軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

94・モルファ辺境伯家とその家門

カルヴァ隊長から受け取った招待状を手にしたまま医療院へ戻った私は、それを鞄の中に入れると、隊服を脱いで看護班と一緒に業務を行った。

重傷患者が一名いるものの、医療院内はかなり落ち着いていたため、リハビリをしたり、院内の作業効率や、動線などの意見を募り、改善点を皆で考えて試行錯誤し院内を整える。

先程話に出ていた、L字型に増築した新棟と旧棟の間にあった煉瓦壁は先日、無事貫通され、耐久補強工事も屋内の壁紙などもほぼ張り終えられていて完成間近だ。

急な視察があったためなんとなく皆、気持ちが落ち着かなくなっている様子でもあり、私も溜まった鬱憤を晴らしたかったのもあったため、手の空いてるメンバーと、有志でお手伝いに来てくださった騎士様とで、立ち入りの許されている工事が終わった場所へ、ベッドや調度品などの移動をおこなった。

医局となる部屋も用意してあったのだが、クルス先生に新棟への移動ができますが? と伝えたところ、

「今の部屋に、もうたくさん荷物を運び込んじゃったから 遠慮するよ(めんどくさい) 、空いた部屋は病室にしたら? 戸板で患者を2階に運ぶより利便性もいいでしょ?」

とご意見いただいたため、医局予定だった部屋は、後日、簡易的に扉と壁を設置してもらうことで、上官用の個室にすることになった。

巻き込んでしまった皆には申し訳ないと思いつつ、こうして本日も充実した業務を終え、アルジと共に屋敷に帰った私は、汚れを落とすために入浴をし、美味しいお食事をいただくと、招待状の事があるため、離れの執事であるデルモに話を聞こうと考えた。

執務室へ向かおうとしたが、なんとなくそんな気分になれず、侍女に告げてサロンへ向かう。

今更であるが、離れの屋敷は、一階に食堂、応接室、温室のような造りのサロン、厨房、2階に私の寝室、執務室、客室、屋根裏に使用人用居室と貴族の離れにしても、こじんまりとした造りである。

作らせた方は楚々とした設えがお好きな方だったのか、貴族の屋敷にありがちな無駄な装飾や置物などもなく、しっとりと落ち着きのある内装と、不便ではないほどの家具が揃っていて、実に私の好みのお屋敷だ。

そんなお気に入りの屋敷の中でも、私の一等のお気に入りである庭に面したサロンの、庭に出れる大きなガラス扉のあるお気に入りの場所に置かれた、お気に入りの一人掛けのゆったりとしたソファに座ると、昼間、カルヴァ隊長から受け取った、お茶会の招待状の封をペーパーナイフで開けた。

中からは、ほのかに甘い花の香りと共に、二つ折りにされた、真珠色の紙で四隅にエンボス加工の鈴蘭の縁飾りが入った品の良い便箋が入っていた。

辺境伯夫人としての初めての社交となるかもしれないので、背筋を伸ばして挑もうとし、そっと指を差し入れる。

(さて、何が書いてあるのかしら……。)

ぴらり、便箋を開いた時だった。

――バシンッ!

突然脳内に大きくしなる扇の音と、聞き覚えのある女性の声がうわんうわんと響いた。

『聞いているのですかっ!ネオンっ!』

大勇獣魚(クジラ) の骨で作られたと言われる、繊細なレースを飾られた、象牙色の恐ろしく硬い扇が、美しい淑女の両手の中で軋む音を立てた。

『辺境伯は『伯』と付きますが、替えの聞く侯爵家とは違い、辺境を守る国の防衛の要の家柄なのです。王都へは王家が召喚したときにしか参じる事がないと考えてよいので、最低限の社交を行うだけで済みます。いいですか? 王都へ召喚された際は、王家、そして公爵家の茶会は必ず応じるように。 そのほかの家に関しては、家門間の関係性を確認し、よほど有益でなければ全て断りなさい。

