軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

72 苦手なりに

俺の行く手にモンスターの気配が三つ。

「隠密」「ステルス」で身を隠し、「気配探知」しながら円弧を描く回廊の先を覗き込む。

骨組みと歯車が剥き出しになった、等身大のからくりロボットが三体だ。

「鑑定」。

Status──────────────────

からくり兵

レベル 214

HP 3194/3194

MP 1284/1284

攻撃力 4462

防御力 3820

魔 力 2026

精神力 1926

敏 捷 2768

幸 運 1598

・生得スキル

槍術3 盾術3 片手持ち1 電撃1 警報

撃破時獲得経験値2140

撃破時獲得SP46

撃破時獲得マナコイン(円換算)70672

ドロップアイテム 小さな歯車 からくりランス 放電盾

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Skill──────────────────

片手持ち1

両手武器を片手で扱うことができる。ただし、二本以上の手に同じ種類の武器を同時に装備することはできない。

このスキルの使用時には、攻撃力及び対象となる武器を扱うスキルの効果が(40-S.Lv×8)%減少する。

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Skill──────────────────

警報

敵との交戦を知らせる警報を発し、付近にいる仲間を呼び寄せる。このスキルに反応しないモンスターもいる。

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からくり兵はいずれも槍と盾を持っている。

「片手持ち」のスキルを活かして槍を片手で扱い、もう片方の手には盾を持つ。

「電撃」は、威力こそ小さいものの、状態異常「感電」を付与する厄介なスキルだ。

その上、「警報」で仲間を呼ぶこともできる。

「なるほど、このダンジョンが嫌われるわけだ」

円弧を描く回廊は幅が狭く、横に並べるのは三人までといったところだろう。

俺みたいなソロなら関係ないが、フルパーティ(六人)にとっては戦いにくそうな空間だ。

不意打ちの先制攻撃で魔法をかませば、まずまちがいなく倒せるだろう。

だが、今後のことを考えて、あえてそれは禁じ手としたい。

「シークレットモンスター召喚」も今は使わない。

じゃあどうするかって?

俺は「ブロードソード」を手に提げたまま、からくり兵に忍び寄る。

真正面から近づいているが、「ステルス」「隠密」の効果で気づかれない。

一応はからくり兵も人型だ。

俺は手近にいたからくり兵の背後に回り、その首筋に剣を叩き込む。

鈍い音とともに、からくり兵の首を断ち切った。

「暗殺術」「バックスタブ」「奇襲」「先制攻撃」「先手必勝」「天誅」「渾身の一撃」を乗せた「剣技」は、見事一撃でからくり兵を仕留めた。

仲間が倒されたことで、残り二体のからくり兵が身構える。

そのうちの一体が突き込んできた槍を余裕でかわし、がら空きになった背中を剣で斬る。

がぎぎぎ……と嫌な金属音。

今度は一撃では決まらない。

今の「剣技」には「暗殺術」「バックスタブ」「天誅」しか乗ってないからな。

俺の現在の攻撃力5528では防御力が3820あるからくり兵を一確するのは難しい。

というより、一確にならないように、あえて攻撃力を上げていないのだ。

もし単純に攻撃力を上げようと思えば、能力値強化系スキルの「攻撃力強化」を5まで上げればいいだけだ。

能力値強化系スキルの取得・レベルアップ必要SPは100-400-1600-6400-25600。

5まで上げても要求されるSPは34100にすぎない。

今の手持ちのSPでも余裕で足りる。

なんなら「敏捷強化」「幸運強化」も5まで上げて、能力値強化系スキルを二つ以上5にする特殊条件を満たし、強力なスキルを狙ってもよかった。

なぜそうしなかったのか?

