軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43.立場に見合った武器

「では、自己紹介や質問は一旦ここで終わりにしよう。もう時間も遅いことだしな。明日の予定だが、早速大迷宮に潜ろうと思っている。目的はオルンを入れた新たなパーティでの連携の確認だ。場所は下層を予定しているが、詳しい場所は明日話す。まず、明日はいつも通り、ここに朝九時に集まってくれ。オルン、基本的に迷宮探索をするときは、九時にここと思ってくれ。変更がある場合は別途連絡する」

「わかった」

顔合わせが終わった。

セルマさんの口調的にこれで解散かな。

そう思っていると、

「それじゃあ、これからオルンの歓迎会ってことで、どっか食べに行かないか?」

ウィルが提案してくる。

「あー……非常にありがたい提案なんだけど、明日以降でもいいか? 実はこれから明日の迷宮探索のためにやっておきたいことがあるんだ……」

せっかくの誘いを断るのは心苦しいが、これは今日中にやっておきたい。

「明日の準備か? それって聞いてもいいやつか?」

「これから剣を買いに行こうと思ってるんだ」

一昨日の黒竜戦で剣を二本も無くしてしまった。

昨日の内に買えれば良かったんだけど、気が付いたのが昨日の寝る直前だったんだよなぁ……。

「え!? もしかして今、武器無いのか!?」

ウィルが驚きの声を上げる。

他の三人も似たような表情をしている。

「いや、あと一本あるから探索には行けるけど、念のためストックを増やしておきたいんだ」

「そういうことなら明日以降でもいいんじゃないか? 武器なんて一日で作れるものでもないんだし」

「いや、俺が使っているのは市販のやつだから、今日中に手に入るぞ?」

「はぁ!? オーダーメイドじゃないのか!?」

また全員が驚く。

まぁ、上級探索者にもなると武器はオーダーメイドが普通だもんな。

こういう反応をされるのはしょうがない。

「いや、俺が剣士やっていたのってBランクの時だから、オーダーメイドの剣とか持ってないんだよ。それに今は切れ味とか耐久力とか支援魔術でどうにかできちゃうから、わざわざ高いもの買う必要はないかな、と」

「ボクは剣の事詳しくないけど、剣って市販のだと、同じ見た目でも重心? が違うんでしょ? 違和感とか出ちゃわない?」

「それくらいなら数回振れば修正できる。それに買うときにそこまで差が出るものを買わなければ問題ない」

「~~~~っ! もぉぉ! 確かにそうかもしれないけどさ! 君は今日から《夜天の銀兎》の第一部隊のエースなんだよ!? そんな人が市販の安い剣を使っているところを、他の人に見せちゃダメ!」

レインさんがそう言うと、俺の手を握って、どこかへ移動しようとしていた。

「ちょ、レイン!? どこ行くんだよ!?」

ウィルの声を無視して、俺の手を引っ張りながら、すたすたと何処かへ歩いていく。

連れてこられたのは、同じ敷地内の別の建物の中にある鍛冶場のような場所だった。

なおもレインさんに手を引かれて、奥へと連れていかれる。

ちなみに他の三人も後ろから付いてきている。

そして、ガッチリした体型の初老の大男の前に連れてこられたところで、ようやく手が離された。

「おいおい、第一部隊が全員で来るなんて、何事だよ……」

まぁいきなり現れたら驚くよね。

「アランさん! この子のために剣を作ってください!」

レインさんがいきなり依頼をする。

アランと呼ばれた人は、察するに鍛冶師なんだろう。

「剣だぁ?」

アランさんにジッと見つめられる。

「……お前、噂の竜殺しか?」

上から下に視線を動かした後、質問された。

「噂の竜殺しかどうかわかりませんが、先日黒竜を倒したのは俺です」

「やっぱりか、 佇(たたず) まいが熟練の戦士のそれだ、すぐにわかったぜ」

「……ありがとうござぃます?」

「んで、剣を作ってほしいって? そら、今話題の竜殺しの剣を作れることは光栄だけどよ。勇者パーティに所属していたんだし、既に高名な鍛冶師が付いてるんじゃねぇのか?」