モルファ辺境伯家は前辺境伯夫人が儚くなられて以降女主人が不在ゆえ、社交界から一線を引いています。貴女が輿入れすれば、縁をつなごうと様々な社交の誘いがとどきます。ですが、最初の半年は、社交は最低限とし、己が家の内情を熟知しなさい。この家にいる間にこの貴族名鑑と、三公とその家門の関係性、そしてモルファ辺境伯領に接する自他国の貴族の状況を覚えなさい。』

『ネオンっ!同じことを繰り返さないっ!』

『ネオンっ!あなたはそれでも公爵令嬢ですかっ! 恥を知りなさい!』

『何をしているのです!出来て当たり前なのです! ぼうっとせず、次に移りなさいっ』

『貴方の一挙手一投足、小さな誤ちの一つでも、家門を没落へ導くのです! 隅々まで気を配りなさい!』

『聞いているのですか、ネオン!』

そんな声と共に、ぐうっと上がってくる酸っぱいものを押さえる。

(うわ……っ。)

一気に脳内に溢れかえった声と言葉は反響して脳内に響き、吐き気を催し、頭痛を起こす。

椅子から落ちて倒れてしまいそうになるのを、眉間にぐっと力を入れてこらえる。

(久しぶりに思い出した……っ。)

今、叩かれたわけでも叫ばれたわけでもないのに、強烈な心身の痛みに襲われ、良く叩かれていた、招待状を持つ自分の左手の甲をそっと擦る。

(軟禁時代の心の傷ね……いわゆるフラッシュバックって奴だわ。)

あの顔。

あの声。

あの物言い。

(本当に怖かったのよね……今思い出しても身震いするわ……。)

脳内に鮮明に蘇ったのは、 現テ・トーラ公爵夫人(ババァ) と、彼女から文字通り叩き込まれた淑女教育。

分厚い教本を片手に、一度だけ説明をされ、実践し、出来なければ恐ろしく硬い扇で容赦なく手の甲を打たれ、再度説明を受けて実践。出来なければ再び扇で打たれ……と、領地の屋敷にいる間、朝から晩まで、何なら夢の中にまで現れて叩き込まれた、テ・トーラ公爵の名を名乗る淑女となるための教育。

今思い出しても身震いがする。

(たかが茶会の招待状一枚でフラッシュバックするなんて……。)

手の甲を擦りながら深呼吸をして心を落ち着けようとする。

(私、結構図太いと思っていたけれど、今更あれを思い出すなんて、よほど、あれが怖かったのね……。心的ストレス障害って奴かしら? まぁ、でも……。)

現テ・トーラ公爵夫人(ババァ) はそれはもうとんでもなく、鬼の様に厳しいばかりで、これっぽっちの優しさも労わりも愛情もなかったけれど、何故か一度たりとも祖父母や親戚の様に、私や家族を下賤と貶めることはなかった。誘拐に軟禁、教育指導という名の力と言葉の暴力は決して許せないけれど、そこだけは有難いと思う。

彼女はただ忠実に、公爵令嬢として、そして未来の辺境伯夫人としてあるべき姿を、夫に命じられて私に叩きこんだだけなのだ。

(まぁ、私が社交界でへまをすれば、不利益をこうむり辱めを受けるのは婚家のモルファ家と実家のテ・トーラ家。だからこそ、私がそんなへまをしないように育て上げるのが、あの人の仕事であり、意地と自尊心だったのでしょうね。)

養母となった人は、三公の一つである行政の長ド・ラド公爵家の末娘。 かつては才女として、淑女の鑑として社交界に知られていて、前国王の婚約者候補に名を連ねたこともあるらしい。

私は今も貴族が大嫌いだし憎んでいる。が、決して身分や仕事で人を貶めるような言動はしなかったあの人は、私の知る貴族の中では珍しく、己が身分を笠に着ることなく、正しく自分に割り振られた公爵夫人の役割をはたしていた人だったと思う。

(まぁ、扇で叩かれるのは本当に痛かったから、彼女自身は大嫌いだけど。)

