軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19 二度目のダンジョンボスとボーナススキル

黒鳥の森水上公園ダンジョンのボスはこいつだ。

Status──────────────────

ギガントロックゴーレム(ダンジョンボス/レベルレイズなし)

レベル 37

HP 3010/3010

MP 0/0

攻撃力 1190

防御力 975

魔 力 148

精神力 444

敏 捷 148

幸 運 855

・生得スキル

渾身の一撃2 ロケットパンチ1 自壊装甲1

撃破時獲得経験値0

撃破時獲得SP121

撃破時獲得マナコイン(円換算)59200

ドロップアイテム 守りの指輪 鋼鉄の盾 エリクサー

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「エリクサー、か」

能力より先についそっちに目に行くな。

ドロップアイテムの三つ目だから、確率は相当低いだろうが。

クズどもの言ってた「このダンジョンのボスがごくまれにエリクサーを落とす」という話は、あの子を騙すための嘘ではなかったということか。

「能力的には……どうだろうな。さすがに一撃は厳しいか?」

ダンジョンボスはこっちがボス部屋に入った時点で気づくから、「奇襲」や「先制攻撃」が効かないんだよな。

それに、「自壊装甲」のスキルが地味に厄介だ。

これは強力な攻撃を受けた際に身体の一部を自壊させることでダメージを軽減するというスキル。

スキルレベルは低いものの、それでも大ダメージを50%もカットする。

「どーお? いけそう?」

後ろから芹香が聞いてくる。

「一撃で倒すのは難しそうだな」

「……いや、ダンジョンボスって一撃で倒すものじゃないんだけど」

「魔法攻撃だと『自壊装甲』がなぁ……かといって物理攻撃は攻撃力の低さがネックだな」

俺の物理攻撃力は基本値の低さ×「逃げる」補正で酷いことになっている。

逆にギガントロックゴーレムは、生まれつきの防御力の高さをスキル補正でさらに高めている。

防御力995のギガントに、攻撃力464の俺が攻撃しても、まともにダメージは通らない。

っていうか、そもそも俺は武器を持ってないんだけどな。

「他に使えそうなのは……おっと、そうだ、あれを試してみるか」

俺が方針を固めたところで、ゴーレムがようやく動き出す。

通常のロックゴーレムの三倍はある巨大なゴーレムが、石の床をぶち抜き、地響きを立てながら迫ってくる光景は圧巻だ。

だが、

「遅い!」

俺はすばやくギガントの後ろに回り込む。

ギガントの凸凹した身体を手がかり、足がかりにして、俺はあっというまにギガントの肩の上に乗っていた。

「は、速っ!」

と、芹香が驚いてる。

「『強撃魔法』、『古式詠唱』」

「古式詠唱」は時間がかかる。

暴れるギガント。

数秒のあいだ、俺はギガントの上から落ちないようにしがみつく。

「喰らえっ! フレイムランス!」

俺はギガントの首筋に炎の槍を叩き込む。

攻撃魔法の威力は距離で減衰するので、最大火力を出すにはゼロ距離射撃だ。

紅蓮の槍はギガントの首から肩を砕き、溶かし――

次の瞬間、岩の巨人が粉々に砕けた。

無数の岩の塊が、ボス部屋に凄まじい音を立てて降り注ぐ。

俺は既に、巨人の肩だった場所からジャンプ、土煙の外に逃がれている。

念のため土煙の奥に「鑑定」をかけるが、何の結果も返ってこない。

ギガントは間違いなく死んでいた。

「……まさか、3%を引くとはな」

俺にとっても、今のはちょっとできすぎだ。

スキル「暗殺術」は、人の形をしたものに対して特効がある。

具体的には、ダメージ増、クリティカル率アップ……そして、低確率での即死効果。

即死効果を狙うには急所を突く必要があったので、俺はああしてギガントの肩にのぼったというわけだ。

ギガントの敏捷は148しかないのに対し、俺は8079もある。

もし即死を引かなかったら、熱された部分を「氷魔法」で冷却するか、「フレイムランス」を連発してゴリ押しするかの二択だった。

《ダンジョンボスを倒した!》

《ダンジョンボスに経験値はありません。》

《SPを484獲得。》

《59200円を獲得。》

《「守りの指輪」を手に入れた!》

「……さすがにエリクサーは出ないか」

さて、ボーナスはあるだろうか?

