軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

告白

「おう!?なんだありゃ!?」

船に迫る多くの触手をみて、タラッパ船長は悲鳴を上げた。

「タラッパ船長、出航の準備を!脱出します」

先輩がそう叫んで両手で印を組み、呪文を唱え始める。

すると船は光るシャボンのような膜に包まれ、ふわりと浮かび上がった。

「よし、野郎共!出航だ!」

「皆!今打てる最大の攻撃を!」

先輩の号令に従って、皆が残りの魔力を振り絞って触手に魔法を放った。

炎、氷、風、岩、色とりどりの魔法が触手を襲う。その余波の爆風で船のスピードが上がる。

「じゃあなバカ邪神!しばらく動くこともできないだろう!」

先輩がドームに向かって中指を立てながら叫ぶと、赤黒い光線がドームの天井を突き破って船に飛んできた。

しかし、それは先輩の張った防御魔法に弾かれる。

「これで本当に燃料切れだな。ざまあみろ!」

地上の触手が悔しそうに歪むが、力尽きたのかバタンと倒れた。

「ほんと、いい性格してるわね」

ヴァイオレットが勝ち誇っている先輩を横目で見てそう評した。

「ヴァイオレット、ちょっと来て」

「何?」

訝しむヴァイオレットを人気のない船尾へ連れてきて、俺は懐にしまっていた紫の玉を取り出して彼女に見せた。

「これ、もしかして」

「ああ、お前の奪われていた記憶だ」

自分の記憶なのが分かるのかは知らないが、ヴァイオレットの視線は玉に釘付けになって動かない。

「邪神の中に突撃するあんたの姿は見ていたわ。だからこれだけは言ってあげる。ありがとうユースケ」

記憶を失ってから初めてヴァイオレットは心からの笑顔を俺に向けてくれた。

これだけでも頑張った甲斐はあったな。

「ああ、これからもよろしく頼むぜ」

ヴァイオレットが俺から玉を受け取ると、玉は彼女に吸い込まれるように消えていった。

「ヴァイオレット?どうだ?」

ヴァイオレットはスンと真顔になって、船の壁に頭をガンガンとぶつけ始めた。

「ヴァイオレット!?やめないか!」

俺がヴァイオレットを羽交い締めすると、彼女は涙目で振り返る。

「うぅぅ……」

「どうしたんだよ」

「忘れてよー!」

どうやら記憶を失っていた頃のヴァイオレットは彼女にとって黒歴史になったようだ。

見事に先輩の忠告通りだな。

「何でだ?かっこよかったぞ猛将ヴァイオレット」

「変な二つ名付けないで!あぁ!忘れたい忘れたい!昔のあたしだってあんなに荒ぶってなかったわよ」

ヴァイオレットが体育座りで落ち込む。俺の記憶を失っていた頃とは大違いだな。

「ハハハ」

「笑わないでよ!」

「いや、ここまで変わるとはな」

俺の記憶があるなしで。主語を省いたがヴァイオレットは察して顔を真っ赤にした。

「デート」

彼女は頭をくしゃくしゃと掻いて、そっぽを向いて呟く。

「ん?」

「今度デートよ!もうバレたから隠さないわ。ええ好きよ!一番大事な記憶よ!好きよユースケ。あたしと付き合いなさい!」

涙目で叫ぶヴァイオレット。その姿が照れ臭くて思わず苦笑してしまった。

「!!」

「いや、ごめんごめん。俺、彼女なんて居なかったから……うれしいよヴァイオレット。俺と付き合ってください」