作品タイトル不明
父は哀れ
「じゃあ言うことは言ったし僕は帰ろうかな。おい神、他の奴が雄亮君にちょっかいを掛けるのは本人の希望だから目を瞑るけど…………お前が何かしたら消滅させるからな。昔と違ってお前はもうこの世界に必要な存在じゃないのだから僕は容赦しないぞ」
「はいぃ!肝に銘じます!」
「えぇ?ダンジョンマスターを使えば良い?………………しまったぁ?」
縁先輩が意味の分からないことを言うと、父の顔色は蒼白になった。
まさか心を読んだのか?
「いいか?僕はお前がいつ何をしたのかなんてすぐに分かる。それを忘れるな」
「…………」
「返事はぁ!」
「ひっ、はひぃ!」
初めて見る先輩怒った姿に怒られてる当人だけではなく、俺も縮こまった。
小学校の時とか自分が怒られてるわけでもないのに教室で先生が怒ってたらびくってなるよな。それと同じ感じだ
「よろしい。それじゃあね」
先輩が笑顔で俺に手を振って帰った後も父は恐怖で震えていた。
「……ドンマイです」
「あの方は、あの方は本当に容赦が無いんだよ。ユースケ君があの方のお気に入りじゃなかったら今頃どうなっていたことか」
「はあ、よく分かりませんが。あのー、俺もう帰ってもいいですか?」
先輩は基本怒らない人だ。その先輩の父に対する態度を見ると、昔の父は何か先輩に相当嫌われるような事をしたのかもしれない。
「ああ済まないね。そうだ。もう一つ言うことがあった」
「何ですか?」
「絶対に死なないでくれ。あの方の怒りの巻き添えで死にたくないのだよ」
顔が見えないが、父は今必死の形相をしているのだろう。
これがこの世界の神の一人なのかと情けなく思う一方、仮にも神の力を持っている父を一方的に脅せる先輩がどれほど恐ろしい力を持っているのか気になって仕方がなかった。
「ユースケ!何があったの?」
パーティー会場に戻るとヴァイオレットたちが心配そうな顔で俺のもとへ駆け寄ってきた。
「大丈夫。父に呼ばれて会ってきただけだから」
「マスター、私にも何も言わないとはどういうことですか!」
ヴァイオレットの後ろからコアちゃんが出てきて俺の腕をグイグイと突いてきた。
コアちゃんは父ではなく縁先輩に作られたダンジョンコアだ。周りは兄弟ばかりなのにそこで一人にされるのは寂しかったのだろう。
俺は素直に謝った。
「次からは気をつけてください!」
俺が笑って了解と言うと、コアちゃんはぷくーと頬を膨らませてそっぽを向いた。