軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

75 武器スキルの(多分)正しくない使い方

神様のアドバイスで閃きを得た俺は、久留里城ダンジョンの二層を、武器を取っ替え引っ替えしながら進んでいた。

え? それじゃ前やってたのと同じだろうって?

たしかに、ちょっと見ただけじゃ変わってないように見えるかもしれないな。

でも、俺の意識は明確に変わってる。

あれがいいかこれがいいかと彷徨ってた思考が収束し、このスキルをどう活かすか? それともべつのスキルを使うべきか? と、試行錯誤が前向きなった。

その日は結局、三層まで進んだところで、ダンジョンの途中脱出ポータルで外に出た。

べつにダンジョンのポータルを使わなくても「エバック」のスキルでダンジョンからは出られるのだが、ちょうどキリのいいところにあったからな。

ちなみに、久留里城ダンジョンは全九層で、三層ごとに途中脱出ポータルがあるらしい。

もっとも、Aランク以下のダンジョンの途中脱出ポータルは一方通行だ。

一度出てしまえば再び一層から探索のやり直しとなってしまう。

完全踏破を目指すパーティは、普通、ダンジョンの中でのキャンプ――ダンジョン泊を取る必要に迫られるという。

脱出ポータルの付近には聖域があるから安全だが、気が休まるとはお世辞にも言えないらしい。

その日は、予約しておいた君津市内のビジネスホテルに泊まった。

夜のうちにスキルを検討、スキルレベルアップや新規取得を済ませておく。

翌朝、ホテルのビュッフェを楽しんでから、再び久留里城ダンジョンへと戻ってきた。

三層までは駆け足でスキップ。

倒すのに時間のかかるからくり戦車は、弓でアイテムを「強奪」したあと、「上級雷魔法」で撃破する。

調整した武器スキルを試すのは四層に出てからでいいだろう。

今日中に上の階層まで進みたいことも確かなので、遠慮なく弓と魔法で倒していく。

最後の一体を「ノックアウト」してから「逃げる」。

《「逃げる」に成功しました。》

《経験値を得られませんでした。》

《SPを10219獲得。》

《301945円を獲得。》

《「装甲板」を手に入れた!》

《93602円を落としてしまった!》

……今のが、三層の「からくり兵Lv227」二体・「からくり戦車Lv231」一体・「からくりドローンLv223」二体の敵編成を、からくり兵一体残しで「逃げ」たときの戦果だな。

からくり戦車のレベルが231になってレベル差ボーナスが24倍になった分、二層までより少しお得。

ちなみに、今日は「切り札化3」の切り札指定を、「獲得SPアップ3」に適用してる。

これにより、「獲得SPアップ」の効果(獲得SPをS.Lv×10%増やす)が「切り札化」の効果(切り札に指定したスキルの効果をS.Lv×25%増やす)によって高められ、獲得SPがさらに膨らむ。

具体的には、1.3×1.75=2.275倍にもなってるな。

「切り札化」を「獲得SPアップ」に使うことを前提とするなら、「獲得SPアップ」のスキルレベルを上げるより、「切り札化」のスキルレベルを上げたほうが、獲得SPは増えることになる。

