軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

67.92層攻略② 圧倒

俺もレインさんの魔術に合わせて、中級の攻撃魔術を発動する。

更に【 増幅連鎖(レイズ・リピート) 】を、射線上に設置する。

モヤが巧みに俺たちの攻撃魔術を防ぐが、数が足りない。

次第に攻撃魔術が黒竜に命中し始める。

黒竜が移動しようとするが、ウィルの絶妙な立ち位置と攻撃によって、その場を動くことができないでいた。

『インターバル! 五秒後攻撃再開!』

脳内にレインさんの声が響く。

その声を聴いた俺は、接近戦に切り替える。

シュヴァルツハーゼに【 切れ味上昇(シャープネスアップ) 】を発動して、後ろ左足に肉薄する。

剣の間合いに入ったところで、同じ場所を様々な方向から一瞬のうちに何度も斬りつける。

前回の黒竜戦で使用していた剣は、良くも悪くも普通だった。

普通の剣では、硬いウロコを砕き、浅い傷をつけるのが精いっぱいだった。

しかし、今回持っている剣は、俺のために作られた、俺に最適化されているものだ。

更に素材の質にも天と地ほどの差がある。

俺の支援魔術で性能を更に引き上げられているシュヴァルツハーゼであれば――硬い黒竜の足を斬り落とすことも可能だ。

俺の目の前を高速で走るいくつもの黒い軌跡が、ついに黒竜の後ろ左足を斬り落とす。

黒竜の悲鳴が上がる。

残っていた三つのモヤが俺に襲い掛かってくる。

ちなみに、先ほどウィルによって二つ目のモヤが消された。

それを難なく躱し、距離を取ったところで、ちょうどレインさんのインターバルが終わった。

黒竜の上空から再び攻撃魔術が降り注ぐ。

後ろ足を失った黒竜は、体勢を崩しながらもモヤを十個出現させた。

これまでの戦いでは十個が最大数だった。

ペースが早いな。

モヤがレインさんの魔術を迎撃し、攻撃を防ぐ。

俺も背後から【 瞬間的能力超上昇(インパクト) 】込みの【 雷矢(サンダーアロー) 】を発動する。

雷系統の攻撃魔術は、他の属性系統の攻撃魔術よりも貫通力に優れている。

【 雷矢(サンダーアロー) 】が黒竜の体に突き刺さり、ダメージを与える。

(なるほど。これくらいの威力ならウロコを無視して貫けるのか)

レインさんが再びインターバルに入ったため、再度肉薄しようとした。

――が、それよりも早く複数のモヤが襲ってきたため、攻撃は諦めて、更に距離を取りつつ回避に専念する。

俺たちの攻撃が止んでいる隙に、モヤの1つが黒竜の左後ろ足に纏わりつき足の代わりとなった。

(あんな使い方もできるのか。面白いな)

前回の黒竜戦とは違い、余力がまだまだある俺は、素直にモヤの汎用性の高さに感心した。

黒竜が重心を前に移動する。

『尻尾の攻撃が来るぞ!』

即座に黒竜の次の行動を看破し、全員に注意喚起する。

黒竜の尻尾がバフ無しでは反応すらできないほどの速さで、ウィルに襲いかかる。

「その攻撃は二度と喰らわねぇ!!」

ウィルが叫びながら、尻尾の攻撃を双刃刀で往なす。

――だけに留まらず、再び出現させた混沌の魔力で刃を延長させ、刃を尻尾に突き刺す。

ウィルの攻撃に合わせて【 瞬間的能力超上昇(インパクト) 】を発動した。

威力が大幅に引き上げられた刃は、尻尾を貫くとともに、地面に縫い付ける。

尻尾が固定されたことを確認した俺は、根本付近に近づいて、シュヴァルツハーゼを振るう。

刀身が触れる直前に、こちらにも【 瞬間的能力超上昇(インパクト) 】を発動したことにより、一太刀で尻尾を切断した。

黒竜が怒りとも悲鳴ともとれる咆哮を上げる。

『炎弾が来るぞ!』

セルマさんの声が脳内に響く。

それを聴いた俺は、黒竜の顔が見える位置に移動する。

黒竜の口の中から炎が漏れているのが見える。

タメを作ってから、黒竜が炎弾を撃ち出そうとする。

それと同時に顔付近に【 反射障壁(リフレクティブ・ウォール) 】を発動する。

黒竜の口から撃ち出された炎弾は、すぐさま遡行するように口の中へと戻っていき、黒竜の口の中で炎弾が 爆(は) ぜる。

それからも、一方的な戦いが続く。

ウィルが黒竜のヘイトを一身に受け、それを往なしていく。

ウィルにダメージがあると、即座にルクレがウィルを回復させる。

ルクレは今回攻撃に参加しておらず、味方の回復に専念している。

これができるのも、レインさんが短いインターバルで高威力の魔術を黒竜に叩き込んでいるためだ。

セルマさんは全員のバフ管理と黒竜の動きに集中している。

黒竜に比較的近い場所にいる俺とウィルでは、巨大な黒竜の全体像が見えない。

つまり死角が多くなるが、セルマさんが逐一状況を教えてくれているため、問題なく黒竜の攻撃を対処できている。

四人はこの一年間ずっと、黒竜との戦闘を脳内シミュレーションしていた。

俺が加入してからもずっと打ち合わせを続けてきた。

その結果が、これだ。

黒竜は俺たちの前に手も足も出ていない。

元々黒竜を倒せるだけの実力を持っているパーティだ。

更にあらゆるパターンを検討して、それに応じた対処法も決めている。

――油断は無かった。

黒竜がモヤを 二十個(・・・) 出現させた。

「はぁ!?」

ウィルが驚きの声を上げる。

当然だ。

これまで俺が二回、第一部隊が一回黒竜と戦っているが、今まで一度も十一個以上のモヤを出現させたことが無かったのだから。

ギルドの記録でも黒竜が十一個以上のモヤを出した前例は無い。

二十個の内、五個ずつが俺とウィルに襲いかかってくる。

そして残りの十個が無数の小さな針に変化して、後衛の三人が居る場所に一斉に撃ち出される。

(くそっ! 出し惜しみをしている状況じゃない!)

後衛にあれだけの攻撃が降り注げば、三人が魔力障壁を展開しても流石に耐えられない。

俺に襲いかかってくるモヤを躱しながら術式を構築する。

「【 魔剣合一(オルトレーション) 】!」

術式構築が終わってから、収納魔導具の新機能を起動する。

魔術は構築した術式に魔力を流して初めて発動する。

俺が構築した術式に、収納魔導具が周囲から取り込んで 収束し続けていた(・・・・・・・・) 魔力を流し、未完成のオリジナル魔術が発動する。

その魔力とシュヴァルツハーゼが一つになる。

黒い剣はその形を失い、剣の形を模した漆黒の流動的な気体とも液体とも固体とも受け取れる、収束された魔力へと変質した。

「天閃……!」

シュヴァルツハーゼは、既に収束された魔力になっている。

天閃を放つための魔力収束に掛かる時間は無い。

無数の針に対して天閃を放ち、衝撃波でほとんどを消し飛ばす。

しかし、全部を消し飛ばすことはできなかった。

残りの一部が後衛の三人に向かって飛んでいく。

俺は次の一手のための行動を取る。