「普通そう思うでしょ!? なのに使っているのは市販の武器なんですって」

レインさんが興奮気味にアランさんに説明する。

「んだと!? おい! それはホントか!?」

「ま、まぁ、はい、本当です……」

「自分の命を預けるもんだろ!? なんで適当に買った物で済ませてんだよ!?」

アランさんがブチ切れた。

剣は剣士の魂って言われるくらいだもんな。

それに今の俺は考えが変わってる。

さっきのレインさんの言葉には、ハッとさせられた。

確かに今の俺は《夜天の銀兎》の第一部隊に所属している前衛アタッカーだ。

言うなれば、他の前衛アタッカー達の模範にならないといけない。

確かにそれを考えると、市販の剣で済ませるのはダメだよな。

夢を持たせるってわけではないけど、トップパーティの前衛アタッカーが、高くて良質な剣を使っていれば、それだけでもモチベーションの向上に繋がるかも知れないわけだし。

「ついさっきまでは市販の剣でいいと思っていましたが、レインさんに怒られて考えが変わりました――」

「あれ? 怒ったと思ってた? ごめんね! 怒ってないよ?」

レインさんがあわあわしながら、怒っていないことをアピールしてきた。

怒ってなかったのか、若干怖かったんだけど。

「いや、あれは怒ってただろ、何も言わずここに連れてきてたし、顔怖かったし」

「ねー、レインさん怖かった」

ウィルがツッコミを入れて、ルクレがそれに同意する。

セルマさんも苦笑いしている。

うん、俺たち全員同じ認識だった。

「ちょっとそこ、静かに!」

「うわ~、やっぱり怒ってるよ~」

「……お前ら、コントしに来たのか?」

「そんなわけないじゃないですか! 真剣なお願いをしに来たんです!」

「そ、そうか……じゃあ、話を戻すぞ。えっと……、竜殺し、お前の名前は?」

「オルンです」

「オルンか、よし覚えた。俺はアラン。見ての通り鍛冶師だ。んで、考えが変わったってのは?」

「今までは周りの目を気にしていなかったので、市販の剣でもいいって思ってたんです。でも《夜天の銀兎》の第一部隊に所属したからには、それに見合った装備を使うべきだと思ったんです。ですから、俺の剣を作ってください! お願いします!」

アランさんに頭を下げて、剣を作ってもらえるよう頼み込む。

「……さっきも言ったが、オルンの剣を作らせてもらえるのは、俺にとっても光栄なことだ。喜んで作らせてもらう」

「良かったな、オルン。おやっさんは《夜天の銀兎》で一番の鍛冶師だ。俺の相棒もおやっさんに作ってもらったけど、出来栄えは保証するぜ」

ウィルが俺の肩に手を乗せながら話しかけてくる。

この人がこのクランで一番の鍛冶師なのか。それは否が応でも期待が膨らむな。

「おいおい、そんなに持ち上げんなよ。あと、作るのはいいんだが、1つ問題があるんだよな」

「それはすぐに解決するものですか?」

「問題ってのは武器の素材だ。今、うちは深層の素材が枯渇している。この前作ったウィルクスの武器に惜しみなく使っちまってな。だから、武器を作るためには深層に潜る必要がある。本末転倒な話だがな」

「じゃあ、ウィルが悪いんじゃん。ウィル、今から一人で深層の鉱石採ってきてー」

「無茶言うなよ! 一人でなんて、命がいくつあっても足りねぇよ!」

ルクレの無茶ぶりに対して、ウィルが律儀にツッコミを入れる。

この二人仲良いな。

必要なのは深層の素材、ね。

「それなら問題にならないな」

「え? オルン君どういうこと?」

周囲を見渡して、スペースのある方へ移動する。

「深層の素材なら結構持ってます」

そう言いながら、深層で手に入れた、剣の製作に使えそうな鉱石や魔獣素材を出現させた。

「わぉ、大量だ~!」

ルクレがテンションを上げていたが、他の四人はポカンとしていた。