しかも、「切り札化」は「獲得SPアップ」の半分のSPで上げられる(2から3に上げる場合なら、25600と51200)。

とはいえ、「切り札化」を他のスキルに回したい場面もあるはずなので、一概に「切り札化」が優先とも言い切れない。

優先する/しないを考えるより、どちらも上げると考えたほうがよさそうだ。

実際、現在の稼ぎ効率なら時間さえかければ両方とも上げられる。

昨日引き返した三層の奥で、俺は四層へ続くポータルに飛び込んだ。

内部構造はあいかわらずのバウムクーヘン。

小学校低学年のときにプリントの裏とかに迷路の落書きをしたことがあるやつは多いと思うが、まんまあんな感じのマップである。

プリントで迷路を解く分には簡単だが、実際に自分がその中に放り込まれてしまったら、マッピングなしではすぐに迷ってしまうだろう。

そのマッピングも、バウムクーヘン構造のせいで皮一枚間違えただけで現在位置をすぐに見失ってしまいそうだ。

「ミニマップ」のある俺には関係のない話だが、このダンジョンが不人気な理由の一つなんだろうな。

「おっ、からくり兵四体の編成か」

遠くから大砲をぶっ放してくるからくり戦車と、ガトリングガンと「警報」持ちのからくりドローンは、武器スキルの実験台としては微妙な相手だ。

反面、槍と盾を持ち、手堅い戦い方をするからくり兵は、修練の相手としては絶好だ。

「じゃ、試すとするか」

俺は弓を構え、手近にいるからくり兵の頭に狙いをつける。

「ブルズアイ」「狙撃」「集中」で狙いと威力とクリティカル率を高めた矢を、「弓術」スキルで解き放つ。

からくり兵の目(大きな丸い球のようなもの)を矢が射抜く。

がしゃりと仰向けに倒れたからくり兵は、すぐに黒い粒子となって宙に消えた。

一撃だ。

言い忘れてたが、「天誅」や「先制攻撃」みたいなお馴染みのスキルも当然ながら乗っている。

あと、物理攻撃には基本的にすべて「強奪」が乗ってるものと思ってくれ。

仲間がやられたことで、他のからくり兵たちの注意が俺に向く。

俺は「弓術」の下位スキル「速射」で一体の膝を射抜いて足止めする。

が、そのあいだに残りの二体が俺に迫る。

突き込まれる二本の槍。

そのときにはすでに、俺の手の中に弓はない。

俺の手には、代わりに槍が握られている。

「槍術」の下位スキル「槍からげ」。

敵の槍を自分の槍でからめとって横にそらす。

横に流れた敵の槍が、もう一体の突き出した槍に衝突する。

二体の動きが刹那止まった。

剣を(・・) 手に、俺は左のからくり兵の側面へ。

「剣技」の下位スキル「スラッシュ」。

けれん味のないシンプルな斬撃を放つ。

シンプルなだけに、最短距離でそれなりのダメージを与えてくれる。

だが、倒すまでには至らない。

「まだだっ!」

俺は剣を引き戻すと、その柄を両手で強く握り直す。

「両手剣」の下位スキル「全力斬り」。

この「全力斬り」には、既得スキルの「渾身の一撃」も乗せてある。

「渾身の一撃」を使うと命中率が下がるが、からくり兵はさっきの「スラッシュ」でひるんだままだ。

硬い鋼鉄製のからくり兵のボディが、俺の一撃で股関節まで真っ二つに断ち割れた。

「これで二っ!」

だが、その間に、もう一体のからくり兵が体勢を立て直し終えていた。

突き込まれる槍をかわしつつ、

「くらえ!」

俺は、仕留めたからくり兵の残骸を蹴り飛ばす。

「格闘技」で強化された蹴りによる「投擲」だ。

からくり兵は槍を引き、同僚の残骸を盾で払う。

しかし、その足は止まり、盾で視界が一瞬だけだが遮られる。

その隙を突いて、俺はからくり兵の背後に回り込む。

そして、逆手に握ったナイフをからくり兵の装甲の隙間に突き刺した。

「短剣技」と「暗殺術」のセンスを生かした致命の一撃が、からくり兵の心臓部を貫いた。

床に転がった同僚の残骸とともに、このからくり兵の身体もまた黒い粒子となって消えていく。

最後に残った一体が、遅ればせながら俺に迫ってくる。

だが、そこはまだ槍の間合いの外側だ。

俺は手にしたナイフを、「投げナイフ」「投擲」「ブルズアイ」、さらには「忍術」の下位スキル「苦無投げ」を使って投げ放つ。

からくり兵は、ナイフを盾で受け止めた。

ナイフは盾に食い込み、放射状の亀裂を走らせる。

「これでラストっ!」

俺は、取り出した槍を、野球のピッチングのようなフォームで投擲する。

「槍投げ」「投擲」「武器投げ」「ブルズアイ」「ノックアウト」。

槍は亀裂の入った盾を砕き、からくり兵の胸部を貫いた。

背中から槍の穂先をのぞかせ、動きを止めるからくり兵。

「ノックアウト」を付けたから、こいつだけはHP1で行動不能状態だ。

「ふう……うまくいったな」

と、一息つければ格好よかったんだが、もう一仕事残ってる。

俺は20メートルを軽く走り、逃げタイマーを消費する。

「逃げる」とは名ばかりのウイニングラン。

《「逃げる」に成功しました。》

《経験値を得られませんでした。》

《SPを7862獲得。》

《230690円を獲得。》

《「小さな歯車」を手に入れた!》

《215769円を落としてしまった!》

「うげ、所持金落としは高目を引いたみたいだな」

ここまでの道中は低目が続いて所持金はそこそこ溜まってたんだが、一度高目を引いただけでこのざまだ。

こんな条件でいちいち低目・高目なんて気にしてたら神経が参る。

だから、探索中の入手金は、一日の最後に入手した分以外はなかったものと思うようにしてる。

でもやっぱり、「20万円落とした!」なんて言われたらビクッとするよな。

社長! 今月の決算は赤字です! どの物件を売りましょうか!? みたいな感じだ。

あのゲームとはちがって、俺のダンジョンすごろくには赤マスしかないわけだが……。

って、そんなこと今はどうでもよかったよな。

今の戦闘で俺がどんな戦い方をしてたのか――

それを、ちょいちょい補足を加えながら説明しよう。