軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

127 それゆけ!トレホビ盗賊団

シェイドローパーの分身にたかっていくトレホビたち。

余裕が出てきたのか、中には「盗む」を使ってるやつまでいるな。

そんな命令はしてないのに手癖の悪い奴らだ。

《「不死鳥の涙」を手に入れた!》

《「不死鳥の涙」を手に入れた!》

《「不死鳥の涙」を手に入れた!》

《「崩壊後奥多摩湖ダンジョン第二層への魔鍵」を手に入れた!》

《「不死鳥の涙」を手に入れた!》

「『不死鳥の涙』……? って、うわ、すごいな!」

簒奪者の技能で鑑定して驚いた。

「不死鳥の涙」は、戦闘中に限り、その戦闘中に死亡した対象を蘇生させられるという破格の効果を持っている。

RPGなどでは定番だが、ダンジョンが現実となったこの狂った現代において、その有用性は計り知れないものがある。

エリクサーですら国の指定戦略探索物として国際的に取り合いになってるくらいだからな。

戦闘中の死亡をなかったことにできるアイテムとなれば、いったいどれほどの値段がつくことか。

このアイテムの奪い合いによって死者が出る……なんていう笑えない話にすらなりかねない。

だが、それより嬉しいのは鍵のほうだ。

「崩壊後奥多摩湖ダンジョン第二層への魔鍵」。

途中の脱出ポータルで外に出たばあい、次の探索は一層の入口からのやり直しになってしまう。

だが、この鍵を持ってポータルに入ると、鍵の消費と引き換えに二層の入口に出ることができる。

Sランクダンジョンのフロアボスは、まれに次の階層への鍵を落とすとされている。

Sランクダンジョンの踏破を目指すには欠かせないアイテムだ。

「っていうか、分身にも本体と同じドロップが設定されてるのか」

それ、やばくね?

RPGでは仲間を無限呼びするモンスターを利用して経験値や金を稼ぐ方法があったりするが、能率的には今一つのことが多い。

労力の割に経験値が微妙だったり、思ったように仲間を呼んでくれずターンばかりかかったりで、稼ぎの気持ちよさよりストレスのほうが上回る感じだよな。

誰もが思いつく稼ぎ方だけにゲームバランスが崩壊しないようにしてるんだろう。

「……いや、さすがにSランクダンジョンのフロアボスでそれをやろうとするやつはいないか」

やろうとしたところで、そもそも「盗む」担当の人員を揃えるだけでも大変だよな。

ジョブ世界には盗賊系ジョブの持ち主がそこそこいるが、Sランクのフロアボス相手に最前線で盗むを続けられるやつはほとんどいない。

仮にいたとしても、最終的にシェイドローパーを倒せるだけの戦力を確保しておく必要もある。

布袋がトレホビを呼び出す速度と、シェイドローパーが爆光の影から分身を生み出す速度。

速度だけなら布袋が上だが、分身を倒すまでにはそれなりに手数もかかってる。

そのあいだにシェイドローパーが詠唱なしの爆光を放ち、影を殖やす。

全体としてみれば、トントンだ。

分身の数に上限があるのか、【射影分身】にクールタイムがあるのかはわからないが、今のところ分身の数は四体までで推移している。

「さて、この膠着をどうやって崩すかだが……」

どこかで俺が仕掛ければ、戦況は一気にこちら優位に傾くだろう。

だが、どうやって?

魔剣士の最大瞬間火力は高い。

【ロンド・オブ・マジックソード】のある今の俺ならなおさらだ。

しかしそれはチェインが続いていればこそ。

【ロンド・オブ・マジックソード】や【スイッチング・アローン】を持たない他の魔剣士であっても、「弱点属性を突く」とか「状態異常にかける」といった前提条件を要するアビリティが多い。

シェイドローパーとその分身は【射影分身】の効果であらゆる攻撃を90%(相手が俺の場合)無効化する。

(魔法→剣)×n→魔法剣 という魔剣士の勝利の公式が使えないのだ。

ならばいっそ、手札の中から 堡備人海(ほびとうみ) を――

いや、ダメだな。

実体のない触手相手に徒手格闘に特化した堡備人海をぶつけても勝機が薄い。

……っていうか、堡備人海は遠距離主体の敵はもちろんのこと、近接主体の敵であってもリーチの長い武器を持たれるだけで不利になる。

ちょっと使い所が限られすぎるよな。

赤鬼やオーガみたいな肉弾戦主体の敵には強いんだが。

シェイドローパーが無威力の「ブラストノヴァ」で光を生むたびに影の分身が殖えていく。

前身汗みずくの布袋がちょっとふくよかな腕を振り上げるたびに、トレジャーホビットが増えていく。

その拮抗状態を前にして手をこまねく俺の耳に、

《ジョブ「簒奪者」のランクがBに上がりました!》

いきなり「天の声」が降ってきた。