作品タイトル不明
奴隷解放の誘い
「俺にメリットがありません」
「報酬ははずむ」
「間に合ってます」
こちとら 国王(分身がだけど) だ。いくら金を積まれても、アダマンタイトスライム一匹いれば全て塵のようなもの。
「名声が」
「目立つのは好きではないので」
「 ボソッ(国王が何言ってんだ) 」
「なんて?」
聞こえないくらいの声でルールーは呟くとなにか考え込んだ。
どうやって俺を動かそうかと思案しているのだろう。ああは言ったが俺が納得できるメリットを提示されれば動かないこともない。
良い説得案を思いついたのか、ルールーの口元から笑みが溢れる。
「ユースケ君、君はSランク冒険者である前にエスリメの王だ」
「ま、そうですね」
王をやってるのはもう一人だが間違ってはいない。
「冒険者ギルドや、エスリメの周辺国家はエスリメを認めて友好的だ。しかし、それ以外の国々は未だにダンジョンマスターの国を敵視、疑問視している。先日、属国が攻められたことも無関係ではないだろう」
言ってることは最もだ。ルールーが俺の反応を伺うように視線をチラチラと向けてくるので続けるように促す。
「そんな中、エスリメの王が率先して奴隷を解放し、無辜の民を救っているという噂が流れたらどうだろう」
「民の噂ぐらいで国の在り方が変わるとは思えませんがね。逆に奴隷を認めてる国からは反感買いそうですし」
「奴隷を認めてる国はごく一部だよ。それに、民有っての国だ。少なくとも助けられた民とその家族友人は必ず君の味方になるだろう。奴隷解放を繰り返していけば世界中に味方ができるんだ」
妙に自信たっぷりにルールーは言った。何をそこまで彼女に俺を説得させようとするのだろう。知りもしない人間を人の手を使ってまで助けたい理由が気になった。
「妙に必死ですね。なにか裏があるのでは?」
俺がそう言うと彼女は肩をすくめた。
「昔、遠い昔さ。まだ十にもならないダークエルフの少女がいた。里の外はモンスターや人攫いがわんさかいるから子供だけではでてはいけないと耳にたこができるほど言われていたが、わんぱくな少女は毎日のように里の外に遊びに行っていた。ふっ、案の定というべきかある日少女は人攫いに捕まって奴隷になった。今と違って昔は違法奴隷の取り締まりなんてなかったから少女を助けるものは誰も居なかった。少女が大人の女に成長するまで長い年月が経った。何人も主人は変わったが皆、少女に対する態度は変わらなかった。しかし、ある日救世主が彼女の前に現れた。彼は奴隷解放のヒーローを名乗って犯罪奴隷以外の奴隷を解放してはこう言った。『囚われの同志を救え』と」
急に語りだしてびっくりしたが、ルールーが奴隷解放に積極的な理由はわかったな。
勝手に人を巻き込むなと言いたいが、今そんなこと言ったら精神化け物すぎるのでやめておこう。