軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

49 ようやくの回収

翌朝。

ホテルの豪勢なビュッフェを楽しんだ俺は、復旧した電車に乗って地元に戻る。

駅前の銀行の支店に立ち寄って、窓口で「Dungeons Go Pro」内のマナコインを現金化、自分の口座に預け入れた。

その金額、しめて13,290,000円也。

われながら気持ちドヤ顔になってたと思うが、窓口のお姉さんは涼しい顔で実に事務的に手続きを進めていた。

銀行員にとってはそこまで珍しい額でもないんだろうな。

投資信託を熱心に勧められたので、まったく珍しくないわけでもないみたいだが。

え? なんで金を銀行に預けたのかって?

もちろん、「逃げる」で所持金を落とさないためだ。

1300万円の半分をうっかり落としたりした日には、数ヶ月は立ち直れない自信がある。

なんとか立ち直っても、その後数年は後悔し続けることになりそうだよな。

駅からバスを乗り継いでやってきたのは、黒鳥の森水上公園ダンジョンだ。

結局、「逃げる」のスキルレベルアップは保留にした。

現在のステータスでも、Aランクダンジョンをソロで攻略できるだろう。

なんならSランクダンジョンでも問題ないかもしれないくらいだ。

他のスキルとの兼ね合いを見ながら、もう数日考えてみるくらいの余裕はある。

今さらCランクのダンジョンを再訪した目的は――もちろんあれだ。

まずは小手試し。

俺は出くわすモンスターを「オリハル硬貨のブラックジャック」で殴り倒す。

俺の攻撃で「強奪」が発動、「盗む」の効果でドロップ枠にあるアイテムを盗むことができた。

「トレジャーハント」のおかげか、幸運の高さのおかげか、三つ目のドロップ枠のアイテムがさくさく手に入る。

トレジャーホビットからは「盗賊の小手」という「盗む」の確率を上げる装備が手に入った。

Item──────────────────

盗賊の小手

盗賊が愛用する手先が器用になる小手。

防御力+15、敏捷+40

────────────────────

《秘匿情報の公開条件を満たしていることを確認。》

Secret──────────────────

「盗賊の小手」秘匿情報の公開条件:「盗む」「強奪」等装備・アイテムを奪うスキルを所持している。

報酬:「盗賊の小手」追加詳細情報の公開。以下の情報が公開されます。

────────────────────

Info──────────────────

盗賊の小手

装備すると「盗む」「強奪」等装備・アイテムを奪うスキルの成功率が5%上昇する。

────────────────────

「盗む」系のスキルを持ってないと、この小手の特殊効果は見えない仕様らしい。

「盗む」スキルの知名度が低いのはこうして情報が隠されてるからだろうか?

いや、それ以前にモンスター専用スキルだと思われてるんだろう。

あまり普及されても嫌だから取得方法は誰にも教えないけどな。

さて、「盗賊の小手」だが、「盗む」の成功率5%上昇をどう見るか?

「盗む」は成功率の上限が80%らしいからな。

80%と85%。

某有名ロボットが一堂に会する戦略SLGだったら、わりと違ってくるような気もするな。

俺は進路上のモンスターの群れを見つけると、一体を残して「強奪」で倒しつつ、ドロップアイテムを回収する。

運が悪いと盗めないが、是が非でもほしいアイテムがあるわけじゃない。

俺の攻撃力は他の能力値に比べて低いが、それでもこのダンジョンの敵なら一撃確殺だ。

物理攻撃にも「暗殺術」「致命クリティカル」「天誅」は乗るが、それがなくても余裕だろう。

俺はミニマップで最短距離を進みながら、目についたモンスターに「強奪」。

盗めるアイテムの傾向を確かめてるうちに、四層奥のボス部屋に着いた。

そういえば、階層移動時にダンジョン神社(断時世於神社)に出ることはなかったな。

今はとくに急ぎの願い事はないからいいのだが。

さて、ボス部屋にいるのは以前と同じギガントロックゴーレムだ。

Status──────────────────

ギガントロックゴーレム(ダンジョンボス)

レベル 37

HP 3010/3010

MP 0/0

攻撃力 1190

防御力 975

魔 力 148

精神力 444

敏 捷 148

幸 運 855

・生得スキル

渾身の一撃2 ロケットパンチ1 自壊装甲1

撃破時獲得経験値0

撃破時獲得SP121

撃破時獲得マナコイン(円換算)59200

ドロップアイテム 守りの指輪 鋼鉄の盾 エリクサー

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……もはやショボく感じてしまうのは俺だけか?

