軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27.オルン VS. 黒竜③ 空中戦

黒竜に近づくと、最大数の10個に増えたモヤが、様々な形で攻撃を仕掛けてくる。

どうにかモヤの攻撃を掻い潜りながら、近づけば剣で、距離を取られれば先ほど設置した術式の一部に魔力を流し魔術を発動させて、攻撃の手を緩めない。

戦場が空中となったことで、【 増幅連鎖(レイズ・リピート) 】の欠点が浮き彫りになる。

【 増幅連鎖(レイズ・リピート) 】は確かに威力が数段上がった魔術を撃ち出すことができる。

しかし、その魔術を撃ち出す方向は通過した魔術と同じ方向で、変更することができない。

また、発動タイミングもあらかじめ決まっているため、空中にいる黒竜の機動力が相手では当てることがかなり難しい。

だったら――。

「【 反射障壁(リフレクティブ・ウォール) !】」

2段階増幅した魔術は簡単に躱されたが、【 反射障壁(リフレクティブ・ウォール) 】で反射することで、強引に進路を変える。

【 反射障壁(リフレクティブ・ウォール) 】は瞬時に発動できる魔術ではないので、1発当てるのがやっとだった。

しかし、【 瞬間的能力超上昇(インパクト) 】も加えたこの攻撃は、黒竜にかなりのダメージを与えられた。

攻撃の当たった背中が、一部だけど 抉(えぐ) れている。

その後、【魔力収束】による足場を消しさると、体が重力に従って自由落下する。

ある程度黒竜と距離ができたところで、再び足場を作ってそこに着地する。

左手を黒竜のいる場所に伸ばす。

「【 雷撃(サンダーショック) 】!」

天井一面を埋め尽くすように大量の【 雷撃(サンダーショック) 】を発動する。

頭に痛みが走る。

魔術の使い過ぎだ。

だが、今はそんなものは気にしてられない!

ここが閉じられた空間である以上、黒竜に逃げ場は無い。

【 雷撃(サンダーショック) 】が黒竜に直撃する。

ただし、初級魔術のためダメージは無い。――【 増幅連鎖(レイズ・リピート) 】が無ければ。

【 雷撃(サンダーショック) 】は時間を掛けて威力が二段階上がり、黒竜に大ダメージを与える。

動きが鈍くなったところで、魔術を発動した直後から、刀身に収束させている漆黒のオーラを纏わせながら、黒竜に肉薄する。

(今の俺なら、耐えられる!)

ギリギリまで近づいてから、黒竜の腹部に漆黒の斬撃を放つ。

今度は防がれることなく、【 瞬間的能力超上昇(インパクト) 】も乗せられた。

黒竜に近づきすぎていた俺にも天閃の余波が襲いかかり、吹き飛ばされる。

空中でバランスを取りながら、どうにか【魔力収束】の足場に無事着地できた。

すぐに視線を黒竜に向けると、腹が 抉(えぐ) れていた。

流石に翼や尻尾のように簡単に消し飛んではくれないようだが、今の一撃は大きい。

◇ ◇ ◇

「これが、オルンの本当の実力なのか? ……では、これまで私たちに見せていたものは、その一端に過ぎないというのか?」

私の視界には、《夜天の銀兎》の第一部隊が、全員がかりでも倒せなかった黒竜を相手に、互角以上の戦いを繰り広げている少年が映っている。

その光景は畏怖を覚えるものだ。

あの身体能力、並列構築で発動している魔術の数、漆黒の斬撃、今起こっていること全てが私の常識では考えられないものだらけなのだから。

私ですらそうなのだ。他の引率者は勿論、新人たちは今の光景を見て何を思うのだろうか。

私がオルンをこの教導探索に誘ったのは英断だった。

オルンがいなければ、私たちは既に全員死んでいただろう。

だが、それと同時に、この光景を新人たちに見せてはいけないとも思う。

この光景は私たちとオルンとの格の違いを、まざまざと見せつけてくるのだ。

ここにいる新人たちの何人が探索者を辞めることになるのだろうか。

そんな私たち《夜天の銀兎》の探索者たちの努力をあざ笑うかのように、オルンが黒竜を圧倒している。

「私の支援魔術は要らない、か」

わかっていた。

オルンは私と見ている世界が違うと。

それでも先月見た彼の姿を目標に、この1カ月鍛錬してきた。

それなのに、今、更なる差を見せつけられた。

私の支援魔術なんか要らないほどに。

私はいずれ彼と肩を並べられる探索者になりたいと思っていた。

でも、そんな日は来るのだろうか?

実家を家出同然で出てきた私には、探索者として大成するしか道が無いというのに。

私の目標は遠すぎる。