軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40.定例会議

それからは、各人の報告が始まった。

この会議の参加者である幹部たちは各部門のトップだ。

定例会議は年に一回、三月末に開催されていて、この一年間の実績なんかを報告することになる。

主な内容は、所属している探索者の動向や各部門のカネの出入金、販売部門の売上状況、クラン独自で開発を進めている武器や防具、魔導具の進捗状況など。

この会議を聞いていただけで、クランの現状をある程度把握できた。

この会議に参加できたのは大きいな。

そしてトリを務めるセルマさんが報告を始める。

「それでは、探索部より報告いたします。大迷宮の最高到達階層は変わらず九十二層です。周知のとおり今期は第一部隊に合流できる探索者が現れなかったため、第一部隊の探索は最低限とし、後進の育成に注力しました」

エースを 喪(うしな) った第一部隊が、ここ一年深層の探索をしていなかったことは、勇者パーティ時代から知っていた。

やはり絶対的エースと呼ばれ、パーティの精神的支柱でもあった、アルバートさんを喪ったことは大きかったようだ。

「その結果、第二部隊に所属するパーティの内、二つのパーティが八十七層に到達しており、深層到達も見えてきました」

最初こそ重い雰囲気になっていたが、第二部隊の躍進を聴いて、雰囲気が和らいだように感じる。

「その他にも、先ほど探索管理部の報告にもありました通り、中層や下層における素材採取量も増加傾向にあります。《夜天の銀兎》に所属している探索者の能力は、全体的に向上している状況です」

これについても、勇者パーティ時代に集めた情報から知っていた。

確実にこの一年で《夜天の銀兎》の探索者のレベルは上がっている。

四組目のSランクパーティが、《夜天の銀兎》から生まれるのも時間の問題かもしれないな。

「また、先日新たな試みとして教導探索を行いました。私を含めたAランク以上の探索者が数名同行したうえで、教育中の新人が大迷宮に潜り、全員が五十層まで到達しています」

あ、そっか。

俺が黒竜を討伐した直後に強制送還が起こったから、新人たちは五十一層に行けてないんだ。

まぁ、仕方ないか。あんな事態で全員が生き残れたんだから、それ以上を望むのは欲張りだろう。

出資者(スポンサー) もこの結果なら、満足してほしいな……。

「勿論すぐに新人を中層に送り出したりはしませんが、長時間の迷宮探索を連日行った経験は、近い将来実を結ぶものと考えています」

それは間違いないだろう。

三日間、朝から晩まで大迷宮に籠っていたんだ。

精神的には、かなり成長できていると思う。

教導探索中の新人の動きも悪くなかった。

このクランが、教育に力を入れていることがすごく伝わってきていた。

「最後に来期の予定ですが、オルンを迎えたことにより、第一部隊のメンバーが揃いました。そこで深層の攻略を再開します。他の探索者にも無理のない範囲で更に攻略を進めてもらい、良質な魔石や素材を安定して供給できる体制を整えていく所存です」

セルマさんが話し終わってから、他の幹部より質問があったが、セルマさんは難なく受け答えをしていた。

そしてセルマさんの報告が終わり、

「私が総長に就任してから一年が経った。ここまでクランを立て直せたのもこの場にいるもの含め、団員全員の力によるものだろう。感謝している。これからも引き続きよろしく頼む。では、今日はこれで終了とする」

最後に総長が締めの挨拶を行って、定例会議は終わりを迎えた。

幹部たちがどんどんと退室していく。

一人ひとりに挨拶しようと思っていたけど、とても忙しそうな雰囲気だったのでやめた。

近いうちに挨拶に行かないとな。

「さて、私たちも行こう」

「――あ! セルマっち、待って~!」

セルマさんに声を掛けられて退室しようとしたところで、セルマさんを呼び止める女性の声が聞こえた。

……セルマさんって色んな呼ばれ方されてるな。

声が聞こえた方を見ると、茶髪のショートカットの女性がいた。歳は20代前半。

セルマさんと同じく、幹部の中でも若い部類に入る。

まぁ、俺が言うなって指摘されそうだけど……。

この人は確か探索管理部の人だったな。

さっきの会議では探索者の各パーティの評価をしていたり、魔石や素材の収集量を報告していたりしていた。

恐らく、探索者のサポートをする部署だろう。

「セルマっち、今ちょっとだけ大丈夫? 新人君に話があるんだけど」

ん? セルマさんじゃなくて俺に用事?

「あぁ、問題ない」

「ありがとん♪ さて、あたしも仕事が溜まっているから単刀直入に言うね。新人君ってさ、自分の知識とか技術を他の人に教えるのは得意?」

「俺の知っていることであれば、教えることができると思います。どうしてです?」

「さっすが、曙光のマルチタレント!」

結局どういうこと?

俺に何かを教えてほしいってこと?

「えっと……」

「エステラ、オルンが困ってるぞ」

この人の名前はエステラさんというらしい。

幹部の名前くらいはすぐ覚えたほうがいいな。

さっきの報告ではみんな部署名しか言ってなかったから、名前は聞いていない。

「あ、ゴメンゴメン。えっとね、新人君に新人パーティの教育係になってほしいの」

教育係? 新人の教育は探索管理部の 管轄(かんかつ) だったと思うんだけど。

それに、俺には深層の探索がある。

時間が取れるか分からないから、安易に引き受けるのはなぁ……。

「私からもお願いする。良ければ、引き受けてくれないか?」

なんとセルマさんから許可、というか依頼された。

え、深層の探索は?

「えーっと、新人教育をするなら、ある程度まとまった時間が欲しいんですけど、そんな時間あるんですか?」

「ん? あぁ、そうか。勇者パーティはほぼ毎日大迷宮に潜っていたんだったな。うちの場合は、日程を各パーティが自由に組み立てているが、四日連続で大迷宮に潜ることは禁止している。私のパーティでは 来期(明日以降) の日程はあまり組めていないが、連日潜ることは基本しない予定だ。だから、勇者パーティにいた頃に比べれば、だいぶ時間には余裕があると思うぞ」

そうだったのか。

確かに《夜天の銀兎》は迷宮探索をしている日が少ないとは思っていた。

セルマさんは幹部としての事務的な仕事もあるしな。

俺もその手伝いをしないといけないだろうし、勇者パーティのように連日大迷宮に潜ることはしないか。

「そういうことでしたら、引き受けさせていただきます」

「ホント!? ありがと~。あの子たち才能が凄くてさ、早く探索部に行かせてあげたかったんだよね~! それに、あの子たち 強(た) っての希望でもあったから、引き受けてくれて嬉しいな!」

え、それって……。

「んじゃ、細かいことはまた今度ね! ばいばーい!」

気が付くとエステラさんはもう居なかった。

嵐のような人だな……。

探索管理部の面々は、あの人に振り回されてるんじゃないだろうかと考えていると、「あれでも優秀な奴だ」とセルマさんからフォローがあった。

まぁ、そうでなければ、あの若さで幹部にはなってないだろうしね。