軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦いの後

長い夜が明け、王都に朝の光が差し込む。

アンデッド軍を全滅させ、王都に戻ると、盛大に迎え入れられた。

衛兵たちが俺たちの元へと駆け寄ってくる。

「聞いたぞ。お前たち、たった四人でアンデッド軍を返り討ちにしたんだってな。とても無茶だと思っていたが……とんでもないな!」

「おかげで王都は一切の損害を出さずに済んだ! こんなことは初めてだ! 誰も失わずに防衛戦を乗り越えられたのは!」

「お前たちが門前で敵を食い止めていたから、俺たちはただ突っ立っていただけだ」

「正直、あんたのことは気に入らない奴だと思っていたが……本物だ。あんたがいれば俺たちは怖いものなしだ!」

無事に襲撃を乗り越えられたことによる歓喜だろうか。

以前までは俺に冷たい目を向けてきた者たちも、口々に賞賛の言葉を贈ってきた。このまま胴上げでも始まりそうな勢いだ。

「お前たち、本当によくやってくれたな。ご苦労だった」

ボルトン団長が声を掛けてきた。

「お前たちになら、最前線の門前を任せられると思っていたが……まさかここまでの結果を出すとは正直想像してなかったぜ」

顎髭を触りながら、呆れたように苦笑いを浮かべていた。

「分隊の皆が頑張ってくれたおかげです」と俺は言った。

それを聞いたスピノザが鼻を鳴らした。

「よく言うぜ。ほとんどあんた一人の働きじゃねえか。アンデッド軍の攻撃を全部てめぇで引き受けちまうなんてよ」

ボルトン団長が驚愕の面持ちを浮かべる。

「アンデッド軍の攻撃を一人でだと……?」

「ああ。おかげであたしらは一発も攻撃を喰らわなかった。あんなのを経験すると自分の実力を勘違いしそうになっちまう」

「しかし、スピノザ。俺はお前が他人のことを褒めるところを初めて見たぜ。こりゃ明日は雪が降るんじゃないか?」

「う、うっせ! 別に褒めちゃいねえよ!」

スピノザは頬を赤らめながらぶっきらぼうに吐き捨てる。ボルトン団長に指摘されたのがよほど恥ずかしかったらしい。

セイラは女神のような微笑みを浮かべると、

「ジークさんが味方にいてくれると、凄く安心して戦うことが出来ます。どんな敵が来ても負ける気がしません!」

と口にした。

「ジークさんは私たちの大黒柱ですよ」

「おいおい。褒めすぎだ」

「ウフフ。君はどうやら、褒められるのが苦手と見えるね。もしかして、褒められる経験があまりなかったのかな?」

「まあ。そんなところだ」

ファムの言う通りだった。

パーティにいた頃は罵倒されるばかりで、褒められることなど皆無だった。

耳に届くのはいつも罵詈雑言だけ。

だから、褒められるとむず痒い気持ちになる。

「なら、僕が君のことをたくさん褒めてあげよう。キャー。凄い。素敵。抱いて。ジーク様とっても格好良いー」

「凄い棒読みだな……。お前。俺を困らせて遊ぼうとしてるだろ」

「バレたかい? ウフフ。僕は君にとても興味があるからね。君がどういった反応をするのかも観察しておきたいんだ」

ファムの口元には薄い笑みが乗っていた。

完全に愉しんでるな……。

その時だった。

「貴様ら。これはいったいどういうことだ?」

荘厳な声が響いた。

見ると、銀色の鎧に身を包んだ長髪の男がそこにいた。

騎士団の者だろうか。

年齢は三十代くらい。プライドの高そうな顔立ちをしている。自分はエリートだという自負が全身から漲っていた。

「これはこれは騎士団長のグレゴール殿じゃありませんか。日頃見下している衛兵の集いに顔を出すとは何事ですか?」

ボルトン団長の言葉には皮肉が剥き出しになっていた。

騎士団長――。

王族や貴族に仕え、秘宝を守るために戦う騎士団の頭目。

彼がそうだったのか。

「アンデッド軍を撃退したそうだな。貴様ら衛兵には、少しでも奴らの戦力を削ぐことが出来れば良い程度の期待しかしていなかったが……まさか全滅させてしまうとは。どんな姑息な手を使ったんだ?」

グレゴールは腕組みをしながら、探るような口調で言った。

「秘密裏に開発した兵器でも使ったのか? ん?」

「ハッ。そんな予算がどこにあるんだよ。俺たちに対する予算は雀の涙だぜ? 騎士団様たちとは違ってな」

ボルトン団長は言った。

「姑息な手も何も、俺たちはただ正面から迎え撃っただけだ。そこにいる第五分隊の連中が奴らを門前で撃退したんだよ」

「ふざけるなッ! たった四人の衛兵で渡り合えるわけがないだろう! 私のことをコケにするのも大概にしろ!」

「俺はただ、本当のことを話しただけなんだがな」

ボルトン団長は言った。

「まあ、信じたくないのなら、別に信じなくてもいいぜ。あんたたちに知って貰う必要は全くないしな」

「くっ……! ふざけやがって……! 貴様らが隠しているものを必ず暴いてやる。精々覚悟しておくんだな!」

グレゴールはそう吐き捨てると、その場から去っていった。

「……ったく。これだから騎士団の連中は。プライドが高いから、自分の見たいものしか見ようとしねえんだ」

ボルトン団長は呆れたように言うと、俺たちの方を向いた。

「――まあ、とにかくだ。お前たちはよくやってくれた。戦いも終わったことだし、今夜は盛大に打ち上げでもするか」