一つは、「獲得SPアップ」を上げるための貯金。

もう一つは、あえて能力値を低めに抑えておくことで、武器による接近戦の経験を積むためだ。

これまでの俺の戦い方は、桁外れの魔力にスキルシナジーを上乗せした凶悪なダメージで敵を一撃で仕留めるという力任せなものだった。

もちろん、それが成り立つのであれば、これ以上に安全な戦い方はないだろう。

だが、これから先、Aランク、Sランクダンジョンを目指すなら、もっとシビアな戦いが増えていくはずだ。

ダブルフラッドのときのホビットスモウレスラー戦も、かなりひやっとしたからな。

あんな安全マージンのない戦いを何度もやってたら、そう遠くないうちに死んでしまう。

だから、この久留里城ダンジョンに関しては、あえて苦手分野を苦手なままにしておき、苦手なりになんとか戦う経験を積みたいと思った。

……といっても、「苦手」である攻撃力もからくり兵を大きく上回ってる。

「防御力3820に対して攻撃力5528か。少ないな」と思うのは俺の感覚が麻痺してるだけだ。

しかも、いざとなれば魔法がある。

「切り札化」で強化した「上級雷魔法」を使えば、からくり兵は一撃だろう。

人数不利? 堡備人海と布袋を呼びさえすれば、一瞬にして戦況が覆る。

「悪いが、俺の修行に付き合ってもらうぞ」

はるかさんも言ってたように、単にスキルを取得するだけではなく、ちゃんと使いこなせるようにしないといけないからな。

いずれにせよ魔法メインなことには変わりはないだろうから、武器スキルは最終的に一つに絞りたい。

魔法と違い、武器スキルは対応する武器を調達する必要もある。

今はBランクダンジョンや昨日のAランクダンジョンで拾った普通の武器を使ってるけど、これはというスキルが定まったら、武器もそれに見合ったものを探したいよな。

からくり兵の槍を「パリング」で弾く。

が、同時に仕掛けてきたもう一体の槍を肩にくらう。

「いっつ……!」

と思わず言ってしまったが、俺の防御力は2万を超えている。

からくり兵の攻撃力ではほとんどダメージは通らないし、通ったダメージも「自己再生」ですぐに戻る。

要するに、どうあがいても負けはない。

さっき削ったほうのからくり兵の槍を剣でそらし、返す刀でその腕を狙う。

が、俺の剣撃はからくり兵の槍に弾かれた。

俺の「剣技」がレベル1なのに対し、からくり兵の「槍術」はレベル3。

ただでさえ剣と槍で間合い的に不利なのに、スキルレベルでも負けている。

おまけに向こうは二体がかり。

たしかに負けはしないのだが、勝てもしない。

桁違いの敏捷のおかげで余裕はある。

でも、こっちが攻撃した隙を突かれると敏捷回避は働かない。

幸運回避は働くが、幸運回避後はこっちの体勢が崩れやすく、からくり兵の追撃を受ける。

剣道の初心者が有段者の面を打とうとして抜き胴をくらうような感じだな。

「うーん……『剣技』のスキルレベルを上げるか? いや、まだ始まったばかりだしな……」

はるかさんに言われて気づいたことがある。

たしかに、スキルレベルさえ上げておけば、モンスター相手には戦える。

でも、もし相手が人だったら?

たとえば、俺と相手がともに「剣技5」を持ってたとしたら?

たしかに、俺には敵にはない豊富なスキルがある。

俺よりたくさんのスキルを持ってる敵を想定するのは、あまり現実的ではないだろう。

だが、人が人を殺すのに、豊富なスキルをすべて使い切る必要はない。

俺を剣の間合いに捉えて「剣技5」で戦う状況に持ち込めば、あとはスキルをどれだけ使いこなせているか、そのスキルを使ってどれだけの場数を踏んできたかの勝負になる。

そこで生きてくるのは、駆け引きや読み合いといった、経験を積むことでしか身につかない要素だろう。

……まあ、俺には「サバイブ」だの「リバイブ」だの「幽体生存」だの「魔人化」だの「魔神化」だの「シークレットモンスター召喚」だの「幻獣召喚」だの「ショートテレポート」だの「魔力暴走」だの「擬似無敵結界」だの「ソリッドバリア」だのがあるから、接近戦になったとしても粘りようはいくらでもあるのだが。

どのスキルも強力すぎて人前ではうかつに使えないのが泣きどころだ。

「ま、最低限の接近戦ができるようにはなりたいよな」

「パリング」で槍を弾き、HPが減ってるほうのからくり兵の胴を薙ぐ。

浅かったか、まだ倒せない。

その後、槍で何度も小突かれながら、何合めかでようやくからくり兵を一体屠る。

息が上がってる俺を尻目に、最後の一体は、

「『警報』か!?」

さすがに今から仲間を呼ばれるのは面倒だ。

苦戦はしないが、単純に処理が面倒だよな。

「サンダーストライク!」

俺は「ノックアウト」を乗せた「上級雷魔法」を最後の一体に解き放つ。

無事HP1を残して行動不能状態になったからくり兵を尻目に俺は、20メートルを軽くジョグ、20秒の逃げゲージを消化して無事戦場の外へと「逃げる」のだった。

《「逃げる」に成功しました。》

《経験値を得られませんでした。》

《SPを2631獲得。》

《141240円を獲得。》

《「小さな歯車」を手に入れた!》

《32485円を落としてしまった!》