作品タイトル不明
ソウルトランス
マオが到着してからは数分で勝負が付いた。
だが圧勝と言うわけではなく、ニアラは必死の抵抗を見せて、なんとマオの片腕を切り飛ばす誰も予想できない結果を叩き出したのだ。
その後は、力を使い果たしてマオの一撃で意識を奪われ、拘束されて俺の前へと連行された。
「くそ!離せ!」
「先輩、お願いします」
「うん、できなかったらごめんね」
「え?」
「ソウルトランス、バージョンカグヤ!」
謎の保険を言い残して、先輩が何か言うと彼の姿は光に包まれた。
「おお!なんかそれっぽくていい感じですね!……どちら様?」
光が消えると、先輩が立っていた場所には見たことのない可憐な美少女が残っていた。
いや、心なしか先輩の面影が。
「僕だよ僕」
「そんな可愛い声で言われても…………女装癖ですか?」
「違うよ!洗脳を解く技を使うにはこの姿にならないといけないの!」
そうツッコんで先輩はいまだに周囲に罵詈雑言を浴びせるニアラの正面に立ち、両手で彼女の頭をガシッと掴んだ。
「な、何をする!?」
「月の光よ、哀れな少女を優しく抱きしめ給え。ルナヒーリング」
先輩がニアラと額を合わせると、暖かな光が先輩の額から彼女の額へどんどん注ぎ込まれていった。
「あっ、あ、やめろ!頭が割れるー!」
「じっとしていなさい。暴れると失敗しちゃうかもしれないじゃない」
ん?なんか先輩の話し方が女っぽくなってる。
姿になりきってるのか?
十数秒間注がれた光はニアラの額から全身へと行き渡っていき、彼女は安らかな顔でゆっくりと目を閉じた。
そして目を開き静かに微笑んだ。
「私を救ってくれてありがとう。ダンジョンバトルは私の負けです。ユースケさんの配下に加えさせていただけますか?」
「承諾する。しかし、えらく性格が変わったな。洗脳が解けてもあのキツイままだったらどうしようかと思った」
「やったわねユースケ!これで二桁台のダンジョンマスターが二人になったわよ!」
「しかも五十位以内です!この調子で次も勝ちましょうね!」
ニアラの性格が丸くなったおかげで周りの皆も集まってワイワイ騒ぎ始めた。
「ねー!今回のMVPを忘れてるんじゃない?」
女の姿の先輩が頬を膨らませてそう言った。
「もちろん、先輩のおかげでマオが居たし洗脳も解けました。ありがとうございます。ところでその喋り方……」
「気にしないで。この姿になるとベースの魂に寄っちゃうのよ………………あれ?」
先輩の変身が解けたと思ったら、バタンと倒れてしまった。
さっきの技の反動かな?
「ユースケ!エニシ息してないよ!」
先輩の口元に手を当てたヴァイオレットが慌てて叫んだ。
「え?嘘だろ」
しかし、その後どんな回復魔法を掛けても先輩が息を吹き返すことは無かった。
あの縁先輩が本当に死んでしまった。