣が色めきだっている。

駄目だ、このままじゃ優勝を持って行かれるぞ。格が違ったか……この後のアピールタイムで何とか挽回しないと勝ち目がない。

シュイが作り上げた服と特技のインパクトで、情勢をひっくり返せればいいのだけど。