『社交界は女の戦場です。 己の守るべきものを死守し、必要であればいつでも戦う。 そう心構えなさい。』

(はいはい、お養母様)

現テ・トーラ公爵夫人(ババァ) のありがたいお言葉を思い出して、深呼吸ひとつ。

心を落ち着けるために深呼吸を、ひとつ。

『茶会などの招待状は、辺境伯家くらいであれば、届いた時点で家令や侍女頭が是非を選別して、出席が必要な物ならばそう言ってくれるし、彼らでは悩ましい判断の場合には相談が来るから、状況を判断し、最良の策を取るように』

(ってことだったわよね。 じゃあこれは、家令たちには不要であると判断された物で、カルヴァ隊長がどうしてもと望んだ物……か。)

旦那様からは一切の社交は不要と言われた私が手にした、この家に来て初めての招待状。

(いざっ!)

物凄く気合を入れて文字に目を走らせた私は、全部読み終えた後、少し拍子抜けした。

カルヴァ隊長の妻であるカルヴァ侯爵夫人の自筆であろう、流れるように柔らかな筆跡は、結婚のお祝いを直接伝えられなかったことへの謝罪と、同じ家門であること、そして辺境伯騎士団の中枢を担う団長・副団長の妻として良き関係を築きたいこと、それと共に、先日鈴蘭祭にて辺境伯夫人の慈善事業として行われたバザー等について、同じ家門の婦女子として、是非自分もお手伝いをしたく、一度お会いできないでしょうか? という内容が、とても低姿勢に丁寧に綴られていた。

(私の出自を知らないわけではないでしょうに、随分と丁寧な……まぁ本家に手紙を出すのだからこんなものなの? でも裏もなさそうなのよね、どちらかと言えば友好的? だわ。 う~ん、貴族的に高飛車なお誘いだったら突っぱねてもいいやって思ったけど)

現テ・トーラ公爵夫人(ババァ) から、廃嫡放逐醜聞付き平民育ちの奥様と侮られるかもしれないけれど、元々れっきとした公爵家の生まれであり、現テ・トーラ公爵家当主の養女、そして現辺境伯夫人であるのだから、そう言う手合いの招待状は、その旨をきっぱりと書いて送り返しなさい、と躾けられたため、正直読む前からそれ系の招待状だろうと高をくくっていたわけだが、其れとは正反対だった。

正直、ちょっと困っている。

(これは、了承をしていいやつよね?)

貶める意図のない友好的なお誘いであるのだから、騎士団の関係性や辺境伯家の家門の繋がりを考えてもお受けするべきだろうと私は脳内で結論付ける。

しかし、なんとなく違和感がぬぐえない。

(何かしら、この変な引っかかりは……。)

首をかしげたところで、大量の本を抱えた執事のデルモが、茶器を乗せたサービングカートを押すメイドと共に、サロンに入ってきた。

「ネオン様、頼まれた物をお持ちいたしました。」

「ありがとう、テーブルの上に置いてくれる?」

「かしこまりました。」

音を立てないようテーブルの上に本を置いたデルモは、一番上にある分厚い一冊を手に取ると、表紙をめくりながら私を見た。

「ネオン様。 当家の事についてお調べとのことですが、何かお困りごとでもございましたか?」

今まで家門の事など興味を持たなかったお飾り妻が、突然資料を集めてほしいと言ったのが不思議だったのだろう。何とも言えない顔をしているデルモに、私は困ったように眉を下げて答える。

「えぇ。実は騎士団副団長のカルヴァ隊長から、直々にお茶会の招待状をいただいたの。」

「カルヴァ侯爵家からですか?」

それには、とても吃驚した様子のデルモ。

「そうなの。それで改めてモルファ家について知ろうと思ったの。前辺境伯夫人が亡くなられてから、女主人の仕事はどうしていたのか、デルモは知っている?」

なるほど、と納得してくれたデルモは私に丁寧に説明してくれた。

「私が知る限りの話となりますが、家令と侍女長で、最低限の事は行っていました。前夫人が行っておられた慈善活動に対する寄付がそれにあたります。社交に関しましては、私がこの家に勤め始めた時にはすでにお誘いなどもなくなっており、必ず参加しなければならない王家主催の夜会などは、許される限りは旦那様がお一人で、同伴者が必要な際には、王都で女性騎士団のお仕事に従事されている、旦那様の従姉でもあられるシグリット女子爵にお願いしていらっしゃったようです。」

