軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

251.情報共有

「久しぶり、オリヴァー」

拘留所へとやってきた俺は、オリヴァーと面会した。

「……あぁ、久しぶりだな、オルン」

面会に来た俺の顔を見たオリヴァーの表情が綻ぶ。

オリヴァーは昨年の武術大会決勝直後に暴走し、貴族を含めた大勢の観客たちの命を脅かしたとして、その日以降はずっと拘留されていることになっている。

しかし、実際のところはフォーガス侯爵と裏取引をしていて、ある程度の自由と引き換えに秘密裏に領内の問題解決に尽力している。

今年の初めに、ルシラ殿下を護衛しながら王都からツトライルに向かってきた際に現れた巨大スケルトンの討伐にオリヴァーがやってきたのも、その一環だろう。

今日は事前にフォーガス侯爵からオリヴァーがここに居ることを聞いていたが、最近はここに居る時間よりも領内を動き回っている方が多いらしい。

「国内にある迷宮の攻略をするためにこの街を離れているって聞いてたが、無事に帰ってこられたみたいだな」

「迷宮攻略は終わらせてきたよ。無事と言っていいのか微妙なところだけど」

適当に言葉を交わしながら、【 精神感応(・・・・) 】でオリヴァーに念話を送る。

『オリヴァー、聞こえる?』

俺の念話を受け取ったオリヴァーが驚いたように目を見開いた。

『今、【精神感応】の念話でオリヴァーに語りかけてる。看守に気付かれたくないから声には出さないで、念話で返事して欲しい』

『こう、か?』

オリヴァーの戸惑った声が頭の中に響く。

『うん、上出来』

『セルマ・クローデルは、近くに居ないよな? ということは、もしかして……』

『あぁ、記憶を取り戻した。【森羅万象】の行使も、この通りばっちり。看守を騙すために言葉でも話を続けるぞ。去年、『付与術士は支援魔術が使えるやつ誰だってできる』とか『並列構築の応用だから慣れれば出来る』とか言ってたから余裕だよな?』

オリヴァーをからかうように意趣返しをする。

これは、俺が勇者パーティを追い出された後の、勇者パーティの失策によって大迷宮の五十層に移動した黒竜を俺が討伐した翌日に、オリヴァーが売り言葉に買い言葉で発した内容だ。

『ぐっ……! 痛いところ突きやがって……。あの時は本当に悪かったよ。感情任せに酷いことを言って。本当にすまなかった』

『あの発言は流石にイラっとしたからな。俺もからかってごめん。これで手打ちということでどうだ?』

『わかった。こんなことでオルンが許してくれるなら、俺としては有難い限りだ……。それと、念話と会話を並行で行うことは問題なく出来る』

「そうそう。聞いてくれよ。迷宮攻略の旅の途中で訪れた村なんだけどさ――」

周りの看守に変に思われないように、口ではどうってことない日常の話を続ける。

何気ない会話をしながら、同時に念話で必要な情報交換をしていく。

『記憶を取り戻したオルンがここに来たってことは……』

『あぁ。俺はこれから《シクラメン教団》と本格的に事を構えることになる。オリヴァー、俺に力を貸してくれ』

オリヴァーが看守に気付かれないように頷いた。

『言われるまでもない。全力でオルンに協力するさ』

『ありがとう。オリヴァーが傍にいてくれるなら百人力だ』

『だけど、俺は御覧の通り囚われの身だ。脱走することは簡単だが、オルンは何か考えがあるのか?』

『あぁ、既にフォーガス侯爵とは話を付けている』

それから俺はオリヴァーにこれからやろうとしていることを端的に伝えた。

『……教団の魔の手からツトライルを護るために、犯罪者としてここを追われる、か。確かにその先のことを考えれば妥当な手段だろうけど……。いいのか? 俺は既に似たようなものだから問題無いが、オルンは《夜天の銀兎》の連中に恨まれるかもしれないんだぞ?』

『恨まれることくらいなんてことない。それで団員のみんながこの先も生きられるって言うなら。笑って送り出してもらえるのがベストだけど、それは難しいだろうな』

『わかった。オルンがそう決めたなら、もう何も言わない。だが、一つ頼んでもいいか?』

『何だ?』

『それは―― 』

オリヴァーの頼み事は意外なものだった。

だけど、オリヴァーの話を聞いて断る理由は無かったため、俺はそれに応じることにした。

「――時間だ」

オリヴァーと当日の内容を詰め終わったところで、看守から面会時間の終わりを告げられた。

「もうそんなに経ったのか。早いな……」

「だな。でも、オルンと話ができて楽しかった」

「それは俺もだ。近いうちにまた来るから、その時はまた俺の話し相手になってくれ」

「あぁ、わかった。待ってるよ」

オリヴァーと別れの挨拶を交わしてから拘留所を後にした。

……そろそろソフィーたちが帰ってくる時間か。

彼女たちが帰ってくる前に、諸々が片付いて良かった。

ついに、決別の時か。