《特殊条件の達成を確認。スキルセット「研ぎ澄まされた致死の刃」を手に入れました。》

Congratulations !!! ────────────

特殊条件達成:「自分と同じレベル以上のダンジョンボスを一撃で即死させる」

報酬:スキルセット「研ぎ澄まされた致死の刃」

「研ぎ澄まされた致死の刃」を入手したことにより、セットに含まれる以下のスキルを獲得します。

「致命クリティカル」

「バックスタブ」

「天誅」

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Skill──────────────────

致命クリティカル1

クリティカルヒット時に即死攻撃の発動率が上昇する。

────────────────────

Skill──────────────────

バックスタブ1

敵の背後から攻撃した際にクリティカル率が(S.Lv×10)%上昇する。

────────────────────

Skill──────────────────

天誅1

ボスモンスター、レッドネーム、自分の倍以上のレベルを持つモンスターに対し、クリティカルヒット時の与ダメージが(S.Lv×10)%上昇する。

────────────────────

「おお! これは美味いな!」

俺は「逃げる」の補正のおかげで幸運の値が異常に高い。

もともとクリティカルが出やすいから、この三つのスキルとの相性はものすごくいい。

しかも、「魔法クリティカル」の効果で俺は魔法攻撃でもクリティカルが出る。

ボスに後ろから魔法攻撃でクリティカルを出して、運がよければ即死まで発動する――

そんな凶悪コンボが見えてくるな。

それ以上にエグいのは、「天誅」の効果対象だ。

「自分の倍以上のレベルを持つモンスター」。

俺にとってこれが何を意味するかは、もうお察しの通りだろう。

レベル1の俺の「倍以上のレベルを持つモンスター」は、レベル2以上の全てのモンスターということになる。

それこそ、雑木林ダンジョンで最初に戦った「スライムLv3」ですらこの条件を満たしてしまうのだ。

レベル1のモンスターなんて、むしろ見つけるほうが難しい。

俺にとって「天誅」は、今後クリティカルが出たときのダメージを一律10%(正確にはS.Lv×10%)引き上げてくれる、美味しすぎるスキルだってことだ。

少し待ってみるが、今回の「天の声」は一回だけだったみたいだな。

……いや、「一回だけ」って、感覚が麻痺してるよな。

前回みたいに特殊条件達成でボーナスのスキルセットがポンポン手に入るなんてことは、さすがにレアなケースだろう。

前回は初めてのダンジョン踏破だったせいで条件がまとめて達成されたんだと思う。

普通の探索者にとっては特殊条件を一つ満たすだけでも難しいはずだ。

って、今はスキルの検討をしてる場合じゃなかったな。

俺はボス部屋の入口に戻ると、口をあんぐり開けてる芹香に言う。

「終わったぞ」

「い、いや、たしかに終わったけど!? ボスモンスターを一撃なんて……悠人はレベルいくつになってるわけ!?」

芹香には少し前にステータスを見せてるからな。

あれからまだ数日しか経ってない。

Cランクダンジョンとはいえ、ボスモンスターを一撃というのはかなり規格外な成長速度だろう。

「運がよかったんだよ」

「運とかそういう問題!?」

「ま、それはあとでちゃんと話すよ」

ちらりと少女のほうを見て俺が言うと、

「そ、そうだね。じゃあ、奥のポータルで外に出よっか。この人たちも協会に引き渡さないとだし」

この人たち、というのは、俺が「ノックアウト」した例のクズ六人だな。

いつのまにか、六人は丈夫そうなワイヤーで数珠繋ぎにされている。

俺が結束バンドで後ろ手に縛った上から手錠までかける念の入れようだ。

俺がボスと戦ってるあいだに芹香がやったのだろう。

「この人たち全然起きないんだけど……何したの? 麻痺でもないし、時間停止でもないし」

「時間停止なんてあるのか」

それはなんて男のロマン……じゃなかった、なんて危険な状態異常なんだ!