「シグリット女子爵?」

初めて聞く名前に首をかしげると、デルモは教えてくれた。

「はい、前当主様には4人のご兄弟がございます。その末の妹君の一人娘に当たられる方です。婿養子を取られていたのですがその方に先立たれたあとは、女当主として、また女騎士として王宮騎士団にお勤めです。」

「なるほど。」

手に持っていた分厚い本をテーブルの上に開いてくれる。

それはモルファ家の家系図で、旦那様とネオン様がこちら、そしてこちらの御方がシグリット女子爵です。とデルモが指し示して教えてくれた。

「……シグリット子爵家ベラ・ドナン様……あら? 辺境伯騎士団の8番隊隊長とあるわ。」

「はい。王都で要人警護の際に肩書は 箔(・) になりますので、8番隊隊長となっております。実際には、こちらでの実務は8番隊の隊長代理の方が行っていらっしゃるようです。」

「そうなのね。王都で要人警護の騎士をしていらっしゃるなんて凄いわ。それで、デルモはシグリット女子爵様がどのような方が知っている?」

要人警護を行うような騎士といえば王宮騎士団近衛隊の事だ。 それは、なりたくてなれるものではないだろう。素直に感動しながら聞くと、デルモは懐かしむように教えてくれた。

「はい。私が執事見習いとしてこちらに雇われた時から存じ上げております。ベラお嬢様は幼い頃から大変に剣に秀でておられ、淑女教育を逃げ出して、フィデラ様や旦那様と、騎士に交じって良く練習なさっていました。学院に入るため王都に出向かれる際、ベラ様は筋が良いと前辺境伯様に推薦され、学院の淑女科ではなく、騎士科へ入学されました。 旦那様の元御婚約者様でもあられた方です。」

それには私は目を丸くした。

「旦那様の? ではなぜ婚姻しなかったの?」

「ベラ様は学院に通っていらっしゃる間に同じ騎士科の青年と恋に落ちられました。そのことをベラ様から直接相談を受けられた旦那様が自ら婚約解消を申し出られ、ベラ様はその方に嫁がれたのでございます。」

「まぁ、そうなのね。」

(あらあら、旦那様。恋のキューピットになったのね。似合わないけど。)

なるほど、と返事をする私の目の前に、小さなクッキーが数枚とハーブティの載ったトレイが差し出された。

「難しいお話も結構ですが、こちらをどうぞ、ネオン様。」

「まぁ、ありがとう、アナ。」

顔を上げた私の隣には、宿屋のおかみさんによく似たメイドのアナがいて、こちらまでつられて笑ってしまうような温かい笑みで話しかけてきた。

「はい、アナでございますよ。 さぁさ、騎士団への出仕でお疲れのところに、家内の仕事では疲れが取れませんでしょう? ハーブティーをお入れしましたから、一旦ご休憩なさいませ。デルモさんはこちらをどうぞ。」

ふくよかな体を揺らしながら、穏やかにそう言った彼女からお茶を受け取った私は、甘い香りにすとんと肩の力が抜けた。

「うれしいわ、アナ。私の好きなお茶よ、とってもいい香りだわ。」

「そう言っていただけて何よりです。 しかしネオン様。病み上がりなのですから、あまり根をお詰めにならないでくださいましね。」

心配げにそう言いながら、菓子をテーブルに置いたアナは、デルモにはカップに珈琲を渡すと、薄手のワンピース姿の私の肩に厚手のショールをかけてから、それでは、と部屋から出て行った。

