軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

80.【sideハルト】《赤銅の晩霞》

俺の名前はハルト・テンドウ。二十五歳。

ここツトライルからずっと東に行ったところにある『キョクトウ』と呼ばれる小さな国で生まれ育ち、なんやかんやでこの街にたどり着いて、探索者をやっている。

探索者になってからもなんやかんやあって、気が付いたら《赤銅の晩霞》というクランの団長を務めることになった。

《赤銅の晩霞》は少数精鋭をコンセプトにしていて、探索者四人と非探索者七人の計十一人で構成されているクランだ。

あ、人数が少ないからってバカにするなよ?

なんたって俺たちはSランクパーティなんだからな!

とはいっても、迷宮探索はもっぱら下層で、深層にはほとんど行ったことが無い。

俺たちは下層探索のスペシャリストを目指しているんだ!

深層なんて危険な場所に誰が好き好んで行くか。

さて、君たちはどうして俺がいきなり自分語りを始めているのかと、疑問を覚えているころだろう。

その理由を教えてやろう!

それは――俺がこれから死ぬかもしれないから!

死ぬ前に自分の素晴らしい足跡を脳裏に刻み込みたかったんだ!

でも、こうやって自分の人生を振り返っても、碌な人生歩んでないなぁ……。

って、誰が適当人間じゃい!

「団長! この状況でふざけないでくれます!?」

心の中で、居もしない相手に向かって自分語りをしていると、パーティメンバーのヒューイがキレた。

なんで?

「あ? 俺、ずっと真面目な顔してただろ?」

「真面目な顔してても、いきなり変なこと話し始めたら、それはふざけてるって言うんですよ!」

「え、もしかして、声に出してた? うわっ、恥ずかしっ」

「だから、ふざけてないで、この状況どうにかしてくれませんかねぇ!」

「いやー、無理だろ、普通に考えて。俺なんかがどうにかできる範疇を余裕で越えてるわ」

俺たち四人の周りには、俺たちを取り囲むように、火竜や地竜、飛竜といった多種多様な竜が四十体以上いる。

一体、二体でも上級冒険者が苦戦する相手が、四十体だぞ? 普通に死ねるだろ。

「つーかさぁ、俺に怒りをぶつけないでくれる? この状況を作った張本人が目の前にいるのにさぁ」

俺の視線の先には、濡羽色の髪を靡かせ、動きやすいようにアレンジした俺たちの故郷に伝わる和服を着ている女の子が佇んでいる。

彼女の名前はフウカ・シノノメ。歳は十七歳。

このパーティのエース。そんでもってこの状況を引き起こした張本人。

コイツ一人に俺たちはかなりの頻度で振り回されている。

ここで死ぬんだし、こいつに振り回されるのもこれで最後かぁ……。あれ? 残念って感情が全然湧いてこないわ。

「だって、フウカさんに話しかけても無視されるんですもん……!」

情けない声出すなよ。

「安心しろ。フウカは無視しているわけじゃない。口数が少なくて、お前とは話していないだけだ」

「それ、無視と変わらなくない!?」

「…………確かに」

「納得しないで下さいよ!」

「ちょっと、なんでこの状況でコントできるの!」

俺たちの後ろでビクビクしていたカティーナ――愛称はカティ――までがキレた。

カオスな状況になってきたぁ!

「コントなんてしてませんよ!」

「じゃあなんでそんな大きな声が出てるのよ! この状況だと普通は怖くて声なんて出ないものなの!」

「……カティさんも大きい声出てますけど?」

「……あら、ホントね」

さて、そろそろ真面目モードにならないとな。

「おい、フウカ。これからどうするか考えてるのか?」

言い合いをしているヒューイとカティを放置してフウカに話しかける。

「……?」

フウカがコテンと首をかしげる。

「いや、だから、こいつらを討伐する算段はあるのかって聞いているの」

「あとは斬るだけ。竜のウロコが必要なんでしょ?」

……うん。知ってた。

コイツが碌に考えもせずに、竜を大量に引き寄せたなんてことは。

いや、フウカはそれでいいと思うよ!? だって、攻撃なんて当たらないもん。

でも、俺たちは凡人なんだよなぁ……。

凡人の苦労を知ってくださいよ、天才さん。

近くに居た火竜が咆哮を上げる。

「うっさいわ! 今、お前らをどうするか考えてるんだよ! 黙ってろボケェ!」

衝動的に火竜の顔面に拳を叩きこんでしまった。

「あ、やべ……」

「ちょ! 準備もできてないのに勝手に戦闘始めないで下さいよ!」

今まで保たれていた均衡が、火竜を殴ったことで崩れる。

「……二時と九時の方向から魔法が飛んでくる。対処して」

ヒューイとカティを庇うように二人の近くにフウカが立つ。

それから予言をするように二人に指示を出す。

一斉に竜たちが俺たちに襲い掛かってくる。

「いつものように俺は一人で戦うのね……寂しい、なぁ!」

俺は愚痴りながら竜の懐に潜ると、その腹を全力で殴る。

殴った竜は全身から血を吹き出し、黒い霧に変わる。

これは俺の一族に伝わる技術だ。

その技術を織り交ぜた俺の攻撃は、内部に衝撃を与えて、内側から破壊する。

俺の背後にいる三人にもかなりの数の竜が群がっていた。

爪や尻尾、牙と言った、凶悪な部位が三人に襲い掛かる。

――が、それらがあいつらに一定以上近づくことはなかった。

その全てをフウカが右手で握っている刀が、斬り飛ばしているから。

フウカの前ではどんな攻撃も攻撃にならない。

何も知らない人が今の光景を見たら、竜たちが自ら斬られるために自分の体を差し出しているように見えるだろう。

まぁ、動きが速すぎて、目で追える人はほとんどいないと思うが。

火竜が炎弾を撃ち出してくるも、それを事前に知っていた二人が難なく魔術で迎撃する。

俺が前に出て、フウカが後衛の二人を護る。これが敵に囲まれたときの、俺たちの鉄板のフォーメーションだ!

「フウカ、助けてぇぇ!」

戦闘開始から十数分、俺はフウカに助けを求めていた。

いや、ホント無理! マジで死ぬ!

この数の竜を相手にするとかバカじゃねぇの!?

「二人を護るのに忙しい」

フウカが何を考えているのかよくわからない表情で呟く。

「嘘吐いてんじゃねぇ! もう、お前の周り誰もいねぇじゃん! 戦闘終わったみたいな雰囲気醸し出してんじゃん!」

フウカは、三人に迫ってきていた三十体以上の竜を既に全部斬り倒し、魔石やドロップした素材の回収作業をしていた。

俺はまだ、六体しか倒せてないのに……。

「何かが飛んで来たら危ない」

「お前ならそんなの事前に察知できるよねぇ!? それに迎撃するのはお前以外の二人だし!」

「…………」

「無視するなぁ!」

「団長、竜に囲まれているのに余裕ですね」

「余裕じゃねぇよ! だから助けを求めてるんだろうが!」

あれだけ頼んだのに、結局俺一人で残りの竜と戦うことになった。……なんで助けてくれないの!?

地竜の攻撃を掻い潜り、殴り倒す。

「よし! 残り二体!」

(ようやく終わりがみえてきた。あと二体、気合入れてぶっ飛ばす!)

――と気合を入れなおしたところで、二体の竜の首がボトッと落ちた。

…………はい?

その二体の近くには、いつの間にか移動していたフウカが、刀身に付着していた血を振り払いながら立っていた。

「討伐完了」

「介入してくるの今じゃねぇだろ! 空気読めよぉぉぉ!!」