「……なんか変なこと考えてるみたいだけど、すごくレアな固有スキルだからね」

ジト目を向けられ、俺はふいと視線をそらす。

「HPを回復すれば動けるようになるはずだ」

「軽くでいいよね。エリアヒール」

芹香の治癒魔法で、クズたちが目を覚ます。

……芹香は治癒魔法まで使えるのか。

前衛職かとばかり思ってた。

範囲回復となると、スキルレベルもそれなりのはずだ。

「うぐ、うぐぐぐぅぅぅ……!」

クズたちが何かを叫ぶが、ガムテを貼られたままでは聞き取れない。

身体もガッチガチに拘束されている。

男たちはしばしもがくが、ほどなくして抵抗を諦めた。

「悠人が先導して。私はこの子と一緒に後ろから見張るから」

「わかったよ」

ボス部屋の奥のポータルから外に出ると、水上公園の池は夕暮れに染まっていた。

ダンジョンの入口には、完全武装の探索者の集団がいる。

全部で十名ほど。

見たこともない強そうな装備をしてるが、手にしてるのは伝統的な逮捕具のさすまただ。フラフープを半分に切って物干し竿の先に付けたようなアレだな。

その集団が、芹香を見るなり敬礼をした。

「 朱野城(あけのじょう) さん。お疲れ様です」

集団のリーダー格が芹香にそう声をかける。

ちなみに、朱野城ってのが芹香の苗字な。

今さらだけど、もし俺が知らないあいだに芹香の姓が変わってたりしたら、計り知れないショックを受けるところだった。

それにしても、明らかに年上の男が、芹香をまるで目上の相手のように扱ってる。

しかも、渋々ではなく、心の底からの敬意を抱いて。

芹香ってマジ何者なんだ。

……いや、直接聞けよって話だが、きっかけがなくてな。

「皆沢さんたちでしたか。見ての通り、彼らが問題の不法探索者です」

「はい、たしかに引き渡しを受けました」

「彼女からの事情聴取も必要ですか?」

と、少女を目で示して言う芹香。

「いえ、朱野城さんの証言があるなら、そちらは落ち着いてからで結構ですよ。こちらで彼女を送り届けましょうか?」

「いえ、ショックを受けていると思いますので、私が送ろうと思います。というより、彼女の家はちょうど今彼女しかいないそうなので、うちで保護しようかと」

そうなのか?

俺がボスと戦ってるあいだに聞いたのかな。

「すみません。そうしていただけると助かります。こちらはどうも荒っぽいものばかりでして」

「近所みたいなので大丈夫ですよ」

うなずく芹香に、リーダーは俺をちらっと見て、

「あなたが通報者でしょうか?」

と聞いてくる。

「はい。証言とかしたほうがいいですか?」

「彼らの容疑事実については後日確認していただきますが、戦闘の詳細については不要です。探索者には、その実力やステータスを秘匿する権利がありますので」

……いいのか、それで。

探索者の権利強すぎて、警察がブチ切れるんじゃないかと心配になるな。

リーダーは、俺を興味深そうにしげしげとながめ、

「君も、ご苦労様でした。朱野城監察員が到着するまでのあいだ、よく持ち堪えてくれました。ありがとう」

と、芹香に対するよりは少し気やすい感じで言ってくる。

まあ、探索者としては明らかに先輩だし、そうでなくても歳上だ。

心から言ってることがわかるので、不快な気持ちにはならなかった。

が、芹香は頬を膨らませ、

「皆沢さん。それは誤解ですよ」

「誤解、ですか?」

「私の現着時には、ゆう……蔵式君が既に彼らを制圧していましたから」

「なっ……そうなのですか!?」

「ああ、いや……そうだけど。あんまり目立たないようにしてもらえると有り難いです」

「それは……もちろんだが。それはそれとして、そんな実力の持ち主なら、協会のほうにスカウトしたくなるな」

「そ、それはダメ! ゆうくんは私が先に目をつけたんだから!」

慌てて、芹香がリーダーを止めに入る。

リーダーは一瞬ぽかんとしてから、

「ふ、ははっ。これは失礼しました。とんだ野暮を言ってしまったようですね」

「い、いえ、べつにそういうんじゃなくてですね……!」

「ともあれ、この者たちは必ず厳罰に処されるよう尽力しますので。朱野城監察員はごゆっくりと彼を勧誘してください」

「も、もう! からかわないでくださいよ!」

ぷんすか怒る芹香に苦笑交じりに敬礼したリーダーは、協会の探索者にクズどもを連行させ、公園の駐車場へと去って行った。