「デルモも座って頂戴、少し休憩しましょう?」

「では、ありがたく失礼いたします。」

昔、お茶に誘った際に、主人と同じソファなどには座れませんと固辞された時に用意していた、使用人休憩用の椅子を私が座るソファからほんの少しだけ離れたところに置いて座ったデルモは、頭を下げて珈琲を飲み始めた。

「それで、本宅の方に私宛の茶会の招待状が来ていた?」

少しの休憩の後、私はデルモに尋ねた。

「正確な数までは存じ上げませんが、かなりの数が届いているようです。特に先日の鈴蘭祭以降は数が増えていると。」

「あら、そうなの?」

「はい。ただ、旦那様より社交は不要との指示があったとのことで、侍女長が騎士団医療院などの慈善事業による多忙を理由に、お断りのお返事を出しているそうです。」

「なるほど。」

ハーブティーを飲みながら頷いた私は、それで、と、クッキーをデルモにも進めながら、ちらりと見た。

「カルヴァ侯爵家はどうかしら?」

「ご結婚当初に一通、鈴蘭祭の後に一通届いていたようです。 カルヴァ家のアミア様と旦那様の関係性でございますが、アミア様の御父君が先々代様の妹君のお血筋であり、母君が旦那様の兄君であるフィデラ様の乳兄弟、そして、フィデラ様と旦那様の従姉である令嬢の御夫君でございます。」

(……つまり、お兄様の乳母の子で、父方のハトコで、従姉の旦那様って事?)

家系図を見ながらたどっていくと、どうやらあっているようだ。

「この系図だと、カルヴァ様が婿養子に入られたのね?」

「はい。本来であれば御息女のポーリィ様が女侯爵になるところでしたが、カルヴァ家は元来武門の家という事で、家督を夫となられたアミア様に譲られたようです。」

「この方ね?」

「はい。」

前辺境伯家当主の妹君の嫁ぎ先で、先代当主の時に 魔物の強襲(スタンピード) を命を懸け最小限の被害に抑え込んだことが功績と認められ、伯爵位から陞爵されたようだ。

「旦那様とは従姉だし、両家は親しくお付き合いがあったのかしら?」

「奥様がご存命の時には勿論……フィデラ様と奥様が亡くなられた後も、ポーリィ様は前辺境伯様をよく訪ねて来られていました。ただ旦那様が辺境伯になられてからは、儀礼的なお付き合いだけとなっています。」

「なるほど。ところで、亡くなられたお義兄様と旦那様は乳母が違うのね。」

「はい。旦那様の乳母は現在は王都に住んでおります。」

「そう。でも、カルヴァ隊長はお義兄様の乳兄弟だったのでしょう? ならば旦那様とも仲良くなさっていたのではないの? お義兄様と旦那様は仲がよろしかったのよね?」

「……それは……」

少々言いよどんだデルモは、少しだけ声を低くした。

「きっかけは存じ上げませんが、旦那様が辺境伯当主となられたあたりから、モルファ家、カルヴァ家間での私的な交流はございません。」

「そう……。」

(デルモの知らない何かしらのきっかけ……旦那様が辺境伯を継いだことが関係するのかしら?この辺りは家令に聞くしかないか……う~ん、気が進まないわ。)

家令の顔を思い出してげんなりしつつ、強いつながりがあるはずの両家の関係に首を傾げつつ、本の横に置いていた招待状を見る。

(当主が私的にお付き合いしなくなったのに、その嫁の私には茶会の招待状を送ってくる、とは……何の意図があるのかしら?。)

ティーカップを置き、その招待状を手にした私は、ひとつ、溜息をついた。

「お断りするのは簡単だけれど、招待状をいただいた経緯と、私の今後の騎士団や領地での活動を考えると、カルヴァ隊長ご夫妻のお顔を立てて、お茶会をしないと駄目ね。……デルモ、手回しを頼めるかしら?」

「何なりと。」

「ごめんなさいね、助かるわ。」

ふぅっと大きく一つ溜息をついた私は、デルモに本宅への手回しをしてもらいながら、カルヴァ侯爵家へお茶会の招待状を送り届けてもらった。