でも、べつにこいつ自体はショボくたっていい。

大事なのは、ドロップ枠の三つ目だ。

俺はギガントに真正面から近づいて「強奪」。

《「鋼鉄の盾」を盗んだ!》

「失敗だな」

俺はダンジョンボスに背を向けて「逃げる」。

ボス部屋の扉は開けっぱなしにしてある。

経験値もSPも得られなかった、という「天の声」は省略しよう。

俺は再びボス部屋に入り、また正面から近づいて「強奪」。

《「鋼鉄の盾」を盗んだ!》

「あらら」

しかたないのでまた「逃げる」でやり直す。

三度目のトライで、

《「エリクサー」を盗んだ!》

「よしっ!」

成功だ。

「……ようやく手に入ったな……」

日数的にはそんなに経ってないんだが、とにかくいろんなことがありすぎた。

光が丘公園ダンジョンに潜ったのも、ただエリクサーを手に入れたかっただけだったんだけどな。

エリクサーは、はるかさんの病気のために必要なだけじゃない。

回復アイテムとしても、言わずもがな優秀だ。

これ一本でHPとMPが全快するんだからな。

その分、滅多に手に入らないし、手に入ったとしてもおいそれとは使えない。

エリクサーを使い渋ったあまりに死んでしまう、なんてこともあるらしい。

「じゃあ、いっちょ稼ぎますか」

同じモンスターから二度アイテムを盗むことはできない。

ドロップ枠が三つあっても、盗めるアイテムは一個だけだ。

だが、俺には戦闘そのものをリセットできる手段がある。

俺はギガントに背を向けまた「逃げる」。

仕切り直せば、またボスからアイテムを盗めるようになる。

「逃げる」で仕切り直した場合、盗めるアイテムは前回と同じにはならず、再度三つの枠からの抽選となる。

四度目の「強奪」の結果は、

「エリクサーだ!」

SPは稼げないが、これはこれでヤバい稼ぎだよな。

「エリクサー」「エリクサー」「鋼鉄の盾」「エリクサー」「鋼鉄の盾」「鋼鉄の盾」「エリクサー」「守りの指輪」「鋼鉄の盾」「エリクサー」「エリクサー」「守りの指輪」。

今の俺にとって「鋼鉄の盾」は弱すぎて誤差にしかならない装備だが、駆け出し〜中級の探索者には一定のニーズがある。

「守りの指輪」は、防御力をさらに上げたい前衛にも、打たれ強さを補いたい後衛にも人気のアクセサリだ。

どちらも、売ればそこそこの稼ぎになる。

ところで、以前ほのかちゃんにあげた「守りの指輪」はほのかちゃんの瞳そっくりの蒼だったが、今日入手した指輪は灰色の石ばかりなんだよな。

あの「守りの指輪」は珍しいカラーバリエーションだったのかもしれないな。

俺が最初にこいつからドロップで手に入れたやつも宝箱から手に入れたやつも両方蒼だったから、てっきりこの指輪は青いもんだと思い込んでいた。

同じアイテム名でも微差があるのか? そんな話は聞いたことがないんだが。

「おっと、もうこんな時間か」

スマホのアラームで正気に戻る。

ダンジョンの中ではどうしても時間感覚が狂いがちだ。

そんな中でえんえんと同じ稼ぎを繰り返してると、なおのこと時間がわからなくなる。

事前にアラームをセットしておいてよかったな。

午後には芹香やほのかちゃん母娘と約束がある。

移動の時間を考えると、ここでの稼ぎはこれまでだ。

俺は「エバック」で水上公園ダンジョンを脱出した。